メルカリが狙う次のユニコーン、テーマは「旅」ーー原田氏に聞くソウゾウ流「スタートアップ創造の仕組み」

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ソウゾウ代表取締役の原田大作氏

開始数カ月で新事業の終了、整理を発表したメルカリが次に手がける事業は「旅行」をテーマにしたものになるそうだ。本誌取材にソウゾウ代表取締役の原田大作氏が答えてくれた。

グループで主に新規事業のスタートアップを担当する子会社、ソウゾウの代表に今年4月に就任した原田氏にその狙いと勝算について聞いた。(本文中の太字は全て筆者の質問。回答は原田氏)

メルカリ級を狙うーーソウゾウが考える新規事業

さて、何をさておき新しい領域の話題だ。旅行と言えば、MERY創業の有川鴻哉氏が手がけるズボラ旅、光本勇介氏のTravel NowにLINEの参戦など、2018年のテク・スタートアップ界隈で最も注目すべき市場になる。具体的に何をやるのだろうか?

新事業の領域について詳しく教えて欲しい

4月に旅行の領域に絞って事業をやるということが決まって現在開発中です。旅行ってプロセスが複雑じゃないですか。行きたいところを見つけて行程をアレンジして現地に行って、体験して、思い出残して。詳細はまだ言えないのですが、こういうプロセス全てを取るようなプラットフォーム的な考え方を持っています。

いつ頃公開になるのか

秋頃を予定しています。

原田氏は前述の通り4月に代表に就任し、ソウゾウとして新規事業のあり方を考えたという。そこで出た結論のひとつに「メルカリを超えるものを作る」という基準を決めたそうだ。

確かにこれまでソウゾウが手がけたサービスはクラシファイドのアッテ(2018年5月末終了)は別として、終了が発表されたNOWやteacha、メゾンズはどれもメルカリ本体の派生だ。ソウゾウが手がけなくても本体でやればいいし、実際、これらはソウゾウの手は離れるものの今後、メルカリの一部サービスとしてマージされる可能性があるという話だった。

旅行サービスの詳細はこれ以上説明できないという話だったのでここからは想像になるが、楽天が買収によってECセグメントのひとつの柱に育てた楽天トラベルのような存在感を目指しているのだろう。後発の話題についてはメルカリそのものが最後発であったことを考えれば取るに足らない指摘になる。

メルカリの前身「コウゾウ」では3つほど新規事業を仕込んでいたという話を聞いたことがある。たまたま最初の打席で放ったメルカリが大きくヒットしたのでそこに集中した。ソウゾウも旅以外には考えなかったのか。

ソウゾウで手がけたサービスにはメルカリIDを拡大させる、という思想がありました。またメルペイもメルカリに近く『モノとカネ』以外の領域であれば『コト』になると。それで取り組んだアイデアが、旅やコミュニケーション、VR・ARなどの体験の領域になったのです。当初は3ラインで考えていたのですが、試作品を使ったインタビューなどを重ねた結果、旅行に統一することになりました。ここでメルカリとは違う新しい柱を立てる

新規事業の領域については理解した。もうひとつ気になるのが撤退の基準だ。ユーザーや株主には期待している人もいるがどのように説明するのか

いくつかポイントがあって、KPIをもっと磨こうよというのがイエローカードで、数字が全くついてこないのがレッドカード。スタートアップと同じで最終的に予算が切れたらその段階で(判断がやってくる)

始まる前から終わる話をしても仕方ないのだが、責任の取り方みたいな話題については結構シビアだった。原田氏はソウゾウの代表であると同時に、経営責任を負った一人の「プロ契約社員」的な存在になる。事業がダメになったからすぐに契約終了、ということがあるかどうかはわからないが、プロスポーツ選手並みの意識を持っているのは他の役員からも聞いたことがある。この辺りはスタートアップと同じだ。

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少し話を変えよう。では、メルカリーソウゾウはどのようにして新規事業を成功に導こうとしているのか。原田氏は社内スタートアップの仕組みについて興味深い取り組みを教えてくれた。

メルカリには創業期(コウゾウ時代)の実績が全部残ってるんですが、それをベンチにしてます。メルカリが開始してからどれぐらいの予算で、広告費をどれぐらい使って、何人の人員を投入したのか。(山田)進太郎さんたちは開始して3カ月で『これキタ』と確信したポイントがあったそうなので、そこまでの予算を参考に事業計画を組んでます

スタートアップ初期に困るのは人員と資金だが、これについてはスター人材が集まりまくってるメルカリにおいて心配事にはあたらない。メルカリ創業期のコーポレートを小泉文明氏と手がけた掛川紗矢香さんや、同じくメルカリのサーバーを支えた鶴岡達也氏らがソウゾウの役員として参加している。資金についても同様だ。

さらに羨ましいのが豪華なメンタリングの制度にある。「Souzoh Brain Trust」という仕組みがあるそうで、月に一回、グループの経営陣を前に1時間ほど起業家としてピッチする機会を設けているという。

例えば松本(龍祐)さんはユーザー視点、濱田(優貴)さんは技術視点、小泉さんは『それビジネスになるの?』といったフィードバックをくれるんですが、良い意味でマウンティングしてくるんですよね。ただ、意思決定は必ず本人にさせる。当事者に判断させるんです

具体的にはプレゼンターは5分で概要をピッチして5分でデモを披露する。オーナーはミーティングの最後に1カ月後に何をするのか全員を前にチェックアウト宣言して終了する、という具合だそうだ。プログラムのモットーも教えてもらったので共有しておこう。

  • 顧客目線でより面白くなるためには?を考える
  • All for one:全ては成功のために。リスペクトの元に発言する
  • 誰もがアイデアを自由に発言し上下関係なし
  • 会社都合、前提条件は無視、破壊的なアイデアを歓迎
  • Give & Give & Give!

メルカリにはR4Dという研究開発機関やフィンテック領域のメルペイ、スタートアップ投資のメルカリファンドもあって、それぞれでスタートアップを生み出す仕組みを用意している。

しかしソウゾウはこのどれでもなく、純粋にコウゾウの再現をしようという印象を持った。一方で退路を絶ったようなバンジージャンプのスタートアップ手法ではなく、メルカリなりのエコシステムの中で、より多く打席に立てる仕組みを作ろうとする意図を感じる。

旅領域のサービスが当たるかどうかは全くわからないが、このエコシステムが本当に成立するのなら、「メルカリの次」という言葉が真実味を帯びてくるのではないだろうか。

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