本稿は、Disrupting Japan に投稿された内容を、Disrupting Japan と著者である Tim Romero 氏の許可を得て転載するものです。
Tim Romero 氏は、東京を拠点とする起業家・ポッドキャスター・執筆者です。これまでに4つの企業を設立し、20年以上前に来日以降、他の企業の日本市場参入をリードしました。
彼はポッドキャスト「Disrupting Japan」を主宰し、日本のスタートアップ・コミュニティに投資家・起業家・メンターとして深く関与しています。
翻訳やローカリゼーション業界は、過去数十年以上にわたって目まぐるしいイノベーションを見せてきた。しかし、多くの点において、変化に対する抵抗が残っている。
今日は Wovn.io の共同創業者 Jeff Sandford 氏に話を聞いてみよう。Wovn のチームはウェブのローカリゼーションや翻訳の問題を解決する方法を作り出し、それをたった1行のコードを挿入するだけで実現している。
Jeff は、それまでに会ったこともない人と、どうして会社を始めようと決めたかについても話してくれた。
今回も素晴らしいディスカッションなので、お楽しみいただけるだろう。
Tim:
Wovn は何をするのですか?
Jeff:
たいていの人はローカリゼーションについて考えたとき、それは翻訳のことだと考えるようです。しかし、ローカリゼーションは翻訳以上の意味を持ちます。Wovn は、多言語ウェブサイトを構築する上で細かい部分まで扱うことができ、翻訳も行えるプラットフォームを提供しています。
Tim:
この領域には多くの会社がいますが、Jeff さんたちは、非常にミニマリストなアプローチをしていますね。
Jeff:
確かにそうです。コード1行の挿入で我々のシステムを組み込んでもらえれば、数分でウェブサイト全体が翻訳された状態になります。最初は多くの皆さんが無料の機械翻訳を使い、その後、人による翻訳で部分的に修正する形で使われています。
Tim:
Jeff さんは、林さんと2014年に創業されましたね。2人はどうやって出会ったのですか?
Jeff:
実は、2人とも出会う前から一緒に会社を作ろうと決めていたんです。
Tim:
なるほど。もう少し詳しく説明してください。
Jeff:
(笑) 私は、友人の結婚式に参加するためにアメリカを訪問していました。東京出身の友人が私に電話をしてきて、こう言ったんです。「ねぇ、この人知ってる、林さん。彼は、英語が話せて、グローバルな視点を持った技術者と会社を作りたがっている。」 面白いなと思いました。それで、Skype ミーティングをすることにしたんです。
Tim:
つまり、以前に会っていたわけですね。
Jeff:
はい。しかし、個人的に会ったことは無かった。その Skype コールの中で、共同で会社を作ることを決めました。
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Tim:
Wovn.io では、非常に国際的なチームを築き上げてこられましたね。多くの場合、国際的なチームというのは、外国人のデベロッパ、日本人の営業やサポートスタッフで構成されます。そのような形で運営されているのですか?
Jeff:
はい、大いにそういう感じです。開発チームは日本人と外国人が概ね半々、顧客が日本人であることから、営業やサポートはほとんど日本人です。社内言語はエンジニアリング部隊は英語、それ以外は日本語です。
Tim:
日本国外に販売する計画はあるのですか?
Jeff:
もちろん。実際に、多くの点で我々のプロダクトのデザインは、日本風というより西洋風に近いものになっています。そして、大変ミニマリストなアプローチをとっています。多くの日本企業のウェブサイトは情報過多でごちゃごちゃしていて、ユーザからできるだけ多くの情報を集めようとします。我々はなるべく物事をシンプルにし、ユーザに対して、必ずしも必要のない情報を求めることは決してありません。
Tim:
デザインセンスにおける違いは面白いですね。しかし、結果から判断して、どのようなアプローチが機能するかを見極めるべきではないでしょうか? もし、ごちゃごちゃしたデザインが売上を伸ばすなら、それは採用すべきベストなものなのではないですか?
Jeff:
いいえ、Tim さんはいつも、自分の好みに合わせて、メッセージやデザインを最適化したいと思いますよね。日本の顧客はページ毎により多くの情報を欲するのです。そして、それが日本市場に向けたデザインとしてベストなものということになります。
Tim:
それではまだローカリゼーションの難関の核心には行き着いていないですよね? 効果的なものにするには、テキストを翻訳しグラフィックを変えるだけでは十分ではないでしょう。情報の提供の仕方全体を再考すべきでしょう。
Jeff:
マーケティングに特化したランディングページや販売キャンペーンをする上では、それはよいアプローチですね。しかし、各言語毎にウェブサイト全体を作り直すのは現実的ではありません。違った形で提供したい情報もあるでしょうが、会社のアイデンティティは保ちたいし、整合性のある情報を届けられるようにしたい。つまり、ウェブサイトのページの99%については、翻訳することがベストなアプローチになるのです。
Tim:
ということは、ページ毎にアプローチを変えているのですか?
Jeff:
はい。いくつかのレベルにおいてそうです。例えば、製品スペックのような情報については、我々のデフォルトの機械翻訳は完璧に訳します。他のコンテンツ、例えば、E コマースサイトの商品説明については、SaaS ベースの人による翻訳サービスで訳したいと思うかもしれません。しかし、マーケティング資料や会社のランディングページは、ニュアンスを正しく伝えるために、翻訳者と密に協業することで作りたいと思うでしょう。言うまでもなく、Wovn.io は、これらすべてのアプローチも、また、その混合にも対応することができます。
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Tim:
顧客の多くが E コマースサイトだとおっしゃいました。ウェブサイトを翻訳した後も、まだ他の言語でビジネスをする準備が整ったとは言えません。顧客はドイツ語や中国語でメールを受け取るようになったら、彼らはどのように対応するのですか?
Jeff:
そこが問題です。ユーザ毎に対処の仕方は異なります。社内に訳者を抱え、Wovn をウェブサイトのローカリゼーションのみに使っている顧客もいれば、できる範囲でそれをこなしている顧客もいます。この種の E メールの機能は、結果的に我々が扱うことになるものですが、まだ詳細についてはお教えできません。
Tim:
では、E メールのローカライズでないとすると、今のところ、Wovn の最大の開発関心事は何でしょう?
Jeff:
スケーリングです。顧客の数は増え続けており、翻訳の必要な数十万のページを持つサイトをより多く取り扱うようになれば、スピーディーかつ自動的にウェブサイトをローカライズし、最小限の時間遅延でページの翻訳を提供できるようにするには、高いパフォーマンスを維持するために新しい方法での投資が必要になります。
グローバルな取引が増える中で、小規模ビジネスの中でも特に Wovn.io のような企業は世界市場に合っているだろう。2020年の東京オリンピックが近づくにつれ、観光は日本でさらに重要な産業となっており、Wovn にとって日本市場は素晴らしい可能性を秘めているように見える。
Wovn.io が、E メールやヘルプデスクサポートといった、ローカリゼーションエコシステムのニッチな部分を埋めようと計画しているのは、興味深い話だった。Wovn.io は比較的小規模なスタートアップにとっては使える機能が多いが、市場のニーズは巨大で、すぐさま市場を支配しようとする企業は存在しないようだ。これらすべての不確実な状況が今後5年のうちにどのように変化するか、それを見るのが楽しみになりそうだ。
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