Tokyo VR Startupsが第3期デモデイを開催——次期からは、VR・AR・MRを幅広に扱う「Tokyo XR Startups」に改称することが明らかに

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記者会見に応じる、Tipatat Chennavasin 氏(The Venture Reality Fund GP)と國光宏尚氏(同 GP 兼 特別 LP、Tokyo VR Startups 創始者、gumi CEO)
Image credit: Masaru Ikeda

ゲームデベロッパの gumi (東証:3903)らが運営する、バーチャルリアリティ(VR)などに特化したスタートアップ・インキュベータ「Tokyo VR Startups」は7日、東京都内でインキュベーションプログラム第3期のデモデイを開催した。会場では第3期に参加した7チームのほか、Tokyo VR Startups と姉妹関係にある韓国の Seoul VR Startups(韓国 YJM Games との共同運営)から1チームが参加、さらに、韓国 Next Reality Partners の支援先2チームが参加する盛大なイベントとなった。

本稿では、日本から第3期に参加したスタートアップ7チームの顔ぶれを紹介したい。

Graffity by Graffity

Graffity には、空間にデコれる AR アプリだ。iOS 11 がリリースされた9月中旬から開発に着手、女子高生を中心に多くのユーザを集めている。空間上に文字や画像を残せるほか、実空間上に投影した映像(AR)を動画として撮影し、それをシェアすることもできる。AR クラウドを活用しており、将来的には、クラウド上に蓄積されたデータをもとにしたターゲティング広告、リアル(実空間連動)へのインサート広告によるアドネットワーク、AR フィギュアの販売などをマネタイズ方法として想定。

MARGIC by mikai

mikai は、ゲーム・アニメ特化型おもしろ動画コミュニティ「MARGIC」を開発。簡単にいえば、かめはめ波や波動拳のようなエフェクトを、簡単に実写動画にアニメ合成できる環境を提供し、その動画をユーザ同士がシェアしあうことでコミュニティを形成するアプリで、AR 版の Musical.ly を目指す。数年前には、静止画でこれらの特殊効果を重ねた画像のシェアが流行ったことがあったが、それを動画で実現する試み。

mikai では、来年初頭のコミケに間に合わせるべく、MARGIC のβ版を年内には iTunes AppStore に公開する計画だ。映画と連動した動画キャンペーンなど企業にとってのマーケティング手段を増やすことや、キャラクタやアニメエフェクトの販売などがマネタイズ手段になり得るという。

Full Dive Novel by My Dearest

Full Dive Novel は、小説を VR 空間内で読むことで、読者が小説の主人公になれる体験を提供するサービス。とかくゲームなどストーリー性の乏しいコンテンツが多い VR のカテゴリにおいて、My Dearest は編集者やクリエイターを多数集めることで、VR 小説や VR 動画といったストーリー性豊かなコンテンツの制作に強みを持つ。当初は自社コンテンツを制作・販売するが、今後、ユーザが VR コンテンツを自ら作れる開発汎用キットを制作し、ユーザがコンテンツを自由に売買できるプラットフォームの構築を目指す。

リアルタイムアニメーションシステムとバーチャルタレント by Activ8

Activ8 は、操作者が身体にセンサーをつけることで、アニメキャラクタを操作できるリアルタイムアニメーションシステムを開発している。人の動作をそのままアニメキャラクタの動きに変換、マイクで拾った音声を波形解析し、話した言葉に応じてキャラクタのリップシンクを行うことも可能だ。

展示作品の版権都合で写真を掲出することはできないが、Activ8 ではバーチャルタレントをプロデュースした経験を生かして、このプロダクトを、さまざまなイベントやキャンペーンを展開したい企業に売り出す考えだ。ただし、システムとしてではなく、アニメキャラクターのタレントエージェンシーとしての役割を果たしたいようだった。

