本稿は、Disrupting Japan に投稿された内容を、Disrupting Japan と著者である Tim Romero 氏の許可を得て転載するものです。
Tim Romero 氏は、東京を拠点とする起業家・ポッドキャスター・執筆者です。これまでに4つの企業を設立し、20年以上前に来日以降、他の企業の日本市場参入をリードしました。
彼はポッドキャスト「Disrupting Japan」を主宰し、日本のスタートアップ・コミュニティに投資家・起業家・メンターとして深く関与しています。
Platform as a Service(PaaS)はこれまで、アメリカで難しいスタートアップビジネスモデルだったが、Mobingi の創業者で CEO の Wayland Zhang(張卓)氏は、日本で PaaS を受け入れてもらえるようにする方法を見つけた。彼のアプローチは、日本の技術バイヤーが持つユニークな特徴とユニークな性格の両方を取り入れたものだ。
Zhang 氏は、おそらく日本にいる外国人としては、最速でスタートアップを立ち上げる記録となった話を聞かせてくれた。東京に来て2ヶ月後、まだ日本語も話せないのに、あるスタートアップアイデアに決意し、日本人共同創業者を見つけ、日本で最も競争率が高いスタートアップアクセラレータの一つに参加が認められたのだ。
興味深い対談なので、お楽しみいただけると思う。

Tim:
Mobingi の事業は、具体的には何でしょうか?
Wayland:
企業がクラウド上でアプリを管理しやすくします。我々のプラットフォームは、クラウドアプリのワークフローを自動化し、ユーザがシンプルな Web 画面を使ってリソースを設定できるようにします。
Tim:
AWS や Azure には既に Web 画面がありますよね、何が違うのでしょう?
Wayland:
まず、Mobingi はもっとシンプルで、特定のクラウドの操作に必要な専門知識が要らないということです。エンジニアはまだ複雑なコマンドを使うことを求められる一方、Mobingi ではその必要がありません。第二に、Mobingi を使えば AWS のスポットインスタンスの割当を自動化することができるので、自動的に必要なときにアプリの移動ができます。これにより、お客様が支払うコストを最大80%程度削減できます。
Tim:
Mobingi が魅力的な理由がわかりました。その節約できるコストというのは、Mobingi に支払うコスト以上なのでしょうね?
Wayland:
そうです。実際のところ我々の価格は、お客様が節約できるコストの15%と同額です。
Tim:
このプラットフォームは販売しやすそうですが、当初は難しかったとおっしゃっていましたね。
Wayland:
最大の問題は、お客様に Docker コンテナを使ってもらう必要があることでした。Docker はアメリカでは標準的ですが、日本企業は DevOps 文化を取り入れるのに時間がかかっています。
Tim:
それはなぜだと思いますか?
Wayland:
日本企業は、コンプライアンスを大変気にするからです。もし、明らかなセキュリティの問題があれば、それを直そうとするでしょう。しかし、日本企業はこれまでの手順を踏襲できると確信したいと考えるので、これが新しいイノベーションの紹介を難しくしたり、特定の問題が今は解決されないまでも、長期的にはセキュリティ問題が解決される小さな改善を難しくしたりしています。DevOps に心血を注ぐプログラマの小さなコミュニティもありますが、たいていの企業では一般的な存在にはなっていません。
Tim:
そのような問題をどうやって解決したんですか?
Wayland:
我々のお客様の多くは、新しい技術を好んで試そうとするスタートアップです。富士通のようなエンタープライスの顧客もいますが、DevOps ツールの使い方を教えるために、彼らのエンジニアリングチームには、しばしば緊密に連携する必要があります。この対応はシリコンバレーの SaaS スタートアップにはクレイジーに見えるでしょうが、日本でのビジネスでは、とにかくフェイス・トゥ・フェイスで多くのミーティングを求められることが多く、これが日本ではしっくりくるということです。
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Tim:
日本に来た多くの外国人は、ビジネス文化のそういった側面に驚かされますね。Web でモノを売るのに、しばしばフェイス・トゥ・フェイスが重要になる。Wayland さんは、デジタルガレージの Open Network Lab と 500 Startups という、日米両方のアクセラレータに参加されました。両者の内容は似ていましたか?
Wayland:
Open Network Lab に参加したのは、私が日本に来て2ヶ月目でした。人脈を作り、自信を持つために参加したのです。多くの人に会いましたが、私は日本語を話さず共同創業者が学びの多くを得たので、私は Open Network Lab についてはコメントできません。共同創業者と私は、サンフランシスコの 500 Startups で多くを学びました。しかし、どちらのプログラムにおいても、プログラムからよりも、(プログラムに参加した)仲間のスタートアップ起業家からの方が多くを学べると思います。
Tim:
富士通のアクセラレータにも参加されましたね? それは似ていましたか?
Wayland:
違ったものでした。富士通のアクセラレータは、富士通が協業するスタートアップを見つけるためのオープンイノベーションプログラムでした。ビジネスの方法を教えてくれるということはなく、我々を富士通の関連企業や部署につないでくれるというものでした。それで結果として、富士通は我々の主要な顧客になってくれました。
Tim:
中国でもいくつかビジネスを成功させていますね。どうして日本に来て会社を始めたのですか?
Wayland:
もちろん、日本は安全で、食べ物も美味しく、住みやすいということもありますが、本当の理由は私の妻が日本人で、日本に戻りたがっていたからです。日本語を話さない外国人である私は、普通の職には就けませんでした。スタートアップを創ることが、基本的に唯一の選択肢だったわけです。
Tim:
なるほど。しかし、日本に来て2ヶ月後に会社を作ったわけですね。そんなにすぐに共同創業者が見つかりましたか?
Wayland:
ラッキーでした。私の友人がデジタルガレージで働いていて、彼が共同創業者である堀内氏(堀内康弘氏。gumi 元 CTO、AWS 元エバンジェリスト)を紹介してくれたのです。彼は日本の IT 業界で極めて有名な人物です。堀内氏は Mobingi のアイデアに興味を持ってくれ、それを実現できると確信してくれました。彼の努力で、素晴らしいエンジニアリングチームを集めることもできました。
Tim:
日本に来て会社を作った外国人の立場から、最も驚いたことは何でしょう?
Wayland:
日本のビジネスパートナーや従業員の誠実さですね。中国のスタートアップ社内で、信頼関係というものはほとんどありません。プログラマがコードを盗み、従業員がお金を盗むということでさえ、よくある話です。したがって、多くのことを秘密にしなければならない。日本では、あまり心配することではありません。従業員は家族のように、共に仕事をしてくれるからです。
日本でいくつかの会社を創業した外国人として、私も日本企業における信頼関係のレベルには感心させられる。それは企業と従業員の間だけではなく、企業対企業の間においてもだ。日本企業は、アメリカ企業や中国企業に比べ契約を破棄するケースがかなり少ないし、ビジネスを一度始めれば納入業者を変えることもあまりない。
これこそ日本企業が素晴らしいお客様になる理由であるが、同じ理由から彼らに最初の契約にサインしてもらうのが大変難しいのも事実である。
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