AIやビッグデータと共に登場しているブロックチェーンという分散的な力は、我々の金融システムや産業、そして都市といったものの根幹にまで革命を起こしている。世界中のプレイヤーが分散型台帳技術(DLT)とブロックチェーンの潜在力を利用しようと殺到しているが、台湾ではブロックチェーンの熱狂はまだ静かに燻っている。
この週末(3月21日から4月1日)に、台北市は初のブロックチェーンイベントをブロックチェーンのアクセラレータである「Blockcamp.io」と現地ブロックチェーンメディア「BlockTempo(動区動趨)」と共同で開催した。このイベントには起業家や産業界のリーダー、そして高校生からテック界のベテランまで揃った熱心なブロックチェーン支持者のグループが参加し、台湾における同技術の現状や促進の方法についての考えを共有した。スマートシティやフィンテックをテーマとしたこのイベントではパネルディスカッションやワークショップ、展示、ハッカソンが行われた。
台湾の技術者たちはこのようなイベントを長い間待ち望んでいた。「ハイテクの島」と自称していながらも、台湾のブロックチェーン産業はまだ発生段階の初期であり、ローカルコミュニティの対話や関与を促進させるイベントはあまり行われてこなかった。台湾政府は新たに出現した技術に対しては様子見のアプローチをとるという実績がある。そのためこの2日間のイベントにおいて目立った会話の内容は、議員への啓蒙や規制の枠組みの確立およびその他の予備的な話題であった。
もう機会を逃さない
ブロックチェーンは世界中でディスラプションを起こし機会を作っており、中国、シンガポール、香港、そして日本のようなアジアの多くのプレイヤーがこの技術の可能性を探ろうと躍起になっている。
台湾にも機会の窓は開いている…だがそれは小さい。
金融面では、現在構築している決済システムや国内システムといったこれらの新たなシステムに台湾は影響を与えるチャンスがあります。(中略)他の国々のように台湾がまだステップアップしていないのは残念です。
分散型台帳技術(DLT)の企業 R3 のアジア責任者である Carl Wegner 氏はキーノートスピーチ後のインタビューで Technode(動点科技)に語った。R3 は110以上の銀行、金融機関、規制当局、業界団体、およびテック企業と取引があり、金融サービス向けに独自に設計された DLT を開発している。
Wegner 氏は DLT ベースの国境を跨ぐシステムが開発中であり、「現在参加中」のプレイヤーは自身のマーケットの利益になる規格へ影響力を持つようになると説明した。しかしながら、同氏は DLT 開発に有利な台湾の金融分野の変わった特徴を挙げた。商業銀行やセキュリティ企業、保険会社といった異業種を傘下に持つ大規模なコングロマリット銀行の存在である。多くの国ではそれらのビジネスは別の会社に分けられている。
もしそういったコングロマリットが分散型台帳技術を使うようになれば、将来的には情報の管理がずっと効率的になる巨大な潜在力があります。

Image credit: TechNode(動点科技)
より深い理解と、より良い規制の枠組み
このイベントから得られる鍵となるポイントの一つは、台湾は DLT やブロックチェーンを規制する方法を見つける必要があるという点である。
ブロックチェーンの規定についてのパネルディスカッションにおいて、議員でありブロックチェーン支持者でもある Jason Hsu(許毓仁)氏は、政府がブロックチェーンについてより深く理解しベストプラクティスを実践するためには、コミュニティが鍵となる役割を果たすと述べた。同氏は台湾立法院の多くの議員はまだ DLT やブロックチェーンのことをよく知らず、そのためあまり気にかけていないと説明した。政府は仮想通貨を奨励することも妨げることもせず曖昧な態度を続けていると Hsu 氏は付け加えた。
Wegner 氏はまた、規制当局の理解不足が主な障害であると述べた。
規制当局は学ぶことやプロジェクトの実施を始めなければなりません。
何かについて学んだからといって決断を下さなければならないというわけではありません。しかし学ばねばどう決断したらいいのかも分かりません。
ブロックチェーン企業や産業が成長できるよう法的権限を与えられた環境を確立するために、政府が他の国々のベストプラクティスや枠組みを学ぶようパネルディスカッションでは勧告がなされた。5億米ドルの仮想通貨盗難の後で日本が行ったこと、つまり自主規制機関(SRO)の設立を見習うようにとの勧告はパネリストや聴衆の人気を博した。
台湾には十分に大きな市場がなく、企業はより大きなチャンスを求めて島を去っている。inno4G(創新善投)のCEOである Huang Kunjia 氏は、台湾は傍観的なアプローチをとってチャンスの窓を逃すわけにはいかないと述べた。Huang 氏によれば、シンガポールやスイスのような国々はDLTやブロックチェーンに関して先 進的な規定を持ち、人材や資本を引きつけているという。中国は現在 ICO を禁止しており、アメリカ証券取引委員会は仮想通貨の規制を強めるという資本規制が浮上する中で、台湾には人材と資本を引きつける非常に大きなチャンスがある。仮想通貨の規制の枠組みが確立していても、日本は外国人投資家に対して閉鎖的であると見なされていると Huang 氏は付け加えた。

Image Credit: Technode(動点科技)
台湾のブロックチェーンスタートアップコミュニティは活気に満ちており、海外の起業家も興味を持って市場を探っている。チャンスの時は近づきつつあり、企業は政府が規制の枠組みを確立するよう求めている。

Image Credit: BlockCity
ビジネスにおけるブロックチェーンについてのディスカッションで、Bitmark の CEO である Sean Moss-Pultz 氏は次のように述べた。
トークンを規制する可能性がある主体には様々なものがあります…税務当局かもしれません、中央銀行かもしれません、FSC(金融監督委員会)かもしれません…必要なことは、議員が法案を通す際に、その法の下で何ができるのかを明らかにしておくことです。
台湾には大きなチャンスと素晴らしい人々がいます。もし規制の枠組みが導入されれば、それらが花開くことができるでしょう。
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