新築アパートを高級ホテルに変える「WhyHotel」ーーシェアで不動産に新風を吹き込むスタートアップたち

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Airbnbが登場して以来、不動産ビジネスは大きな変革期を迎えました。いまなお、新たな商機を探るスタートアップが登場しています。

今回紹介する「WhyHotel」は2016年にワシントンD.C.で創業し、累計390万ドルの資金調達に成功しています。同社は建築から1〜2年しか経っていない新築高級アパートメントの空き部屋を一時的に貸す“ポップアップホテル””事業を展開しています。

新築アパートの入居者を募り、稼働率を100%にするまでアイドリング時間と空き部屋を有効活用して売上を最大化させるのがWhyHotelの魅力です。サービス内容はホテルで受けられる体験そのものですが実態は民泊業です。

新築アパートを高級ホテルへ

Forbesの記事によると、新築高級アパートの賃貸契約は1年以上のものが大半。回転率が50%である一方、新しい入居者を探すまで8〜14カ月もの時間を費やすといいます。

上記数値を見る限り、オーナー側は数年以上居住する“優良入居者”をコツコツと募り続けなければ、アパートメントの半分以上が開業から数年間、ずっと空室状況であり続けるという事態も十分発生する可能性もあるわけです。

同記事によれば、アパートを満室状態に近づけるまでにかかる時間は開業から2年以上だそうです。そこで出番になるのがWhyHotel、というわけです。

WhyHotelの強みは単に新築アパートの課題解決に取り組んでいるだけではありません。高級ホテル並みのサービスを提供するため、各部屋にはAmazon Alexa対応の音響アシスタントデバイスを設置。Alexaを通じてサービスオーダーをすれば、24時間応対可能なコンシェルジェに繋がります。

従来のホテルは高級感を演出するためにインテリアや内装に多額のコストを費やす必要がありました。しかし、WhyHotelは新築アパートと提携することで、一泊3万円以上もするようなホテルに劣らない高級感の演出と宿泊体験を提供することに成功しています。自社で抱える運用コストはコンシェルジェサービスの手配のみ。

オペレーションに関して、Airbnbサービスを支援する宿泊管理市場も勢いを増しています。この点、WhyHotelが民泊客向けルームサービスPillowなどと提携すれば、自社で抱える運用リスクを最小化させることも可能でしょう。コンシェルジェを外部に委託してしまえば、あとはアパートとの提携数を増やす営業部隊を抱えるだけで運用できてしまう具合です。

2018年6月、WhyHotelはアパート不動産企業の「Monument Reality」と提携し、米国メリーランド州ボルティモアで300部屋のポップアップホテルの提供を開始。18カ月間、WhyHotel向けに部屋が開放されるそうです。

昨年にはワシントンD.C.で50部屋を貸し切った試験運用をおこなっており、サービス提供開始から2カ月で入居率は85%に至ったといいます。この実績を評価されて今回の提携に至りました。

利用されていない不動産資産に注目

本記事で紹介したWhyHotelは高級アパートの不活用資源を上手に使った民泊業態でした。一方、高級ホテルの空き部屋をスポット活用するサービスも登場してきています。

Rechargeは30分〜1時間単位で4つ星ホテルの部屋をスポットで借りることができるサービスを展開しています。2015年に創業され、航空会社JetBlueなどからの投資を経て累計230万ドルの資金調達に成功しています。

急に入ったビデオ会議や、日帰り出張の際に一息ついてシャワーを浴びたいなどの一時的な需要に対応します。ちなみに日本人の方がRechargeのサービスを聞くと、いわゆる“ブティックホテル”と同じ業態のように思い敬遠しまいがちですが、米国ではそうしたサービスは存在しないため受け入れられている印象です。

TechCrunchの記事によると、2017年4月時点で15のホテル事業者と提携し、2万5000人の利用客を獲得しているそうです。1分当たり66セントの価格で高級ホテルをスポット利用できるサービスは、特にビジネスマンの需要に応えていると言えるでしょう。

ここまで紹介してきた2社に代表されるように、民泊やホテル市場における不動産資産の最大化を目指すスタートアップは年々頭角を現すようになってきました。

サンフランシスコでは日本人起業家の内藤聡氏が運営する、ホテルを月額サブスクリプションで利用できる「AnyPlace」がありますし、国内でも企画テーマに沿ったメンバーと1週間ルームシェアする「Weeeks」が登場しています。いずれも従来のやり方では売上を最大化しづらい不動産オーナーを支援する事業モデルを展開します。

不動産に代表される物的資産はいつまでも残り続けるものです。こうした資産を最大活用するビジネスモデルが最近の流行りといっても過言ではないでしょう。事業アイデアを模索されている方は、まず身の回りの物的資産に目を向けてみてはいかがでしょうか。

Via Forbes

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