本稿は、Disrupting Japan に投稿された内容を、Disrupting Japan と著者である Tim Romero 氏の許可を得て転載するものです。
Tim Romero 氏は、東京を拠点とする起業家・ポッドキャスター・執筆者です。これまでに4つの企業を設立し、20年以上前に来日以降、他の企業の日本市場参入をリードしました。
彼はポッドキャスト「Disrupting Japan」を主宰し、日本のスタートアップ・コミュニティに投資家・起業家・メンターとして深く関与しています。
これまでに、プロダクトやサービスをシェアリングエコノミープラットフォームで購入したことのある日本の消費者は1%未満だ。
これは、きわめて不可解なことだ。社会や経済のファクターはすべて、日本の都市がシェアリングエコノミービジネスに理想的であることを示しているのに、多くの理由からメインストリームとなっているシェアリングエコノミーのスタートアップは、ほとんど例が無い。
今日はエニタイムズの創業者で、シェアリングエコノミー協会の理事も務める角田千佳氏とともに、この謎を解き明かしたい。
今回も興味深い話なので、お楽しみいただけると思う。
Tim:
エニタイムズとは、どのような事業ですか?
角田氏:
エニタイムズは、助けを必要とする人と、家事、ペットの世話、家具の組み立て、外国語レッスンなどで、近所で仕事したい人とをつなぐスキルシェアリングプラットフォームです。
Tim:
サービスの分野は多岐にわたりますね。何が最も人気がありますか?
角田氏:
最も人気のあるカテゴリはハウスクリーニングで、それに次いで料理です。料金は1時間2,000円ほどで、そのうち15%を手数料としていただきます。しかし、提供されるサービスは実に多岐にわたります。お客様には、消費者であるとともに、サービスの提供者にもなってもらおうとしているからです。
Tim:
たいていのマーケットプレイスでは、売り手よりも買い手の方が多いですね。全員を売り手にするのは、難しかったのではないですか?
角田氏:
それは難しいことかもしれませんが、我々が追いかけている最重要指標の一つです。人々はしばしば、サービスを購入するためにサインアップするでしょう。例えば、ペットの面倒を誰かに見てもらい時など。それもいいのですが、時をおいて、我々はお客様と話をし、プラットフォーム上でサービスを提供するようにお願いします。すると、多くの人はサービスを提供してくれ、それがコミュニティの形成につながっています。
Tim:
角田さんは、プログラマでもデザイナーでもありませんが、どうやってエニタイムズを立ち上げたのですか?
角田氏:
最初の年は、完全にクラウドファンディングに頼りました。会社を作るのは大変なのでお勧めはしません。私にとってもデベロッパにとっても大変でしたが、当時は他に方法がありませんでした。一年後、プログラマとデザイナーを雇うことができ、物事がかなりスムーズに動き始めました。
Tim:
マーケットプレイスの構築には、基本的に2つの戦略がありますね。ペットの世話のような対象を絞ったやり方と、エニタイムズのような対象を広げたやり方です。大半のマーケットプレイスは、絞り込んだやり方をとろうとしていますが、どうしてそうではない判断をされたのですか?
角田氏:
コミュニティプラットフォームであることに特化しているからです。我々は単に、ハウスクリーイングサービスやペットの世話のためのプラットフォームになりたいわけではありません。我々の目標はコミュニティにつながることなので、多くの種類のサービスを提供する必要があるのです。
Tim:
たいていのクラウドソーシングプラットフォームは、一部の地域に限られたものになりがちです。国際的に成功しているところも少ない。それは、言語の問題から来るのでしょうか?
角田氏:
言語も一因ですが、日本の労働市場は独特で、日本のあらゆる会社がそれを説明する必要があります。
Tim:
どのあたりが独特なのでしょう?
角田氏:
日本人は今でも、一生を通じて一つの会社で働く理想を持っています。この十年間でフリーランスは人気を得ましたが、それはまだ小さな市場であり、東京などの大都市に限られています。
Tim:
なぜでしょうか? クラウドソーシングプラットフォームで、フリーランスになって、どこでも働けることがアピールされていたと思うのですが。
角田氏:
それは理想ですね。給料の高い都市部の企業からお金を得て、生活費の安い田舎に住むこともできますが、実際には難しい。まず、プログラミングやデザインの仕事でさえ、フェイス・トゥ・フェイスの方が効率が良い。また、クラウドソーシングだけに頼っているフリーランサーはあまりいません。フリーランサーは、直接仕事を得られる機会の多い大都市にいたがるケースが多いです。特に、フリーランスのプログラマやデザイナーは若い人が多く、都市部に住むことを好む傾向にあります。そこには文化的なギャップがあるわけです。
Tim:
企業同士の間でのギャップですか?
角田氏:
人々の間でのギャップです。都市部に住む人は新しいことに手をつけるのが早く、クラウドソーシングプラットフォームに参加するのも早い。田舎の人や会社は保守的で、参加するのは遅くなりがち。クラウドソーシングが大都市で利用が多いのは当然のことで、今後時間をかけて、他の地域でも受け入れられるようになっていくのでしょう。
Tim:
日本でシェアリングエコノミーが立ち上がるのに時間がかかっているのはなぜでしょう? 文化的な理由からでしょうか?
角田氏:
いい質問ですね。アメリカでは30%の人がシェアリングエコノミーのサービスを使ったことがあると報告していますが、日本ではわずか1%です。そこには文化的な理由があるとは思いません。日本で浸透するには、まだ少し時間がかかるのです。
Tim:
政府による規制は、シェアリングエコノミーに遅れをもたらしていますか?
角田氏:
間接的には、そうかもしれません。民泊法などの多くの規制がある上、レンタル、観光、高齢者介護、チャイルドケアなどの関連サービスを提供する場合、事前に特別な免許が必要になります。個人がサービスを提供できるようになるためには、このような免許を取りやすくすべきです。政府は目下、多くの規制や法律を見直しているので、(改善までには)もう少し時間がかかるだけだと思います。
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多くの点で、日本の都市はシェアリングエコノミーのスタートアップにとって完璧だと言える。人口密度が高く、住まいは狭いので必要なモノを借りることができるなら買いたくはないし、高いレベルで相互の信頼もある。日本に存在する他人や他人の所有物に対する敬意は、世界のどこにも引けを取らない。
しかし、これまでのところ、シェアリングエコノミーは本格的には根付いていない。非常に多くのことが有利に働く中で、シェアリングエコノミーのサービスを使ったことがある人がわずか1%で、多くの人がそのコンセプトに不案内であることに驚かされた。
シェアリングエコノミーにサポーティブな環境と、新しいサービスを提供する多くのイノベーティブな起業家の尽力を考えれば、すべては単に時間の問題だとする角田氏の考えに賛成せざるを得ないだろう。
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