ランサーズが個人融資事業参入、パーソルHD・新生銀行と資本業務提携で「ランサー経済圏」構築へーー累計調達額は23億円に

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ランサーズ代表取締役の秋好陽介氏

クラウドソーシング大手のランサーズは12月18日、パーソルホールディングスと新生銀行を引受先とする第三者割当増資で10億円の資金を調達した。ランサーズは同時に両社と業務提携も締結し、フリーランス向け融資事業に打って出る。

ランサーズの調べによると、日本におけるフリーランス人口は労働人口の17%にあたる1122万人で、昨年比5%増となり、正社員や派遣とは異なる第三の「新しい働き方」を選択する人々が増加傾向にあるという。一方で今回提携するパーソルグループは派遣のテンプスタッフや人材紹介のパーソルキャリア(旧インテリジェンス)などを傘下に、日本の労働人口の流動生を高める事業を展開してきた。

両社はこれまでパーソルグループ傘下のパーソルキャリア(旧インテリジェンスホールディングス)から出資を受けるなど業務提携を進めてきたが、この枠組みに新生銀行を新たに加え、取り組みの第一弾として個人が新しい働き方を選択する際、必要となる設備投資や教育訓練などに必要な資金を融資する金融サービスの開発・提供を目指すとしている。

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ランサーズは今年4月に昨年の売上高が21億円に拡大していることを公表した上で、オンラインのお仕事マッチングだった「クラウドソーシング」という枠組みを超えた新しい戦略として「Open Talent Platform(オープンタレントプラットフォーム)」構想を発表している。ここでは個人のスキルをマッチングする新サービス「pook」や法人向け事業「QUANT」の分社化など、拡大に向けたアクションプランを披露した。

今回、発表された個人向け融資の事業もその延長上にあり、個人が会社員と同様に社会から同等の与信や第三者評価を得られる仕組みのひとつとして期待が集まる。具体的にはパーソルグループやランサーズの持つ個人のスキルや働き方に関する評価データなどを「タレントスコア」として可視化し、新生銀行の持つ金融ノウハウをあわせて事業に投入することとなる。

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ランサーズ代表取締役の秋好陽介氏は、今回提案する「ランサー経済圏」を構築する評価軸、タレントスコアを両社と協力して開発することになると改めて説明してくれた。

「今回のラウンドで累計調達額は23億円になりました。(資本業務提携する2社は)共にオープンタレントプラットフォーム構想でフリーランスの働く選択肢を増やし、その土台となるタレントスコアを一緒に作っていくパートナーと考えています。主な連携内容は、パーソルホールディングスさんとはフリーランスの働き方・評価(タレントスコア)をトータルで一緒に作っていく予定です。ランサーズにも本業は社員だけれども副業はランサーズ、パーソルさんにも本業は社員で働くけど、パラレルでフリーランスをするという方が増えております」。

また秋好氏は今回の提携で、特に恩恵を受けるのが「パラレルワーカー」という、社員とフリーランスを兼業する人たちになるのだそうだ。

「通常の仕事とフリーランスは仕事そのものも、仕事での評価データなども断絶していました。新しい経済圏ではランサーズで働いた実績がリアルの仕事にもフィードバックされて時給が上がる、逆もまた然りでそういう世界(=個人の信頼が見える世界、タレントスコア)を構築します」。

もう一つの提携先、新生銀行とはこのスコアを中心とする与信について取り組みが予定されている。

「新生銀行さんともタレントスコアを一緒に作ります。ランサーズにもユニークな仕事データがたくさんありますが、量・質ともに個人の与信データに強い同行と連携してタレントスコアを拡充し、ランサーズで仕事して一定のスコアの人には融資を行い、フリーランスは会社員に比べるとお金を借りにくいという現状を変化させたいと思っています。働くだけでなく生活全体を一緒に作っていくイメージです」。

個人に関するスコアリング構想はライバルのクラウドワークスも「クラウドキャッシュ」という形で発表している。日本の新しい働き方をめぐるインフラづくりはこの2社が引き続き牽引することになりそうだ。

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