シリコンバレーと東京を拠点に、未来のゲーム技術「Toys-to-Life」で躍進を続けるスタートアップPowerCore【ゲスト寄稿】

本稿は、Disrupting Japan に投稿された内容を、Disrupting Japan と著者である Tim Romero 氏の許可を得て転載するものです。

Tim Romero 氏は、東京を拠点とする起業家・ポッドキャスター・執筆者です。これまでに4つの企業を設立し、20年以上前に来日以降、他の企業の日本市場参入をリードしました。

彼はポッドキャスト「Disrupting Japan」を主宰し、日本のスタートアップ・コミュニティに投資家・起業家・メンターとして深く関与しています。


PowerCode 共同創業者の Jia Shen(沈佳)氏(中央)

日本とアメリカでゲーム市場は大きく異なるが、PowerCore が紹介する技術は、両方の市場を大きく変えるかもしれない。

Toys to Life テクノロジーは、デジタルにおけるゲーム体験を実際に存在するおもちゃに反映させることで、アナログとデジタルの世界の間の境界を無くす。例えば、フィギュアを購入すると、そのキャラクタがゲームに登場するようなものだ。

このテクノロジーの第一世代は既にディズニーや任天堂といった企業で使われているが、本当の変化はまだこれからだ。今日は Jia Shen(沈佳)氏におもちゃの未来と、彼が日本で会社を始めた理由について話してもらおう。

Tim:

Toys-to-Life テクノロジーとはどのようなもので、誰が使っているのでしょうか?

Jia Shen 氏:

アメリカでは、スカイランダーズ、ディズニー、レゴが既にクールなことをしています。基本的には、ユーザがおもちゃを収集し、その集めたおもちゃをビデオゲームへ繋ぎこむというものです。

Tim:

つまり、フィギュアを買えば、それがゲーム内に登場するというような?

Jia Shen 氏:

そうです。それはシンプルな事例ですが、最も素晴らしいゲームデザインであれば、集めたキャラクタのコレクションを引き立たせてくれます。例えば、レベルが違えばメカニックも違うスーパマリオのゲームを想像してみてください。あるレベルでは、速く走るために足に車輪が必要で、またあるレベルでは、壁をよじ登るために大きな手が必要になるかもしれません。異なる実在のおもちゃを集めてもらい、ゲームを楽しむ際にコンピュータの近くの小さなプラットフォームにおもちゃを置いてもらうことで、このようなゲーム体験が可能になります。

Tim:

十年前、あなたはサンフランシスコで、複数の Facebook アプリを開発し成功したスタートアップ RockYou を設立しましたね。どうして RockYou を離れ、日本で新会社を始めることになったのですか?

Jia Shen 氏:

私が初めて日本に引っ越したのは2010年のことで、それはソフトバンクと作ったジョイントベンチャーを経営するためでした。しかし、私は日本を常に好きだったので、2003年以降は毎年日本に来ていました。常に日本に住みたいと思っていました。私が RockYou を離れたのは個人的な理由からです。RockYou は成功を遂げ、ビジネスも大きく成長していました。私が離れたときには約350人が働いていて、大きな会社を経営したくはなかった。小さな会社にこそ、自分がもっと価値を与えられると思ったわけです。

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Tim:

PowerCore の顧客の多くは、日本にいるのでしょうか、アメリカにいるのでしょうか?

Jia Shen 氏:

日本とアメリカで完全に分かれていますね。それは、顧客という点でも、スアッフという点でも、Toys-to-Life は市場毎に完全に違う形で進化しています。

Tim:

具体的には?

Jia Shen 氏:

もともとのアイデアは、Toys-to-Life を使う多くのユーザを、ゲームでマーチャンダイズできるというものでした。しかし、そのアイデアは誤ったものであることが明らかになりました。シンプルな世界観の構築がより重要であることがわかりました。子供がおもちゃをスキャンしゲーム上に現れれば、それはある種のマジックです。その子供はゲーム内に登場したおもちゃを見て、遊びたくなります。こういったシンプルなインタラクションが、最良の世界観を作り出すのです。

Tim:

大人よりも、子供たちの方が早くゲームに入り込もうとするのはわかります。世界観の善悪を決めるのは何でしょうか?

