三菱 UFJ 銀行をコアメンバーとする、三菱UFJフィナンシャル・グループ(MUFG)は27日、都内で MUFG DIGITAL アクセラレータ 第3期プログラムのデモデイを開催した。
選考を経て6チームがプログラムに参加。彼らは2018年4月からの4ヶ月間、東京・日本橋兜町に新設されたコワーキングスペース「The Garage」などを中心に、担当メンターらの指導を受けながら、サービスの改善やブラッシュアップに努めてきた。
デモデイでは、彼らの4ヶ月間の成果が、MUFG グループ各社担当者、ベンチャーキャピタル、メディアなどに初めて披露され、イノベーションの度合い、利用者ベネフィット、事業性、MUFG とのシナジーの4つの評価項目に基づき審査され、上位評価が得られたチームには、事業奨励金などの副賞が与えられた。
デモデイでの審査員を務めたのは、
- 三菱 UFJ フィナンシャル・グループ(MUFG)Chief Digital Transformation Officer 亀澤宏規氏
- グロービス・キャピタル・パートナーズ マネージングパートナー 仮屋薗聡一氏
- 三菱UFJキャピタル 代表取締役社長 半田宗樹氏
- 三菱総合研究所 常務研究理事 村上清明氏
…以上の方々。また、今回参加した全スタートアップ6社に、PR TIMES 賞(副賞:2018年8月〜2019年7月まで、プレスリリース配信サービス「PR TIMES」を一定回数無償で利用できる権利)が授与された。
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【グランプリ】【AWS 賞】LENDY by Credit Engine
- 担当プロメンター:インクルージョン・ジャパン 吉沢康弘氏、電通ベンチャーズ 笹本康太郎氏
- グランプリ副賞:事業奨励金 200万円
- AWS 賞副賞:Amazon Echo
クレジットエンジンは、中小企業や個人事業主向けに、比較的少額で短期間のつなぎ資金や運転資金を融資するサービス「LENDY」を提供する。各種ウェブサービスとの連携や機械学習の活用により、独自のリスク評価とスピーディーな申込受付や与信ができることから、従来の銀行や金融機関ではとりこめなかった資金ニーズにフォーカスしている。
クレジットエンジンは自社だけでなく、金融機関がオンラインレンディングサービスを提供できるようにするプラットフォームを開発。オンラインレンディングに特化しており、銀行にとってはオペレーションを圧倒的に削減できるほか、既存の融資業務などを考慮しながら柔軟な導入パターンを提供できる。
クレジットエンジンでは、MUFG 傘下のアコムで PoC を実施し、新たな顧客層を獲得できることが明らかになった。三菱 UFJ 銀行と提携し、同行がこの金融機関向けプラットフォームのユーザ第一号となる。
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【準グランプリ】MDR
- 担当プロメンター:D4V 伊藤健吾氏、Draper Nexus 倉林陽氏
- グランプリ副賞:事業奨励金 50万円
高度な演算処理が行える量子コンピュータは、主に特化型マシンと汎用型マシンに大別されるが、MDR は誰もが簡単に量子コンピューティングを体験できるよう、特化型に対応した Python ベースの SDK を無料公開している。MDR は今回アクセラレーションプログラムへの参加を通じて、銀行・投資銀行・投資信託の業務への影響、特に現行業務に量子コンピュータの実装が可能な分野と不可能な分野を見極めることができたという。
また、MDR では特別な専門知識がなくても量子コンピューティングアプリを開発できる特化型量子コンピュータ OS を開発。ただし、特化型量子コンピュータでも解決な困難な課題があるため、同社は三菱 UFJ 銀行と汎用型量子コンピュータを共同研究するための契約を締結した。最終的には、汎用型量子コンピュータ OS が開発される見込みで、特化型と汎用型の両方で、金融のあらゆる業務へ量子コンピューティング導入を容易にできる環境の確立を目指す。
【準グランプリ】REMETIS by RESTAR
- 担当プロメンター:セールスフォース・ベンチャーズ 浅田慎二氏、アーキタイプ 中嶋淳氏
- グランプリ副賞:事業奨励金 50万円
不動産テックスタートアップの RESTAR は、不動産投資を行う法人向けの情報検索分析プラットフォーム「REMETIS」を開発している。日本における不動産ファンドの市場規模は運用資産額33兆円と巨大であるが、不動産を効率的に運用するための情報が揃っていないと同社は説明する。具体的には、ターゲットとする不動産の周囲の空室率や賃料相場など、的確な運用に必要な情報を集めるにはオンラインで100サイト以上、さらに紙ベースの資料などからも情報を集める必要がある。