Momently by Pretia

Pretia が開発する「Momently」は、ソーシャル AR アプリだ。AR で 3D オブジェクトを実空間におけるようにすることで、動画のポテンシャルを高めることを狙っている。ユーザには面白動画の作り方の腕を磨いてもらい、どこにでも AR を置けるようにする環境を提供。

AR クラウドがコンシューマレディになったタイミングでのドミナントを狙い、ユーザデータの収集と AR クラウドの活用した独自技術で競合優位性を確保したいとしている。将来的に、ユーザへのターゲティング広告などでマネタイズしたい考えだ。

BlitzFreak by ActEvolve

ActEvolve は、VR による e スポーツゲーム「BlitzFreak」を開発している。通常、VR は HMD(ヘッドマウント・ディスプレイ)を装着した操作者しか楽しめないが、BlitzFreak では、 VR 上に中立カメラという100以上の視点を設けることで、操作者以外の観客もさまざまなアングルからゲームを楽しめるようにした。プレーヤーの動きを後ろから追尾する視点を用意しているほか、観客がプレーヤーの回復アイテムを投げ込めるようにするなど、ゲームをインタラクティブにする工夫が詰め込まれている。

プロトタイプは既に渋谷の VR バーなどにも設置されているとのことだが、来年初頭からアーケード施設への導入を本格展開する。日本や VR アーケードが最も多い韓国で、コンテンツの開発やテストを繰り返し、市場としてはゲーム人口の多い中国・マレーシア・台湾・シンガポールなどに展開したい考えだ。2019年夏から末をめどに、VR デバイスが普及するコンシューマ向けのリーチを狙ったビジネス展開を図る計画としている。

ゲームを観客から見たビュー
ゲームを操作者から見たビュー

BE THE HERO by EXPVR

EXPVR が取り組むのは、VR における移動方法の革新だ。現在の VR においては、ユーザが移動先をポインティングすることで移動できるワープ方式か、または歩行や飛行による方式がとられている。前者についてはスムーズに移動できる感覚は得られないし、後者では「VR 酔い」を引き起こすことがしばしばだ。

そこで、EXPVR では VR 酔いが起きない VR における移動方法を開発した。画面上に集中線を描くことでユーザに自ら身体を動かして移動しているような感覚を与え、また、乗用車などで同乗者は車酔いしても運転手は車酔いしないことにヒントを得て、手首などの身体の動きと VR 上での移動がシンクロするよう工夫している。

自然な移動方式を VR 上に再現する上で他にもいくつかポイントがあるそうだが、EXPVR では特許をとることをせず、むしろ、広くさまざまなゲームデベロッパにコンセプトを採用してもらい、VR ゲーム全体のレベルが上がることを期待しているという。VR における移動やバトルのしくみをモジュール化することで、Web 3.0 としてユーザが自ら VR ゲームを作り出せる世界を構築したいという。

アメコミ風の VR コミックも同社の売りの一つ


なお、Tokyo VR Startups は次期インキュベーションプログラムから「Tokyo XR Startups インキュベーションプグラム(TXS)」に名称変更することを発表した。gumi CEO の國光宏尚氏は先ごろ、SLUSH 2017 や Nordic VR Startups のデモデイに参加していた際、VR にとどまらない、AR(augmented reality)や MR(mixed reality)を含む幅広の技術やサービスを、Tokyo VR Startups の支援対象に含めることを示唆していた。それが名称に反映されたことになる。なお、 Seoul VR StartupsNordic VR StartupsThe Venture Reality Fund(The VR Fund) などが、それぞれ XR と表記を変更するかどうかについては言及されていない。

今回の第3期デモデイ開催とあわせ、Tokyo XR Startups では第4期参加スタートアップの募集を開始した。応募締切は2月27日で、参加が許されたチームには、コワーキングスペースの無償利用、日本内外の業界エキスパートによるメンタリング、プロダクトやサービス開発のための500〜1,000万円の出資などの便宜が提供される。

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