Tencent(騰訊)、決済データやソーシャルデータを利用した新たなクレジットシステム「Tencent Credit(騰訊信用)」をテストローンチ

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Tencent Credit(騰訊信用)
Image credit: Tencent(騰訊)

追記(2018年2月1日11時58分):Tencent(騰訊)は Tencent Credit(騰訊信用)を取りやめた。

追記(2018年2月1日14時15分):同社の広報担当者によれば、Tencent Credit のローンチは試験的なものであり、その試験期間が終わったとのことである。

中国がモバイル決済と共にキャッシュレス社会へ邁進するとともに、消費者信用の未来を形作る上でテクノロジー大手企業は重要な役割を果たしている。特に人口の約3分の1しかクレジットヒストリーを持っていない国では。

昨日(1月31日)、Tencent(騰訊)は独自のクレジットシステムである Tencent Credit(騰訊信用) をローンチした。対象は WeChat(微信)もしくは QQ を使用している全ての中国国民である。この2つのチャットアプリは Tencent が運営しており、どちらも1ヶ月間に8億を超えるアクティブユーザを誇る。

ユーザは300から850の間でつけられるスコアに応じて多くのサービスや特典を利用できる。例えば深センで家を借りる際の保証金が免除されたり、WeChat を使って地下鉄を利用できたり、Mobike(摩拜単車)のレンタサイクルを1ヶ月間無料で利用できたりといったことだ。しかしながら特定の都市に限って利用が可能なものもある。

将来的にはユーザは Tencent Credit のローンで同社の小口融資サービスである Weilidai(微粒貸)を使い、最大で4万7,600米ドルまで借りることができるようになる。Tencent の実店舗を持たない「インターネットバンク」である WeBank (微衆銀行)がこのローンの後ろ盾となっている。

Ant Financial(螞蟻金融)独自のクレジットスコアである Sesame Credit(芝麻信用)と同様に、Tencent Credit は5つの幅広いメトリクスによるスコアをユーザにつける。Honor(名誉)、Security(安全性)、Wealth(資産)、Consumption(消費)、そして Social(社会性)である(編集者注:これは Tech in Asia による翻訳でありTencent が翻訳したものではない)。Tencent によれば、これらのカテゴリは WeChat Pay(微信支付)と QQ Wallet(QQ 銭包)からのモバイル決済処理データ、金融資産と返済済みのローン、そしてユーザのソーシャルネットワークの質のデータを含むとのことである。

同サービスの規約と条件によると、通信事業者や金融機関、政府の省庁といった第三者からのデータもユーザのクレジットスコアの参考にされるという。

Tencent はスコアリングのシステムについて詳細を明かさなかった。

クレジット競争

Tencent は中国人民銀行(PBOC)が2015年にクレジットスコアをつけることを許可した8社のうちの1社である。同年に開始した Ant Financial の Sesame Credit はオンライン化した最初のシステムの一つであった。

国内の旧来の金融機関とは違い、テクノロジー企業はオンラインでの買い物の傾向やソーシャルメディア、旅行データといった多くの消費者データを持っている。車のローンや家のローンのようなデータポイントの替わりにビッグデータを使うことでクレジットスコアを計算し、ローンの承認を自動化することができるフィンテック企業は、より多くの顧客に対し小額のローンを提供することができるようになってきている。

しかし、今までのところ8つの企業で規制当局の精査をパスしたものはない。Sesame Credit のようなシステムは当該企業のコアビジネスと密接に結びついており、政府関係者は客観性や公正さへの疑問を拭いきれずにいる。昨年、中国政府はオンライン決済のための国立クリアリングハウスを設立したが、それには Alipay(支付宝)と WeChat Pay という競合する2つのモバイルウォレットに旧来の銀行とデータを共有するよう強いる可能性があるものであった。

Ant Financial によれば Sesame Credit のユーザは2017年現在5億2,000万人であるという。同社は Sesame Credit がそのうち4,150万人のユーザの総額6,360万米ドル以上に相当する保証金を免除したとしている。Tencent Credit は追いつくべきことがたくさんあるだろう。特に、Sesame Credit は Alibaba の e コマースデータを活用することができるのだから。

リサーチ会社 Analysys の金融アナリスト Tian Jie 氏は Tech in Asia に次のように語った。

総合的に見て、データとアプリケーションの面では Sesame Credit が優位ですが、Tencent Credit も非常に高速で発展しています。

特にクレジットスコアリングという点では、ある種のデータポイントは、貸し付けやオンラインでの買い物の傾向といったものよりも効果的だ。

そういった意味で、Qudian(趣店)のようなオンライン融資会社と提携している Sesame Credit は Tencent よりも優位に立っていると同氏は説明する。「ソーシャルデータをどのくらいクレジットに使えるかという点で限界もある」が、ソーシャルアプリの膨大なユーザベースを考えれば、Tencent Credit も将来的なポテンシャルを秘めていると同氏は付け加えた。

Tencent の CEO である Pony Ma(馬化騰)氏は2013年という早い段階で、ソーシャルデータをクレジットスコアリングに使うということに興味を示していた。同年の Tencent のカンファレンスにおけるスピーチで聴衆に向けてこのように語っている。

将来、おそらく倫理に関するランキングシステムが生まれるでしょう。それによって融資を受けることができる額が決定されるのです。もし貴方の友人が高い倫理性を持っていたら、貴方自身の信用も高くなるはずです。さもなければ貴方とその人は当然友人にならなかったでしょうから。

Google Search がウェブページの関連性のスコアリングに使用する PageRank というアルゴリズムと前述のランキングシステムを比べながら同氏は続けた。

そういう風になるのではないかと想像していますが、まだまだ研究の初期段階です。

【via Tech in Asia】 @techinasia

【原文】

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