REMETIS を使えばこれらの情報をワンストップに入手することができ、賃料収支などのデータもアップロードするだけで自動取込が可能。競合の開発情報なども取得した上で、情報をサマリしたチャートやレポートも自動作成される。三菱 UFJ 銀行とは、同行融資先の収益不動産の資産調査・格付け評価業務を、REMETIS を使って自動化可能かどうかを検証した。
【オーディエンス賞】【Microsoft Azure 賞】【DEJIMA賞】Orphe Track by no new folk studio
- 担当プロメンター:グロービス・キャピタル・パートナーズ 今野穣氏、電通ベンチャーズ 笹本康太郎氏
- Microsoft Azure 賞副賞:Micorosoft Visual Studio Enterprise 1年間利用権
- DEJIMA 賞副賞:DEJIMA メンバー利用権、イベント開催権、ノベルティ T シャツ
no new folk studio は、LED ライトとモーションセンサーを備えたスマートシューズ「Orphe」を開発している。IoT スタートアップ、もしくは、ハードウェアスタートアップとして知られる同社が、金融機関グループとの協業を目指したプランは画期的なものだった。
同社ではインソールに小型デバイスを挿入できる靴「Oraphe Track」を開発、モバイルアプリと連携して、パーソナルフットデータを集積することができるようにする。ランニングをする人の中に膝を痛める人が多いことに着目し、従来の方法では高価なセンサーが必要だった着地法の計測を、靴に備えたデータから独自のアルゴリズムで分析できるようにした。
代表の菊川氏は国土交通省が公開した「1日1歩あるく毎に、医療費が0.065〜0.072円削減される」というデータに刺激を受け、三菱 UFJ 信託銀行が開発した情報信託プラットフォームに、パーソナルフットデータを集約することで利用者がメリットを享受できるエコシステムを構築できると考え、MUFG のデジタルアクセラレータプログラムに応募したのだという。同社はブロックチェーンスタートアップの ZEROBILLBANK などとも組んで、ランニングすることでコインがたまるプラットフォームなども実現している。
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AndGo
- 担当プロメンター:東京大学エッジキャピタル 坂本 教晃氏、インクルージョン・ジャパン 吉沢康弘氏
AndGo は千葉県柏市に本拠を置く、秘匿暗号、ブロックチェーン、ハードウェアウォレットに関する技術の研究開発を行うスタートアップだ。仮想通貨を保存できるコールドウォレットを開発している。
一般的にユーザが持つ仮想通貨を取引所に残すのではなく、コールドウォレットに持つことで安全が保たれるが、多数のシークレットワードを記憶して置く必要があるなど、安全を担保するために実用的ではない側面がある。
AndGo では復元コア、QR コードによる仮想通貨送金、スマートフォンとコールドウォレットの組み合わせによる多要素認証により、使いやすさと安全性の両方を当時に提供する。このコールドウォレットは来年初頭に発売予定。
MUFG 傘下の Kabu.com やペイジェントとは、技術面に関するディスカッションを行なった。
SIGNAL by FACTBASE
- 担当プロメンター:DCM Ventures 原健一郎氏
FACTBASE は、仮想通貨に特化した情報ポータル「SIGNAL」を開発。ウェブベースのダッシュボードを通じた仮想通貨の市場予測閲覧機能「SIGNAL Board」と、仮想通貨の値動きに大きな影響を与えるイベントが発生したときに LINE でユーザに通知する機能「SIGNAL Alert」を提供する。
法定通貨を中心とする株価や為替の値動きとは対照的に、仮想通貨の値動きにはオンラインで拡散された情報が影響することが多い。それらの雑多な情報をビッグデータと AI を使ってコンテキストを理解して整理し、ユーザに正確に伝えるしくみを実現する。
同社では7月30日から、プレミアムコンテンツ第一弾の「億り人企画」として、BTCFX トレーダーの手法を実例まじえて紹介する予定。このコンテンツは1万円で購読できる。
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