京都発・EC事業者向け送り状発行SaaSの「Ship&co」、プレシリーズAラウンドでスパイラルベンチャーズから1億円を資金調達

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Bertrand Thomas(ベルトラン・トマ)氏
Image credit: Ship&co

京都を拠点に、複数運送会社/EC プラットフォームに対応する送り状発行 SaaS「Ship&co(シップ・アンド・コー)」を運営する BERTRAND(ベルトラン)は先週、プレシリーズ A ラウンドでスパイラルベンチャーズから1億円を調達したことを発表した。調達した資金は、人材拡充とシステムの追加開発に当てられる予定。

BERTRAND は2008年11月、京都市を拠点に活動するフランス人起業家の Bertrand Thomas(ベルトラン・トマ)氏により設立。

Thomas 氏は2003年、京都大学への留学を機にで来日し、2005年くらいからブログを書いていたという。日本の文化を扱ったこのブログは次第に人気を集め、800人〜1,000人ほどのユーザが毎日訪れるようになった。ある日、このブログでお弁当についての記事を取り上げたところ、フランスに住む読者や友人からは高い評価を得たものの、現地には容易に美しいデザインの弁当箱を購入する手段がなく eBay などに頼らざるを得ないと指摘を受けた。

この指摘にビジネスチャンスを感じ取った Thomas 氏は、妻や友人らと Shopify を使って3週間ほどで弁当箱を専門取り扱うオンラインショップ「Bento&co」をオープン。2012年からは京都・新京極に実店舗「Bento&co Kyoto」をオープンし、海外イベントなどでも展示を始めた。オンラインショップは100カ国以上から注文を集めるまでに成長したという。

事業が成長してきた EC 事業者にとってぶつかる問題の一つは、商品発送業務の著しい増加だ。特に海外の顧客が多い EC 事業者の場合、送り先に合わせて運送業者を選ぶことで送料を抑えることができることは一般的。しかし、発送する荷物に貼付する送り状は運送業者によってフォーマットが異なり、手書きするには煩雑だし、運送業者が提供する送り状印刷の専用ソフトを使うにも、運送業者によって使い分けが必要になる。海外発送の場合は、通関のためのインボイスも必要になる。

Ship&co
Image credit: Ship&co(クリックして拡大)

このような煩雑な業務をなんとかシンプルにできないかと考えた Thomas 氏は、そのしくみを社内で作ってしまった。Ship&Co の誕生だ。運送業者とは、国際郵便(日本郵便、ゆうパック)、フェデックス、DHL、UPS、佐川急便、ヤマト運輸(現在は送り状発行システム「C2」のみ、来月から「B2」にも対応)と API 連携。また、EC のストアフロント側も、Shopify、eBay、BASE、PrestaShop、Magento、Amazon Marketplace、楽天、ネクストエンジン、Stripe、WooCommerce と連携する(来月には Yahoo ショッピングにも対応予定)。

元来、日本の運送業者というのは、事業者に対して、できるだけ多くのロットの発送を自社に振り向けてもらうことと引き換えに、割引された仕切り値を提供してきた。ただ、運送業界の労働力不足やそれに由来する料金の値上げ、また海外発送ともなれば、割引があったとはいえ、特定の運送業者に依存していたのでは送料が割高になってしまう。

この分野の世界的な動向を見てみると、アメリカでは、昨年10月にシリーズBラウンドで2,000万ドルを調達した Shippo、Stamps.com(NYSE:STMP)に買収された ShipStationShippingEasy、オーストラリアでは Neopost(EPA:NEO)が買収した Temando などが台頭しているが、日本はもとよりヨーロッパやアジアはブルーオーシャンだ。

Ship&co では今後、フランスの La Poste、シンガポールの Singapore Post、オーストラリアの Australia Post とも連携し、今夏を目処に Ship&co をサードパーティデベロッパが自社サービスに組み込める API をリリースする予定。海外展開にも着手し、2019年はじめにシリーズ A ラウンドの調達を目指す。

Ship&co は、日本のスタートアップとしては初めて、Shopify のアプリストア上に掲載。アジア太平洋地域で初めての Fedex Compatible Provider に認定された。今後、UPS Ready Provider の認定取得も目指している。2月13日〜14日に東京ビッグサイトで開かれる「イーコマースフェア 2018 東京」にも出展する予定だ。

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