<ピックアップ : Amazon’s bookstores are generating almost no revenue — and there’s an obvious reason why >
Amazonが自然食品スーパー 「Whole Foods」を137億ドルで買収 して間もない中、 2017年第3四半期の同社の財務状況が発表 された。
実店舗収益の13億ドルのほとんどはWhole Foodsから来ていた。一方、全米に12旗艦店舗と50のポップアップ店を構える「 Amazon Books 」からの収益は決算書を見る限り、相対的に皆無であることがわかった。
一体Amazon Booksの役割は一旦なんなのであろうか? 今回はAmazon Booksの位置付けを紐解きながら、Amazonの会員獲得戦略を考察していきたい。
会員インセンティブとしての実店舗
まず前提として考えるべきは、収益源としてAmazon Booksの実店舗数を拡大させているわけではないことだ。Amazon Booksはプライム会員に対してインセンティブを与えるために建てられたと考える方が正しい。
店内に入るとオススメの本が読者レビューと一緒に置かれている。普通の本屋と違うのは会員と非会員とで値段が違うという点だ。会員はAmazonプラットフォーム上と同じ料金で購入出来るが、非会員はAmazon価格ではなく通常価格での購入を余儀なくされる。
非会員が店舗を訪問し、気に入った本を手にした際「この場で買うよりオンラインストアで買った方が安上がり」という考えがよぎるだろう。一方でプライム会員はオンラインと同価格で「即買い」出来るというメリットを得られる。
こうしてAmazon Booksは会員の即買いニーズを満たすための拠点として機能する。つまり、価格の差別化による顧客インセンティブ戦略が込められているわけだ。
とりわけミレニアルズ(1970年代後半から1990年代前半に生まれた世代)や、ジェネレーションZ(1990年中盤以降に生まれた世代)に代表される若い世代はAmazon Booksのような実店舗の存在を評価する。
ミレニアルズの過半数以上 、 ジェネレーションZの60%以上が実店舗でショッピングを楽しむ と調査結果もある。また、95%のミレニアルズにとって 「価格」が最も大切な購買動機 とのこと。さらに このデータによれば ミレニアルズは当日届く「急ぎ便」のために平均5.5ドルの予算を持っており、これは非ミレニアルズの3.8ドルより44%高い即買いニーズを持っていることを意味する。
つまり、10代から30代までの幅広い層は、Amazonによる価格差別化に沿ったインセンティブや即買い環境を受け入れやすい顧客心理を持っていると言える。
実際、実店舗需要をうまく突いたスタートアップも複数登場してきている。
- Curbside : 大手小売店舗Targetと組んで(現在は提携解消)、店舗駐車場で待っているだけで事前にモバイル・オーダーしておいた商品を専用スタッフが届けてくれる店舗ピックアップサービスを提供している。買い物代行サービス「Instacart」、「Postmates」、「Google Express」などで負担させられる送料を支払いたくないというニーズを満たしたサービス。ユーザーはピックアップサービスの利用料を無料で利用でき、提携先小売店から収益化をする
- Happy Return : ショッピングモールと提携してEコマース購入したものを即返品できるブースを出店。返品する商品を包む必要もなく、そのままドロップオフするだけで返品送料もかからない。 2015年度の北米返品市場は2605億ドルに及び(3兆ドルの小売市場の内8%が返品される計算)、その内10%が領収書がない返品、6%が詐欺まがいの返品 。直接返品してもらうことで信頼度を確認した上でEコマース業者へ返品できる、かつ顧客は無料で簡単に返品できるという両者にとって大きなメリットが評価されている
実店舗戦略の先には会員の 高いLTV(顧客生涯価値)が挙げられる 。非会員と比べて2倍の年間購入額が平均1,300ドルに達する。言い換えれば1会員獲得すれば年間750ドルもさらなる収益化が図れる。
プライム会員にとって、オンラインマーケットプレイスじょうでは急ぎ便を制限なしで利用できるメリットはすでにあったが、実店舗を通じて即買いできるメリットを新たに享受できるようになった。非会員は実店舗で感じる差別感によって会員の魅力を感じ、加入するきっかけを手にする。
Amazon Booksは顧客獲得戦略及び既存会員へのさらなるインセンティブを与えるという位置付けで上手く機能しているわけだ。(後半につづく)
via Business Insider
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