インドネシアのバイク版配車アプリ「Go-Jek」、フィンテックスタートアップ3社を買収——オンライン&オフライン&コミュニティ決済を強化

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GO-PAY
Image credit: Go-Jek

今日までに Go-Jek は、フィンテックスタートアップ3社の買収を完了した。その3社とは、Midtrans(旧称 Veritrans Indonesia)、KartukuMapan(PT Ruma)で、買収金額は非開示。買収後、3社は Go-Jek グループのもとで、独立して運営が継続される。各社の CEO は現在の地位にとどまるが、Go-Jek グループの上級管理職の地位にも就く予定だ。今回の動きにより Go-Jek は金融機関、大企業、中小企業、さらには銀行口座を持っている人、持っていない人に専用の決済エコシステムの提供が可能になる。

買収話の噂は、少なくとも3ヶ月前から流れていた。以前、私はこの買収によって、Midtrans や Kartuku の支援により、Go-Jek の決済システムである GO-PAY がオンラインおよびオフライン決済ゲートウェイから強い支持を得られるだろう、と書いた。Mapan(旧称 Ruma)が加わったことで、理想的に考えれば、インドネシア社会の大多数の人々に金融包摂(フィナンシャルインクルージョン)を届けることも可能になるだろう。

買収される3社をすべて合わせると、クレジットカード、デビットカード、デジタルウォレットを通じた年間決済処理金額の合計は、67.5兆ルピア(約5,600億円)に上る。

Go-Jek グループの創業者兼 CEO の Nadiem Makarim 氏は、声明の中で次のように述べている。

我々は、Go-Jek を次のステージへと向かわせているところです。今日発表した買収を通じて、我々はビジョンや社風を共有できる3社と力をあわせ、さらに尽力していきます。これは、インドネシアの躍動するフィンテック業界の中心的存在である我々にとって重要な進歩を意味しています。

Kartuku、Midtrans、Mapan を Go-Jek ファミリーに迎えられることにわくわくしています。3社とは既に協業を始めており、長年にわたって彼らの進歩を見てきました。経済成長を刺激したい、インドネシアに金融包摂をもたらし日常生活を改善したい、という共有のミッションのもとで共に仕事できることを楽しみにしています。これは、2020年までに東南アジア最大のデジタル経済になろうという、インドネシア政府の期待にも沿ったものです。

Mapan CEO の Aldi Haryopratomo 氏は、Go-Jek グループ内で GO-PAY 事業を牽引する役割を担うことになる。Midtrans CEO の Ryu Kawano Suliawan 氏は、同グループの事業者プラットフォームを担当、Kartuku CEO の Thomas Husted 氏は、同グループの新 CFO に就任する。

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加速装置としての金融包摂

インドネシアにおけるクレジットカード保有率が全人口比4%未満ということを考えれば、今日のデジタル企業にとって、新しい顧客を獲得する上で決済システムは致命的な課題だ。GO-PAY はこの分野で唯一の存在ではないが、Go-Jek が運営する交通、フードデリバリ、パッケージ配達といった分野では、その現金を使わない簡単さから、デジタル顧客にとって最も人気のある決済手段の一つだ。

Go-Jek グループの社長である Andre Soelistyo 氏は、次のように述べている。

2018年は、GO-PAY が Go-Jek のエコシステム外にも進出を始める年になるでしょう。便利でセキュアで信頼のできる決済サービスを、オフラインとオンラインの両方で提供します。

今回の買収により、オフラインでは Kartuku が、オンラインでは Midtrans が、そして、銀行口座を持たない人には Mapan による金融包摂が、GO-PAY の普及と市場リードを加速してくれるでしょう。Go-Jek グループの中でインドネシア生まれの代表的なテクノロジービジネスに導入されたことで、金融に対するこのアプローチは、何百万人ものインドネシア人に金融包摂を加速し、インドネシアの津々浦々で経済生産性を刺激するでしょう。

経営陣と従業員は以前と同じ業務を続けますが、買収が最終化後は、グループ内でのシナジーから互いに利益を得ることになるでしょう。

Go-Jek は最近、請求書支払に GO-PAY を使える GO-BILL というサービスをローンチした。まずは、電気代とインドネシアの国家医療健康保険システム BPJS Kesehatan の料金が支払えるようになっている。

Go-Jek は8月、イベント管理分析プラットフォームの Loket を買収、現在は Go-Jek のチケットおよびエンターテイメントプラットフォームである GO-TIX に管理が移っている。Loket をイベント分野で積極的にイノベートするのは戦略的な動向だ。

Go-Jek によれば、同社のプラットフォームは、週あたりユーザ1,500万人、ドライバー90万人、事業者12.5万社にサービスを提供。1ヶ月間で処理されるトランザクションは、1億件以上に上る。

来年にはフィリピンへの進出を計画している。

買収された3社は、それぞれ独立したビジョンを追求

Suliawan 氏と Haryopratomo 氏は、それぞれ運営する Midtrans や Mapen が、それぞれ独立したビジョンを追求し続けることを DailySocial に確認した。彼らによれば、GO-PAY がユーザに対してさらに良いサービスを提供し、Midtrans や Mapen のミッションをも加速させるだろうとのことだ。

Suliawan 氏は、Midtrans の他のプロダクト同様 Prism (チャットコマースプラットフォーム)が、今後もオンラインコマース市場にサービスを提供していくと語った。

インドネシアのオンラインコマースの加速を支援することにコミットする姿勢は、これまでと変わりません。

Haryopratomo 氏は、より多くのインドネシアの家族にコミュニティベースの金融サービスを体験できる機会を作るべく、Mapan は努力を続けると語った。Go-Jek グループの一員として、Mapan は銀行口座を持たない社会、特に Go-Jek が使えない僻地に住む人々に対して、金融包摂を加速することができる。

GO-PAY は買収後に重要な役割を担うが、他の決済手段も Mapan や Midtrans の支援受けることになるだろう。それにより、顧客は自分が心地よく楽しいと思える方法で、さまざまな決済手段を選べるようになる。

インドネシアはモバイルファーストな国なので、デジタル決済は都市部でも僻地でも、社会に広く受け入れられると確信しています。これは、インドネシア地元企業として、金融包摂やデジタル経済に関する政府プログラムを支援・加速する Go-Jek グループの努力の一つです。

【via DailySocial】 @DailySocial

【原文】

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