開始約半年で40万DL「コスメ版ZOZO」目指すnoin 運営がグリーVらから3億円調達ーーその急成長の理由とは

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ノイン代表取締役の渡部賢氏

化粧品の動画コマースメディア「noin」を運営するノインは3月28日、グリーベンチャーズおよび500 Startups Japan、KLab Venture Partners、みずほキャピタル、個人投資家を引受先とする第三者割当増資を実施したと発表した。調達した資金は総額で約3億円。払込日や出資比率などの詳細は非公開で、これに伴い、今回ラウンドをリードしたグリーベンチャーズのパートナー、堤達生氏が社外取締役に就任する。

ノインの創業は2016年11月。昨年7月に実施したシードラウンドでは500 Startups Japan、KLab Venture Partnersから4000万円を資金調達している。今回のシリーズAラウンドはそれに続く2回目。

noinは化粧品に特化したコマースアプリ。動画コンテンツが特徴で、メイクなどのハウツーを教えてくれると同時に、そこで使われているコスメをその場で買うことができる。渡部氏によると2017年10月のリリース以来、約5カ月でiOSのApp Storeライフスタイルカテゴリ1位を獲得。ダウンロード数もテストフェーズながら大型プロモーションなしに40万件まで伸ばすことに成功した。

noin.tv】コスメ・メイク動画チャンネルさん(@noin.tv)がシェアした投稿創業者の渡部賢氏はLINEの前身であるNAVERでキャリアをスタートさせ、2012年から参加したグリーではニュース事業や検索サービス「介護のほんね」(現在はメドレーが運営)などを手がけるなど新規事業畑を歩んできた人物。2015年の独立後はGunosyやエブリーなどで検索や動画などをキーワードに、コンテンツ事業開発に携わり、その延長で現在のノインを法人化させている。

ノインでは調達した資金で人員の強化を進めるほか、Android版のリリースやアプリのマーケティング投資、および化粧品メーカーや小売業者がnoin上で直接商品販売できるよう、各社との事業提携を進めるとしている。

動画にコマースをくっつけただけでは「売れない」ーー急成長を支える丁寧な「視聴体験」づくりとは?

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動画コンテンツが花盛りだ。スマホ向け動画「C Channel」のデビューが20154。それ以降約3年間、「DELISH KITCHEN」や「kurashiru」のような料理動画、テレビのリプレイスモデル「Abema TV」、制作サイドのスマホ最適化を目指す「Candee」などなど、話題に事欠くことはなかった。

一方でビジネス的には、大きなリーチが期待できる料理動画の広告モデルが好調と聞こえてくるものの、中国のライブコマースほどの「馬鹿みたいな」爆発はまだ各社模索中といったところだろう。その中にあってnoinはひとつ成功の方程式を発見しつつあるようだ。渡部氏は躍進のポイントに視聴ストーリーの重要性を挙げる。

「情報収集に訪問する視聴者は買うっていうメンタルではないのでコンバージョンは遠いです。彼女たちは気になって調べて、欲しくなって検討して買う。だからライブコマースだけ切り出したようなアプリは正しい体験ではないですし、テレビでやっている通販番組はあくまでザッピングしている延長上にあるんです」(渡部氏)。

また、販売する商品の「意味付け」も重要だ。通販番組であればそこで買う理由がなければ、他のメディアに流れてしまう。渡部氏はメルカリのライブコマースを例にこうも話していた。

「動画は別にゴールではありません。情報の魅力を最大化させるためにテキストや画像の方がよければそちらを使うだけです。そういう意味でメルカリのライブコマースのやり方は正しいですね。元々のサービス購入という原体験があって、商品にたどり着くまでの手段のひとつとしてライブコマースを使っている。KPIはおそらく継続率を上げるという点にあるんじゃないでしょうか」(渡部氏)。

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NOINの動画コンテンツは購入に至る仕掛けが含まれる

フラッシュセールやライブコマースなど、情報収拾をする導線設計の中により面白い商品体験を織り交ぜる。安い高いという二元論ではなく、エンターテインメントや場合によってはコンプレックスの解消など、より定性的な感情を引き起こす「仕掛け」をスマホの中に仕込んでおく。こうすることで、彼らのアプリから購入に至るいわゆる「CVR(コンバージョンレート)」は10%を超える高い水準になっているのだそうだ。

「コスメって商品点数が大量にあるんです。JANコードベースだと20万点で、これに百貨店などのブランドを含めると30万点とも言われています。さらに原価率の低さから、これまで手がけていなかったフィルムメーカーなども参入が相次いでいます。さらに商品は増え続けるわけです。

一方でメーカーのメッセージと受け手のユーザーが欲しいメッセージにはズレがあります。また、オンライン上の価格に揺れも多く、自分が何を買えばいいのか、そしてそれは適切な値段なのか分からない、それが今の市場状況なのです」(渡部氏)。

こういうコンセプトを背景にnoinでは動画コンテンツをオリジナルで制作しているが、中でも興味深かったのはキャスティングに依存しないという考え方だ。どうしても既存コンテンツだと有名人を採用したマーケティング寄りの見せ方が増えてしまう。

しかし、noinは徹底的に「ストーリー」を重視し、ユーザーが自分の持つ肌の悩みや年齢など、そこに潜んでいるコンプレックスを解消してくれるコンテンツづくりに注力している。モデルは同じ悩みを共有できそうな人物が登場し、必要以上の演出は避け、どういう問題をどのようにすれば解決できるか細かく教えてくれるものにする、といった具合だ。こういったキュレーション動画のコンテンツは現在、50件ほど制作されており、今後も順次拡大するという話だった。

ノインは冒頭にも記述した通り、化粧品メーカーと直接提携してこのアプリ上での直販ができるよう提携を進める。渡部氏曰く、「化粧品版のZOZO」のようなポジショニングを目指すという話だった。

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