
Photo credit: Funding Societies
Kelvin Teo 氏と Reynold Wijaya 氏が Funding Societies をローンチするために、苦労して入った自慢のハーバードビジネススクールをやめたという話が出回っている。Funding Societies は両氏が2015年にシンガポールで共同設立したピアツーピア(P2P)レンディングのスタートアップである。
Funding Societies の CEO も務める Teo 氏は Tech in Asia に次のように語り、訂正と同時に一部認めた。
はっきりさせておきますが、ちゃんと卒業しました!ギリギリでしたけど。
もしドロップアウトしてたら家族に殺されてます。昼間はハーバードで学び、12時間の時差に合わせるために夜は Funding Societies で働くというのは格好良く聞こえるかもしれませんが、実際はものすごく大変でした。ですが2015年に始めなければ市場を逃すということは分かっていました。
苦労はそれだけではない。
2016年に私たちが卒業に際して Sequoia India からタームシートを受け取ったことを知っている人は多いですが、私たちが(シンガポールに)戻っていた1週間の間の突然の規制の変更のおかげで、シリーズ A を閉じる前にビジネスの90%が駄目になったということはあまり知られていません。
残された時間は1ヶ月でした。弊社は残っていたキャッシュを高価なリーガルオピニオンに賭け、機関ローンを目指し、成長を続けるためにマーケットプレイスビジネスをバランスシートレンディングビジネスへと作り変えました。ありがたいことに Sequoia に後押ししてもらいました。(Teo 氏)
Teo 氏と Wijaya 氏の決断は睡眠時間を削り、卒業を危機に晒し、生まれたばかりだが上手くいっていたビジネスを捨ててでも推し進めるものだった。本日(4月18日) Funding Societies は Softbank Ventures Korea がリードするシリーズ B ラウンドで2,500万米ドルを調達したと発表し、これは東南アジアで P2P レンダーが終えた資金調達ラウンドとしては過去最大のものであるとしている。
また募集以上の参加者が集まったラウンドには、Sequoia Capital、Golden Gate Ventures、そして Alpha JWC Ventures といった既存の投資家に加え、Qualgro とメッセージアプリ Line の投資部門 Line Ventures も初めて参加した。
資金は主として商品開発、そして同社が Modalku というブランドでビジネスを行っているシンガポール、マレーシア、インドネシアの3つの地域で規制へのコンプライアンスを確実にすることに使用されると Teo 氏は述べた。
成長するために、自分たちの市場でノウハウを積み重ね、コア能力を高め、既にビジネスを行っている国々でチームを拡大させます。一方では新たなマーケットを探っていますが、既存の場所でもまだまだやることはたくさんあります。よって、海外展開か他分野への経営の多角化かという決断は決して軽く扱えるものではありません。(Teo 氏)
中小企業ファイナンシング

Photo credit: Funding Societies
Funding Societies は P2P もしくは「クラウドレンディング」というコンセプトを中小企業の財務に適用し、銀行や従来の提供者からのローンを確保するのに苦心しているビジネスに対する融資の手助けを行っている。この P2P サブセットは「ピアツーカンパニー」(P2C)レンディングと呼ばれることもある。
同社はシンガポール金融管理局の資本市場サービス免許を保持し、マレーシアの証券委員会やインドネシア金融庁に登録されたマーケットオペレーターである。
Teo 氏はこう述べた。
コンプライアンスは最優先事項です。信頼に基づく規制産業にいるのですから。
適格投資家と個人投資家の両方を含めて、レンダーは Funding Societies を通じて中小企業に融資することができる。1つのローンにつき最低50米ドルから投資できるため、広範囲の潜在的なレンダーにアクセスすることができる。6万以上の投資家がこのプラットフォームを通じて資本を融資している。
同社の機関投資家のユーザベースは過去1年間で200%成長し、投資額は780%の成長を遂げた。
Teo 氏はこの「不相応な」高成長を、適格投資家やプロのレンダーのプラットフォームで自信をつけた結果であり、そしてこのタイプの P2P レンディングは投資ポートフォリオの中のどこかでリスクを相殺できるということが分かってきた結果であると説明した。