Jia Shen 氏:

単純さですね。我々は、toy-box モデルというものを採用しています。子供も大人もそうですが、オンライン上の自分のおもちゃと話がしたいわけです。それは複雑である必要はなく、興奮する理由は、対話性であり、想像力であり、探究心なのです。おもちゃ箱(toy-box)からおもちゃを取り出すようなものです。

Tim:

ディズニーは Toys-to-Life の分野におけるアーリーアダプターの一社で、ディズニープリンセスに始まり、マーヴル・スーパーヒーローズやスターウォーズまで、キャラクターでは驚くほどの知的所有権を持っています。彼らはこのテクノロジーには完全に適合しているように見えますが、最近になって、Toys-to-Life のビジネスを閉鎖すると発表しました。何が起こったのでしょう?

Jia Shen 氏:

ディズニーは面白いケースですね。彼らの間違いの一つは、おもちゃ箱(toy-box)を作らずに、細かいストーリー性を持ったリッチで複雑な世界を作ったことだと思います。

Tim:

なるほど。でも、細かいストーリー性や複雑さは、ディズニーが最も評価される点ですよね?

Jia Shen 氏:

はい、しかし、それは非常に費用の高いものになってしまいます。そんなことをすれば、マイナーなフィギュアを世に出すたびに、数ヶ月のソフトウェア開発、脚本、3D モデル、声優による声入れが必要になってしまいます。コストは上がり、ゲームの出荷は遅延します。探求を完結するためのキャラクターを買いたくないユーザもいるでしょうし、キャラクターを購入したために長期間ゲーム体験を強いられるユーザもいるでしょう。これは新しいテクノロジーであり、ベストなアプローチは、シンプルなインタラクションから始め、ユーザがどのように遊んでいるかを観察し、それからユーザが本当に楽しんでいる活動の周辺で、リッチかつ複雑なストーリー性を築くべきなのでしょう。

Tim:

つまり、テクノロジーが確立するまで、シンプルな状態を保つべきだと?

Jia Shen 氏:

はい。たいていの子供は遊びたいだけです。子供たちが初めてこのテクノロジーを見れば、身の回りのすべてのものをスクリーンに登場させたくてスキャンしようとします。それらをインタラクティブなストーリーに入れることもできますが、子供たちはキャラクターを操って遊びたいと思うでしょう。自分が子供だった頃のことを考えれば、おもちゃを集め、操り、遊んでいましたね。多くの遊びができたわけですが、それが今はゲームの中でできるわけです。

Tim:

おもちゃ箱(toy-box)のシンプルさ以外に、Toys-to-Life テクノロジーに適しているのは、どのようなゲームでしょうか?

Jia Shen 氏:

誰もが知っているキャラクターを使ったゲームは、Toys-to-Life テクノロジーで素晴らしいことができるでしょう。プレイが無料のゲームであれば、新規ユーザをより速いスピードで魅了することができます。


シンプルなおもちゃ箱(toy-box)のコンセプトが、このテクノロジーにとって最も成功するフレームワークとなっていることは興味深い。潤沢な予算、複雑なストーリー、高度なグラフィック、プロによるキャラクタ演出が頻繁に取り入れられる時代において、シンプルなインタラクションこそ最もパワフルだという事実は、このテクノロジーに本当の未来があることを私に教えてくれた。我々はまだ理解し始めたばかりだ。

特に興味深いのは、子供たちが非常に早いスピードでこのテクノロジーを理解するということ。オンラインとオフラインの区別は、実在するか本物かというようなく、我々がこれまでに学んできたことのようだ。現代の子供は、2つの世界の境界について全く異なる理解をもって育っていくのだろう。

彼らが、オンラインとオフラインの境界を認識していれば、ということだが。