東南アジアの物流スタートアップNinja Vanが8,700万ドルを調達、地域史上最大額で事業拡大へ

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シンガポール発、東南アジア地域の「ラストマイル」配送を手がける物流スタートアップのNinja Vanが、8700万ドルという大型の資金調達をしたことが先週複数のメディアで報じられた。この額は、東南アジア地域のスタートアップによるシリーズCラウンドの資金調達額としては史上最大規模のものだ。

今回の調達ラウンドに参加した欧州の物流企業Geopost(DPDgroup)は、今回の出資で同社の32パーセントの株式を取得している。現在の主要な株主は、その他にMonk’s Hill VenturesやFacebookの共同創業者Eduardo Saverin氏が立ち上げたB Capitalの他、日本のSamurai VenturesやYJ Capitalも含まれる

今回の資金調達は、2016年のシリーズBラウンドでの3000万ドルの調達に続くものだ。

成長の要因は、タイミングとローカルな課題の理解

順調な成長を遂げているように見えるが、Ninja Vanは業界経験のない20代の若者たちが立ち上げたスタートアップであり、特に創業初期はオフィスに泊まりこみながら寝る間を惜しんで事業をつくる数ヶ月を過ごしていたようだ。

ファウンダーの1人、Changwen Lai氏は、デリバティブのトレーダーという高給の仕事を辞めたあと、テーラーメイドのファッションブランドを立ち上げたものの、商品の配送で遅延や紛失がよく起きるという問題に直面する。その時にeコマース事業における配送の問題の大きさを痛感し、物流を解決するためのスタートアップNinja Vanを立ち上げた。2014年のことだ。

シンガポールにおける配送は郵便局のサービスが主だった当時、Ninja Vanは、注文の翌日に配送先の玄関まで届けることを掲げて、業界の変革にチャレンジする。

実際、これまでの事業成長の要因として、「従来の配送システムの非効率さについて理解している」こと、そしてeコマースが成長しているにもかかわらず、配送の問題を解決しようとするライバル企業が当時はまだ少なかったという「タイミングの良さ」を挙げている。

Ninja Vanの過去のインタビューを見ると、eコマースにおける配送の問題が、いかに地域によって異なるかが分かる。

たとえば、マレーシア展開後には現場のデータとの同期の問題という、インフラやシステムが整っているシンガポールでは起こらなかった問題に直面したことをイベントで語っている。

また、マレーシアでは、住所の情報だけではGoogleマップやGPSシステムで場所を特定することができなかったり、非公式の施設が多々あったりと、配送先の特定という根本的な問題にも直面したという。

こうして、各地域ごとのローカルな問題に現場で直面し、その背景を理解していって、徐々に問題を解決していったようだ。

東南アジアのeコマースの成長とともに、伸びる物流サービス

人口が6億を超える東南アジア地域のeコマースの規模とその成長は顕著であり、同時にeコマースのオペレーションを支える物流も今後大きな成長が見込まれる。Technavioの市場調査アナリストは、グローバルのeコマースロジスティクス市場は2020年まで、年平均成長率が10%になると予想する。中国のAlibabaの物流を担当するCainiaoも、昨年7億9900万ドルという大型の資金調達を行なっている。

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一方で、収益の面ではまだ安定には遠いようだ。物流ネットワークを築く、配送用の車両を確保するなど、重い初期投資が必要になる類の事業であるだけに、今後いかに黒字化できるかが注目される。

また、昨年シリーズCで1億米ドルの大型調達をした香港の物流スタートアップLalamoveなど、この領域のライバルも増えつつある状況だ。

現在、アリババが所有するLazadaをクライアントにもち、社員は配送担当も含めて1000名を超えるNinja Vanだが、今回調達した資金をもとにどれだけ成長を加速できるか、大きな期待がかかっている。

参照:

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