「リアル版Dropbox」ミレニアル世代のセルフストレージ事業を紐解くーーMakespaceとOmniのモデル(前編)

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Image by Scott Meyers

<ピックアップ : Clutter and the Emergence of Real Estate-As-A-Service Platforms>

自宅に収納しきれないモノを預ける貸し倉庫サービス。

米国ではセルフストレージと呼ばれており、大都市間を移動しながらキャリアを積んでいくミレニアル世代の生活スタイルと、収納場所を極力所有しないシェアリング概念の浸透が後押しして成長市場になっています。

日本市場でも多数のサービスが登場し、サマリーポケットモノオクがサービス例として挙げられます。2016年の国内市場規模は500億円を超えており、2020年には700億円に達成すると見込まれています

本記事では、米国の貸し倉庫サービス市場状況を考察しながら、不動産ビジネス成功の鍵を紐解きます。

セルフストレージ市場概要

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Image by Jeremy Segrott

米国セルフストレージ市場では、都市部に住む顧客へ向けた私物を手軽に引き出せる「少量引き出し型」の業態が一般的となっています。代表的なプレイヤーに「Makespace」や「Omni」が挙げられます。

Makespaceでは、ビンズと呼ばれる緑の専用箱が顧客の元へ送られてきて、私物を詰めます。箱は1つ1つ丁寧に管理され、引き出したい物がある場合は該当物の入った箱を取り寄せる仕組みです。箱ごとに荷物を預けてもらうことで、Makespace側は倉庫を効率的に活用できますし、顧客も荷物の種類に分けてビンズを上手く活用することで効率的なストレージが可能になります。

創業当初はリアル版Dropboxと称され、定額利用料を支払っていればいつでも私物を引き出せるコンセプトが人気になりました。ちょうどオンラインデータをアップロード及びダウンロードする感覚です。

一方OmniはMakespaceと違い専用箱を用意はしていません。1品ずつ配達員に私物を預ける非常にきめ細かいサービスを提供しています。倉庫に預けた私物は全て写真に収めてくれて、いつでもアプリを通じて確認できます。引き出す際は、1品ずつの配達を行っており、利用料金も1品当たり料金が加算されていきます。

競合との差別化ポイントとして、シェアリングの概念を取り込んでいる点が挙げられます。たとえば、サーフィンやキャンプに出掛けたい友人が自分のアウトドアグッズを使いたい場合、手軽に貸し出すことができます。

LTVが重要な要素に

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Image by John Mason

両社はいずれも少量の荷物を預け・引き出す頻度の高い、都市部に住む顧客をターゲティングにしています。なかでも仕事を求めて都市を転々とするミレニアル世代の囲い込みが狙いです。

ミレニアル世代にとってのサービス利用価値は大きく3つ挙げられます。

1つは高額な家賃を支払う必要のある都市部の狭い住居で、なるべく効率よく生活できる。2つ目は自宅には置くスペースのない生活用品を手軽にいつでも引き出せる点。最後は仮に別の都市部へ移住することになっても、利用サービスの自社倉庫が各都市にあれば、倉庫間の荷物の受け渡しをお願いするだけでわざわざ自宅まで持ち運んで引越し作業をおこなう必要がなくなる点です。

しかしここで運営企業に問題が2つ発生します。収益率の低さと高額な設備投資です。

まず収益率です。都市部にいる若者が頻繁に預け入れをおこなう生活用品のストレージを想定していることから、顧客1人当たりの収益額が低くなる傾向にあります。

セルフストレージ市場の大きな特徴は、一度サービスを利用してみると競合他社サービスへの乗り換えがあまり起こりません。実際、筆者はサマリーポケットを利用していますが、多少安値の他社サービスを見つけたとしても、わざわざ1週間前後かけて行った箱入れ作業をもう一度行いサービスを乗り換える気にはなりません。そのため、運営企業にとっては、LTV(顧客生涯価値)が高い収益モデルを構築することが可能となります。

ところが、出し入れの回数が多くなる都市部特化型のストレージサービスは、たとえ配送料を徴収していたとしても多大な物流コストが発生することを考慮しなければなりません。コストを回収できなくなる懸念から料金プランを上げてしまうと顧客は競合サービスへと離れてしまうリスクを負うため、簡単に低価格化を打ち出すこともできません。こうして収益率を担保できるギリギリの価格帯で勝負し続けなくてはならないのです。

都市部にフォーカスしてしまったことで、セルフストレージ市場が物LTVの高い収益モデルの構築という利点を活かせずにいるのです。

次に設備投資に関してです。24時間以内に倉庫からいつでも配達できるというコンセプトを謳ったサービスが多いのですが、配達注文数をカバーするにはそれなりの規模を持った物流網を事前に用意する必要があります。また、都市移住を頻繁におこなうミレニアル世代をターゲットにしていることから、複数の倉庫を持つための初期投資及び管理費用がかかります。

事実、筆者はこの2点のリスクを背負いきれずに撤退、もしくは戦略的売却を余儀なくされたサービスを目にしてきました。たとえばサマリーポケットのようなスタイルの「Boxbee」を取材したことがありますがすでにサービスを閉鎖しています。複数都市にまたがって倉庫を持っていない限り、米国では仕事を変える2〜3年ほどの期間で顧客が離れていってしまいます。一方で膨大な事業拡大コストがかかる問題が絡んでいるのです。

ではセルフストレージ市場で生き残るためには何が必要なのでしょうか?後編ではその2つの手法について考察いたします。

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