Royal Caribbean、クルーズ船をハイテクバケーション・スポットにする計画を発表

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Royal Caribbean の客船「Harmony of the Seas」.
Image Credit: Royal Caribbean

Royal Caribbean Cruises は自社の所有する37のクルーズ船について、楽しい休暇をテクノロジーがサポートする一大ハイテクバケーションスポットとする計画だ。同社は水曜日(11月8日)夕方にニューヨークで行われるイベントにおいて、今後展開するコンセプトを披露する。スマートフォンからスマートクルーズシップへ、これも全て技術進歩の一環なのだ。

この動きは、今年すでに100隻以上のクルーズ船でウェアラブルデバイス「オーシャン・メダリオン」を展開すると発表した Carnival と類似するものと言える。両社とも乗客がデバイスによってキャビンの鍵を開けたり、船内ほぼどこにいても注文したドリンクを届けてもらえるという。また Royal Caribbean においては、テクノロジーが同社のコンセプト Sea Beyond と統合したエコシステムを作ろうとしている。突き詰めればこれは、テクノロジーがいかに日常の風景に溶け込めるかということの新たな事例となるだろう。

Royal Caribbean Cruises シニア VP の Jay Schneider 氏は VentureBeat のインタビューにおいてこのように述べた。

造船から食事、キャビン滞在まで、クルーズのあらゆる側面にイノベーションを施しています。

ブルックリンの海軍造船所で開催される Sea Beyond お披露目イベントでは、Royal Caribbean International、Celebrity Cruises、Azamara Club Cruises という同社のクルーズブランド3社向けのテクノロジーを紹介する予定である。2015年より乗客用のウェアラブル端末を導入してきた同社だが、現在では乗客自身のデバイスからクルーズ会社のデジタルサービスにアクセスできるようになった。今後数年のうちに Wow Band 2.0が本格展開される予定だ。

さらに Schneider 氏は、顔認証システムによる乗船を試験的に開始する予定だという。チェックインや乗船手続き、荷物のやりとり、ウェイファインディングなど、楽しさを半減させるようなその他の作業も含め、効率化・縮小化したいという考えだ。

これは乗船作業をより効率的に行うものであり、かなり大きな前進だと当社は捉えています。テクノロジーを周りの環境に溶け込ませようとしているのです。

ドリンクを乗客に届けると言っても簡単ではない。ここ数年にわたって、まずは同社の所有船にインターネット接続設備を増設しなければならなかった。Schneider 氏によれば、数キャビンごとの専用スポットに Wi-Fi ルーターが置かれているという。Royal Caribbean Cruises 最大の船である Harmony of the Seas は乗客定員6,700名なのだから、一筋縄ではいかない。スマートフォンあるいはウェアラブルに届くシグナルに基づき三角法によって人間を見つけるのだが、その際これらの Wi-Fi ルーターが使われているのだ。この Wi-Fi ネットワークは衛星とつながっており、これによってインターネットへのフルアクセスが可能となっている。

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Royal Caribbean のクルーズ船内はハイテクなバケーションスポットとなっている.
Image Credit: Royal Caribbean

Schneider 氏はこう言う。

船という船、そして船中のインターネットアクセスポイントに投資を行ってきました。

人間の位置を突き止めるのには、Wi-Fi ネットワークに加え、推測航法その他のセンサーも使われている。子どもの居場所を両親が追跡したり、あるいは乗務員がピンポイントで(プールでもデッキでも)乗客にドリンクを運ぶことも可能となる。ウェアラブルやスマートフォンで、キャビンの鍵を開けたり室内温度を変えたりすることもできるのだ。

Royal Caribbean のパートナーである Ernst & Young が、今回のテクノロジーに関するコンサルティングおよび戦略についてサポートを行っている。全般的に見て、テクノロジーブランドに関しては一任する姿勢のようだ。

実際のクルーズに先駆けて、VR アプリで船の様子を確認しておくことができる。これは、バケーションの計画を練ったり、寄港地オプショナルツアーに参加した場合どんな感じなのか疑似体験できるなど、バーチャルプランニングへの扉を開けるものである。3D・360度の景色を眺めてどのように1日を過ごせるのかチェックすることもできる。リスクとしては、VR 体験でバケーションに「行ったし、やったよね」となってしまうことではないだろうか。

またゲームや AR(拡張現実)を楽しんだり、インタラクティブな標識に従って船を探索することもできる。乗客が携帯電話で食事をオーダーしたり予約を取ったりすることが可能となる。また残念ながら、海の見えないキャビンに滞在する客もいることだろう。しかし Schneider 氏は、そんな時でも「バーチャルバルコニー」を投影することで、オーシャンビューがあるかのように感じることが可能だという。あるいは天井に星空を映すこともできる。

また「X-ray vision」という面白いテクノロジーもある。AR 体験のようなもので、船内のある箇所にスマートフォンを向けると、その後ろにある物を見せてくれるというものである。普通では行けない場所も含まれ、機関室や操舵室といった場所も安全に見学することができる。

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Royal Caribbean のハイテククルーズ船(コンセプトアート).
Image Credit: Royal Caribbean

乗務員側にもテクノロジーを使わせることで効率化を図り、また船の安全性全般、マネジメント、燃料効率などの助けとする。

これら全てが未来的な話に聞こえるだろう。しかしながら Royal Caribbean は予想を超えるスピードで、船舶へのあらゆるテクノロジーの導入を進めていく予定だ。今年のうちに同社の船舶15%に新テクノロジーを装備し、2018年末までにはそれが30%になる見込みだ。

クルーズでのバケーション中に、インターネットが必要だという乗客は本当にいるのだろうかと思うかもしれない。しかしバケーション客の意見について、Schneider 氏はこう述べている。

インターネットへの要望はあります。しかもどこでも使えるものがいいのです。乗客はインターネットが船の隅々まで使えることを希望しています。

【via VentureBeat】 @VentureBeat

【原文】

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