Fedexキラーが突如閉鎖ーー米ラストマイル物流市場に急展開、6000万ドルを集めた「Shyp」や「UberRush」が撤退した3つの理由(前編)

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日本時間3月28日の深夜2時、大手配達代行サービス「Shyp」からサービス閉鎖の告知メールが突然送付されました。以前ユーザーであった筆者の元にも届きました。

Shyp 」は、米大手Eコマースプラットフォーム「 eBay 」の販売利用者に向けて、梱包から配達までの代行を行う物流サービスを提供(個人で荷物の配達代行をお願いしたいユーザーも利用可)。2013年にサンフランシスコで創業した同社は、シリーズBの段階まで成長した上で累計約6,200万ドルの資金調達を集めた大型スタートアップです。

アプリを使って配送したい商品の基本情報を入力すると、20分以内にクラウドネットワークで集めた配送代行者が受け取りに来ます。商品はShypの自社工場へ送られ、最適なサイズのダンボールで梱包され、最安値の運輸手段で配達されます。配達する際に必要な梱包ボックスの手配から、郵便局や運輸業者のピックアップ拠点まで持ち運ぶ手間までを解決するサービスとして登場しました。

2015年には5,000万ドルの資金調達を行っています。当時は、 前年比で物流量が5倍、月間顧客成長率は20% と好調な成績を収めていました。2016年には 「eBay」と業務提携 を行い、通常5ドルの代行料がかかるところ、同社プラットフォーム販売者は無料で配達を行うことができるようになりました。

Shypが勢いに乗っていた2015年にローンチされたサービスが、配車サービスUberの展開する「 UberRush 」です。小規模店舗が顧客に商品を短時間で届けられるローカル配達サービスとして展開を始め、5分以内に配達代行者が受け取りに来る競合サービスとして登場しました。配達料金は5〜7ドル程度で、料金設定の面から十分にShypと戦えるサービスでした。

UberRushは料理から洋服まで、どんな商品でも運ぶ一方、ShypはEコマース販売者の配達代行をメインに扱うサービスとして市場ポジションを取っている点が大きな違いです。

両サービスは、サービス領域は違えども短距離配達「ラストマイル」の課題を解決していました。しかしUberRushも3月下旬に入って急にサービス閉鎖の告知 を行っています。かつては日本のヤマト運輸に当たる、米大手運輸業者「Fedexキラー」の異名を持った物流サービスの相次ぐ閉鎖。本記事では、なぜ大手配達代行サービスが失敗したのか、今後どのような市場再編が起こるのかを紐解いていきます。

提携先のミス。ITリテラシーの低さ

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Image by :  davidhc

まずはShypの失敗事例から取り上げていきましょう。同社が失敗した原因の1つと考えられるのはeBayとの提携に頼ったことが挙げられます。

eBayは、 2017年第4四半期に1.7億アクティブユーザーを獲得していますが、2015年第1四半期の1.5億ユーザーからは微増傾向と、成長は鈍っています総物流額は2017年第4四半期に244億ドルでしたが、同じく2015年第1四半期の200億ドル と比較して成長が鈍化います。

プラットフォームとして頭打ち感の否めないeBayの最も大きな欠点は、ユーザー年齢層です。 2015年のデータ によると、35〜64歳までのユーザー層が61%を占めており、65歳以上のユーザーを含めると約70%が35歳以上のユーザー層になります。

ここで考えられる疑問点は、比較的高齢なユーザーがShypの情報を見つけてサービスを利用できるのかということです。筆者がeBayを使って不用品を売りに出した際、Shypへのサービス導線はありませんでした。つまり、ユーザー自らがShypというサービスを探し出して利用するしか顧客を囲い込む手段がないのです。

高齢ユーザーが多数いることからeBayのユーザーコミュニティーの特徴として、スマートフォンに慣れておらず、スタートアップの情報に疎いユーザー像が想像されます。つまり利用ユーザーに大きなギャップがあったこと成長戦略の限界に繋がったのではないでしょうか。データ開示はされていませんが、おそらくeBay利用者でShypを積極活用していた販売者は少なかったでしょう。

このようにスタートアップや投資家にとって、大手企業との提携はビジネスを急成長させる好機に見えますが、ある程度の社内リソースを割く必要も出てくるため、慎重に判断することが求められます。特に投資家はリターンを求めるために提携を急かすこともあるかもしれませんが、提携先の成長速度が着実なものであるかを含め、あらゆる側面から熟考する必要があるでしょう。

配達代行にお金を掛けたくない顧客心理

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Image by  shopblocks

eBayからの顧客獲得導線に期待が持てないと想定した場合、次にターゲット顧客となるのは個人で配達代行を頼む人たちです。Shypの場合、個人で配達代行を頼む顧客層は2種類に分かれます。

  1. eBay以外のフリマサービスの販売者
  2. 友人や家族に郵送で荷物を送る一般ユーザー

2)に該当する個人間配達は、Shypのターゲットでない点から考えると、一般利用者はあまりいないと思われます。すると前者に当たる、米国版メルカリを利用するようなフリマサービスの販売者側が想定顧客に成り得るでしょう。しかし、フリマ販売者のような顧客の心理的ハードルは非常に高いと考えます。

筆者は米国でメルカリを何度か試した経験があり、確かに梱包から郵便局へ届けるプロセスは大きなペインポイントだと感じました。しかし、日本のメルカリユーザーが100円単位で必死に値切る習慣は米国でも同じで、わざわざ売上から10ドル前後の代行コストを支払ってまでShypのサービスを利用することに高い心理的障壁を感じます。必要以上の損失感を感じるわけです。

ここで配達代行サービスを利用する顧客心理を比較するため、筆者が利用していた日用・食料品のお買い物代行サービスを展開する「 Instacart 」の事例を挙げましょう。同サービスは、10ドル前後の料金で、近所のスーパーから食料品を指定の時間に届けてくれる配達代行サービス。2014年に創業され、累計資金調達額は8.7億ドルに及ぶ超大型スタートアップです。

私の場合、アメリカでは車を持っていなかったため近くのスーパーへ行くこと自体が苦痛でした(私の家は丘の上だったので、なおさら大荷物を抱えての買い物は苦労しました)。500mlの飲料水ペットボトル36本セットを毎月まとめ買いしていたので、とても一人では持ちきれません。そういった状況で荷物を届けてくれるInstacartに8〜9ドルの対価を支払うことに損失感は感じませんでした。毎月必ず1度はやってくる苦痛の伴う買い物を代行しているサービスに対して、高い提供価値を感じていました。

このように、両サービスともほぼ同じ料金設定で短距離配達サービスに特化していながらも、扱う分野が違うだけで大きく顧客のサービス利用心理が変わってきます。顧客視点で考えると明らかにサービス価値及び費用対効果が高いのはInstacartであり、Shypではないと強く感じます。

Shypのビジネスモデルにおける欠点は、サービス利用を躊躇させる顧客心理にあると説明してきました。つまり顧客の抱える強い課題感を突けていなかったともいえます。(後半へ続く)