同氏は次のように述べた。
機関投資家にとっては中小企業向けローンはユニークなアセットクラスです。その他のアセットクラスとあまり関連せず、ポートフォリオを多角化させることができるからです。
それでも同社のレンダーベースは個人投資家が大部分を占めているが、Teo 氏は彼らが適格投資家に比べると「当然のことですが、より保守的」であると指摘した。所有する資本がより少なく、概してより低リスクな姿勢であるためだ。
10%のリターン
機関投資家と個人投資家は両者とも Funding Societies を通じて投資したローンから、債務不履行やサービス料の支払いの後で、約10%のリターンを得ていると Teo 氏は述べた。
今日まで、このプラットフォームは借り手ベースへの3,000件近いローンに1億1,000万米ドルほどを支出してきた。未払いの貸付記入帳、言い換えれば、レンダーベースが貸し付けていて利子が生じている額は、3,430万米ドルに達する。
Funding Societies を通じてなされるローンの圧倒的大部分は期限までに返済され、このプラットフォーム上の債務不履行率は比較的低い1.4%であるが、同社の貸付記入帳や借り手ベースが急激に成長するにつれ、いずれは3%から5%の間のどこかで安定することになると Teo 氏は予想している。
債務不履行を低く抑えるために、Funding Societies は「各ケースを査定するため、技術やデータおよび金融の専門知識のコンビネーション」を使用していると Teo 氏は説明した。
各ローンのリスク特性を効果的に管理するために、国別、製品別、そして、より産業別にリスクマネジメントのアプローチを調整します。
東南アジアにおける P2P レンディングのチャンス
2016年8月のシリーズ A ラウンドにおける750万米ドルの調達に加え、今回の2,500万米ドルの資本の注入によって、Funding Societies は東南アジアでもっとも資金力のある P2P レンディングのプレイヤーの1つとなったが、決して唯一の存在というわけではない。
シンガポールフィンテック協会はオンラインレンディングとオンラインファンディングのカテゴリに渡って全部で70のスタートアップを挙げている。
同業種でありインボイスファイナンシングと担保付ローンを提供しているシンガポールの企業 CapitalMatch は、この1月のシリーズ B ラウンドで Facebook の共同設立者 Eduardo Saverin 氏の B Capital Dymon Asia Ventures から額は不明だが資金を得た。他のシンガポールを拠点とする P2C レンダーには MoolahSense および CoAssets や Validus Capital といった、それぞれ不動産取引を専門にしたり適格投資家を扱ったりする企業が含まれる。Validus は昨年7月の不特定の投資ラウンドで Vertex Ventures とエンジェル投資家から360万米ドルを確保した。
対照的に、P2P レンディングモデルは中国で旋風を巻き起こしてきた。Lufax(陸金所) や Dianrong(点融)、そしてまた2015年12月にアメリカで IPO を行った Yirendai(宜人貸)といったオンラインレンディングのスタートアップは、中国ではよく知られている名前だ。
Teo 氏はこのように述べた。
かつてそうだったように、そして今でも、中国のスペースは大いに争われていますし、インドでもある程度はそうですが、競争は東南アジアで加速しています。
競争の激化は好ましくない競争につながり、それによってプラットフォームは成長のために無差別にローンを行い債務不履行の率が上がるかもしれません。個人投資家を犠牲にする可能性もあります。しかしながら、フィンテック分野全体の成長を活気付けるかもしれませんし、願わくは、いくつかのローカルなフィンテック大手企業が生まれるかもしれません。どちらに傾くかのバランスは、適切な規制にかかっているのではないでしょうか。
これらのプラットフォームが掴もうとしているチャンスは明確である。Ernst & Young、UOB、そして Dun & Bradstreet による最近の調査では、調査対象となった東南アジアの中小企業の65.2%が事業の資金調達に簡単にはアクセスできず、回答者の67.8%が P2P レンディングのような非伝統的な資金調達方法を受け入れるということが示された。
【via Tech in Asia】 @techinasia
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