仏・トゥールーズ発、ブロックチェーンを使ったフリーランサーのための自立分散型マーケットプレイス「Talao」

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Talao CEO Nicolas Muller 氏
Image Credit: Talao

世界中のスタートアップがイニシャルコインオファリング(ICO)の機会に乗じようと殺到する中で、規制当局はこの新たな資金の調達方法と格闘している。

極端なところでは、中国は ICO を禁止し、一方でアメリカは積極的に規制を強化している。しかし、他の多くの国々は起業家やスタートアップ、そしてそれに続くと思われる潜在的な経済的僥倖を引きつけようと、それぞれが ICO の世界的な中心地であるとの旗を掲げて宣言しようとしている。

先月、フランス政府は仮想通貨を使うスタートアップや ICO のための主要なハブとなれるよう、規制の枠組みを発展させるつもりであると発表した。フランスの経済・財務大臣 Bruno Le Maire 氏は、同国のスタートアップが世界的な勝者となるために必要な資金調達へアクセスできる潜在的に革命的な方法を、ICO が提供していると記している

同氏は以下のように記した。

この革命は私たちが日々行っている銀行業務や保険分野、金融市場、さらには特許や認定行為といったものまでをひっくり返せるかもしれません。それに続いて、銀行や投資ファンドといった旧来のプレイヤーと預金者の両方に与える影響に一石を投じます…単なる観客でいるのはやめて、代わりにこの革命に参加しようではありませんか。

偶然にも、政府が規制強化を発表したとき、南西の町トゥールーズを拠点とする Talao というスタートアップは、同国で過去最大となる6,000万米ドルの ICO の準備を進めていた。

幅広いプロジェクトが人材を見つけることができるブロックチェーンプラットフォームを提供する Talao は ICO の先行販売を始めており、6月の公開に向けてのプロセスを開始する予定である。この ICO は2つの目的のために行われる。プラットフォームの新たなバージョンを構築する資金を調達するため、そしてまた参加者がシステムを通じてモノやサービスに交換できるようトークンを配布するためである。

Talao の CEO である Nicolas Muller 氏と話すことで、同社のようなブロックチェーンスタートアップが大望を果たすなら、それは資本主義のもっとも基本的な概念を変えることになるだろうということが明らかになった。このシステムを打ち倒すことで、そういった企業の報酬がより均一に分配されるという面でとても魅力的な利益が提供されるが、それだけではなく、そういった転換は世界中の政府が依存している税の構造といったものを突き崩すことになるかもしれない。

Muller 氏はこう述べた。

弊社はこれがインターネット以来の最大の革命になると考えています。

そう、インターネット時代には革命的な誇大広告がぎっしり詰まっていて、そのため上記のような言葉も割り引いて受け取る価値はある。同様に、最近のブロックチェーンの世界に革命的な熱狂が溢れているのには理由がある。Talao をよく見てみると、その理由が分かる。

Talao
Image credit: Talao

同社は2015年にフリーランサープラットフォームとして、Muller 氏、Thierry Thevenet 氏、そして Denis Lafont-Trevisan 氏が共同設立した。元々は eMindHub と呼ばれていた同社は航空宇宙産業にフォーカスしており、3万人の専門家や、航空産業の大手 Airbus および自動運転シャトル開発の大手 Navya を含む法人パートナーと契約を結んでいた。

しかしプラットフォームのオリジナルのバージョンはもっと旧来的な集中型のアプローチをとっていた。同社は現在システムをオーバーホールし分散型のブロックチェーンプラットフォームにしようとしており、これを「自律分散型組織(DAO、Decentralized Autonomous Organization」と称している。直近の目標は、いかなる料金も課されずにユーザが個人的な保管庫に自身のデータを保存することができるサービスを提供することにより、フリーランスプラットフォーム市場にディスラプションを起こすことである。

