
AWS の Alexa for Business を使ったホテルコンシェルジュサービスの開発企業である Volara が本日(4月18日)、ホテルゲスト向けの通話機能を拡張したと発表した。
Volara の共同設立者で CEO の Dave Berger 氏は VentureBeat への e メールで次のように説明した。
Alexa for Business を使ったビデオ会議の通話はすでに可能でしたが、従来型電話の通話にはこれまで対応していませんでした。
同社の広報は VentureBeat に対し、これによってホテルのゲストはコンシェルジュにつなぐよう Alexa に指示を出したり、アメリカ国内の携帯電話と固定電話の両方に電話することが可能になると述べた。アリゾナ州の Fairmont Scottsdale Princess Hotel では現在、Alexa for Business を使用した電話の実証実験が行われている。
Salesforce、Vonage、Zoom などと並んで、Amazon の CTO の Werner Vogels 氏が昨年秋の「AWS Re:Invent」において発表した「Alexa for Business 対応の入門ソフトウェア/サービスプロバイダ(約)20選」にノミネートされた Volara は、その中で唯一、ホスピタリティ部門のサービスに特化したものだ。Alexa for Business と併用することで、Volara は、従来はほぼ電話を介して行われていたホテルゲストからの質問や要望に自動で対応できるバーチャルコンシェルジュおよびホテルアシスタントとして機能する。
大規模ホテルチェーンにおける Alexa 対応デバイスの導入としては、2016年の Wynn が初の事例となった。その翌年には複数の世界最大級ホテルチェーンが導入を検討している。Alexa for Business 対応のスマートスピーカー Echo により、既存の客室電話端末の必要性が大幅に減る見通しだ。
今後 Volara は、世界中のホテルのベッドサイドテーブルにある旧来型の有線電話端末を置き換えていくでしょう。
Berger 氏はそう意気込んでいる。
ただし、場合によっては従来型の電話端末の方がスマートスピーカーよりもプライバシーを守りやすいこと、また、Alexa をはじめとする AI アシスタントが現時点では911などの緊急通話に使えないことなどから、当面の間はホテル客室の電話端末は消滅しないと思われる。
Alexa 対応デバイスを使った通話は、2017年11月の Alexa for Business のデビューとともに初めて実現した。
もともとは会議室や職場のデスクを意識して設計された Alexa for Business。今後ホテルがスマートスピーカーの導入を本格化するにあたって、ホテルマネジメントに必要な管理機能を提供できることから、この業界にも適したシステムだと言っていい。
Berger 氏はこう述べた。
客室ごとにデバイスを割り振る機能、ゲストが過剰な大音量で音楽を再生した時に自動でボリュームを落とす機能、チェックアウト時にデバイスをクリアして消去する機能など、Alexa for Business はホテル管理側が必要とする機能を網羅しています。この種のホテル事業者向けマネジメント機能は、Alexa for Business のプラットフォームに特有のものです。
また、ユーザプライバシーの観点からも有用である。
Berger 氏は以下のように説明する。
ただ単純に Alexa アプリの対応デバイスをホテル客室に設置するだけでは、Alexa アプリはすべてのゲストの音声を録音してしまうことになり、非常に深刻なプライバシー侵害が発生します。その点 Alexa for Business は、そのような録音データを残しません。
Volara 以前にも、Amazon の Alexa を使ったホテルコンシェルジュサービスはすでに存在した。しかしながら Volara は、初の本格プロフェッショナル仕様と言えるかもしれない。発売後およそ18ヶ月の時点で、Fairmont Hotels や Marriott などのチェーンを含め、アメリカ国内35のホテルがすでに Volara を利用している。
気象情報、ゲームプレイ、客室でのスマートデバイス制御など、誰もが思い浮かべるホテルでのスマートスピーカーの応用例以外にも、Volara は、ホテル業界で広く採用されている管理システムとも接続できる。
Amadeus HotSOS との統合で、例えばゲストが追加のタオルやルームサービスをリクエストするごとに、インシデント管理システムのチケットを自動で発行できる。また SMS システムと接続すれば、Volara はゲストのカスタムメッセージを人間のコンシェルジュに届けてくれる。そして ReactMobile との統合により、ハウスキーパーたちは、脅威や危険に直面した際、セキュリティ用の緊急コールを音声で呼び出すことも可能となる。
Volara は、ゲスト入室の際にゲストの名前入りでウェルカムを伝えるカスタムグリーティングの作成にも使用できる。また、結婚式やカンファレンスでホテルを利用するゲストには、新郎新婦やホテルの GM が VIP 対応の挨拶スピーチを録音することも可能だ。
昨年のローンチ以来、すでに多くのホテルで使用されてきた Volara のサービスだが、その総使用回数は宿泊数ベースで50万泊に達する。
Berger 氏はこう話す。
平均すると、ゲストが時間とお金を費やす方法に影響する機会が、1,000泊あたり700回あります。そのすべてが、関連情報の共有や、ゲストにセールスを行うための絶好のチャンスです。例えばゲストがタオルをオーダーした場合に、「タオルをプールでご使用になるのでしたら、ご一緒にプールバーでマルガリータを1杯いかがでしょうか?」と勧めることもできるわけです。
さらにまた、Alexa を客室に導入することでホテル側はチェックイン・チェックアウト時にゲストの満足度を調査することができる。これはつまり、ゲストが帰宅後にホテルのネガティブなレビューを書いてしまう前の段階で、そのゲストの懸念や誤解にホテルスタッフが直接対処することが可能になるということだ。
Berger 氏によると、現時点では Alexa for Business が Volara のホテルコンシェルジュサービスにとって最適な現実的オプションだが、基本的に同社は特定のプラットフォームに縛られているわけではない。それと平行で、Alibaba や Google のスマートスピーカーへの展開も実験中だという。
【via VentureBeat】 @VentureBeat
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