Muller 氏は以下のように述べた。

弊社はビジネスモデルを変えたいと考えています。人材に対して自分自身のデータを所有するマーケットプレイスを提供するのです。

データドリブンなプラットフォームビジネスの世界では、特に現在の Facebook への反動の中では、個人が自身のデータを所有しマネタイズすることを可能にするということが、根本的な転換の到来を告げるかもしれない魅力的な選択肢に見える。

しかし実際にはどう機能するのだろうか? Talao は2,500万米ドルの調達を目標とした ICO の最初の段階を始める予定だ。ある種のシリーズ A ラウンドと言ってもいい。同社はその資金でプラットフォームの再構築を行い、ブロックチェーンを使う DAO を作り上げる。

新たなブロックチェーンマーケットプレイスは ICO で頒布されたトークンを使い稼動する。これにより、ユーザは自分の評価やデータ保管庫を、証明書を用いて管理される価値と結びつけることができる。すべての関係者はトークンを使いサービスの要請や提供を行う。

これこそが、将来に実現するかもしれない興味深いパラダイムシフトが提供される場である。Talao 自身を含めたすべての関係者はトークンの価値が上がるとともに得をする。つまり目標は必ずしも収入や利益を増加させることとは限らず、むしろプラットフォーム全体の価値を上げ、より多くのユーザを引きつけ、使用頻度を増加させることなのである。

同社はプロジェクトを売り込むことができるサービスなどを提供することで収入を得る見込み。その収入は給与の支払いに使われるが、設立者や役員は、最近の設立者らが会社を公開することでビリオネアになるようなやり方で不釣り合いな利益を得ることはない。そしてプラットフォーム開発に関する決定はトークン所有者の投票によってなされる。

Muller 氏は次のように述べた。

トークンの価値を上げるという同じ目標に向かって進むために、弊社はステークホルダーを頼りにすることができます。

しかしこれは結局、政府への疑問を呼び戻すことになる。もしシステムが収入や利益を基にしたものでないのなら、国はどうやって規制したり税を課したりするのだろうか? もしユーザへの報酬が給与ではなく価値が上昇するトークンでなされたら、税務上の個人所得の概念はどうなるのだろうか? 既存の労働法に従っていると証明するためにはどう監視すればいいのだろうか? そして、ユーザや消費者はどうすれば詐欺の被害にあっていないという証明が得られるのだろうか?

アメリカではインターネットでなされた購入に対して政府が税をどのように課すのか(あるいは課さないのか)という概念をめぐって論争が続いている。金銭の直接的な使用が取り払われたシステムを想像してみよう。もしそんなブロックチェーンプラットフォームが標準となれば(もちろんそれは行きすぎた仮定だが)、国や地方の行政府の歳入はさらなる大打撃を受けることになるだろう。

そのため、この現象に目を凝らし、それを理解し、順応できるよう準備をしておくことは政府にとって急を要するのではないだろうか。ICO を禁止することは短期的には魅力的かもしれないが、もし ICO が爆発的な成長を続け、資金調達や人々の仕事を補うものとして支配的な方法となった場合は、巨大なリスクになり得る。

Le Maire 氏はこう記している。

イノベーションを引きつけるために法律を明確化すること、私たちのエコシステムを妨げることなくリスクを確認すること、これが私たちのアプローチです。

Muller 氏は個人的には政府の関与を歓迎している。ICO をローンチするプロセスはチームが望んでいたよりも遅れており、ルールの欠如のために難しいものになったと同氏は述べた。規制を明確にし確実にすることで、次回のプロセスはより早く、関係者にとって快適なものになるだろう。

ブロックチェーンや彼の企業が持つ可能性に Muller 氏は興奮しているが、大衆を啓蒙し企業やフリーランサーを引きつけるのは容易ではない。

Muller 氏は次のように述べた。

弊社にとってこれはチャレンジです。弊社にとっての新しいモデルというだけではありません。クライアントや人材にとっても新しいモデルなのです。

【via VentureBeat】 @VentureBeat

【原文】

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