帰ってきた元祖女性YouTuberのMichelle Phan氏、新プロジェクトを8,000万人の視聴者に届ける

by Tech in Asia Tech in Asia on 2018.9.21

 

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Michelle Phan 氏
Photo credit: Thematic

ソーシャルメディアから消えて2年、美容系ビデオブロガーのパイオニア Michelle Phan 氏が、すさまじい勢いでコンテンツ制作コミュニティの中心に帰ってきた。

ベトナム系アメリカ人インフルエンサーである Phan 氏をフォローしている方々は、2016年の1年間の活動休止の理由についてはもうご存知だろう。1つは、彼女が YouTube チャンネルの登録者800万人以上に向けて後日動画にて説明したのだが、コンテンツの商業化が進むにつれてもたらされた個人的な危機だった。

他にも、動画で使用した楽曲に関して訴訟を提起されたことへのプレッシャーやトラウマがあった。Ultra Records は2014年、Phan氏を著作権侵害で告訴した。Phan 氏は反訴を提起し、楽曲使用の許可は得ていたと主張した。

最終的には、両者の間で示談が成立した。

しかし今回、Phan 氏はまさに逆境を最大限に生かし、Thematic をローンチした。Thematic は P2P のマーケットプレイスで、いまだ知られていない将来有望なアーティストの楽曲を検索し、使用できる。

コンテンツクリエイターに向けた Thematic 最大のアピールポイントは、プラットフォーム上の全ての楽曲に対して、インフルエンサー動画への使用に関する権利関係がクリアになっていることだ。つまり、コンテンツクリエイターはレコード会社からの訴訟を心配しなくてもよい。

Phan 氏は次のように語る。

残念ながら、楽曲を動画に使用しようとするクリエイターに向けて、楽曲のフェアユースに関する誤った情報や、楽曲の全権利者からの正式な許可やライセンスの取得に関するデマが世の中にはたくさんあります。

Thematic はプラットフォーム上の楽曲の権利関係を事前にクリアにし、ダウンロード時に自動的にライセンスを付与することでクリエイターのリスクを排除している。また、動画と楽曲のマッチングを促進することで時間の節約にもなる。

同時に、音楽アーティストはより多くの露出を得て、クリエイターの熱心なファン層に知ってもらうことができる。このことは潜在的にダウンロード数の増加につながる。

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様子見

プラットフォームへのニーズを確認するため、Phan 氏と彼女のチームは IpsyOS と協力した。Ipsy は、Phan 氏が2011年に共同設立した美容系サンプルの定期購入ビジネスであり、IpsyOS は、彼女が Ipsy 運営時にローンチした美容系クリエイターのためのオープンスタジオだ。

プラットフォームのテストは、特にスタジオ会員登録者のうち、ある特定のセグメントで行った。Glow 会員、すなわち YouTube で1万人以上のフォロワーを持っているか、Instagram で2万5,000人以上のフォロワーを持っている会員である。

Phan 氏はこう説明する。

初めは、美容・ライフスタイルコミュニティの中に焦点を絞りました。初期から一緒に活動してきたコミュニティだからです。

テストの結果、コンテンツクリエイターは、Thematic を通じて楽曲を調達および権利問題をクリアすることで削減できる時間の量について評価していることがわかった。

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Photo credit: Tech in Asia

Phan 氏は2018年6月に開催された VidCon にて、Thematic をアメリカで正式にローンチした。VidCon は年に一度開催されるオンライン動画業界のカンファレンスで、3万人以上が参加する。

以来プラットフォームの会員は2,000%増加しており、うち3分の1は順番待ち状態だ。Thematic の利用者は12ヶ月時点で10万人を優に超える見込みだ。

私は慎重なスケーリングというものを信じています。プラットフォーム上のクリエイターと音楽アーティストのバランスを最適にすることで、両者に付加価値を与えることができます。(Phan 氏)

アルゴリズムとカスタマイズのバランス

Thematic の音楽をクリエイターのコンテンツにマッチさせるため、Phan 氏と彼女のチームはリスニング会議と自動スクリーニングプロセスの両方を実施している。

クリエイターに対する曲のおすすめについても同じだ。

当社のキューレーションエンジンは、動画のテーマに最適な曲をマッチできるよう、クリエイターコミュニティや他の YouTube クリエイターが曲とどのように関わって使用するか、常に分析しています。(Phan 氏)

このプロセスの後、標準的な音楽メタデータを補完し、複数の人間が入念に聴いて検査する。このシステムにより、30日以内で80%のアーティストのプレースメントを可能にしている。

また、クリエイターの参加を維持するために楽曲は入れ替えを行い、毎週金曜日には新曲をリリースしている。

アーティストへ同一の価値を提供

コンテンツクリエイターが無料で楽曲を使用できることで、音楽アーティストは潜在的な新しいファン層を取り込むことができる。一方で、努力に対する対価は得られるべきではないか?

それには賛成しません。

Thematic 共同設立者で COO の Audrey Marshall 氏はそう書いている

Marshall 氏は次のように詳述する。

Thematic はビヨンセやテイラー・スウィフト、エド・シーランのように業界で突出した地位を持ち、楽曲使用に巨額のライセンス料を要求できるアーティストのためのプラットフォームではありません。次のビヨンセのためのプラットフォームなんです。自分の部屋でヘアブラシをマイクに歌い、Garageband を覚えて次世代スターとして見つけてもらいたいと思っているような。

無名アーティストがより多くの人に楽曲を聞いてもらう手段は限られている。彼らの楽曲は通常クリエイターは知らないし、聞くこともない。ライセンス料を払うなら、すでにファンがいるような人気の曲を使いたいと考えるだろう。

アーティストへの価値提供として、Thematic はアーティスト名と楽曲のタイトルを動画内にクレジットすることをクリエイターに求めている。また、クリエイターが曲をどのように使用したかというデータもアーティストに提供している。

IpsyOS クリエイターとのプライベートベータ版以来、アーティストの楽曲は6,200万ビューを獲得し、計8,800万人の視聴者に到達したとしている。これは少なくとも2,300本の動画がプラットフォームの楽曲を使用し、3,100曲がプレースメントされたことに基づいている。

成長計画

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Photo credit: Tech in Asia

Thematic は今日まで完全自己資金で運営しており、Phan 氏は今はまだ収益化モデルについては検討していないという。

しかしながら、設立チームは音楽ビジネスで豊富な経験を持っている。Marshall 氏と、Thematic の CEO で共同設立者である Marc Schrobilgen 氏は、アーティストやレコード会社、クリエイターと交渉し、楽曲の調達や権利関係のクリアを行う会社 Spin Move Network を運営している。

YouTube 以外では、Instagram クリエイターらから強い関心が寄せられている。2018年6月に Instagram の長時間形式の動画アプリ、IGTV がローンチしたためだ。

近い将来では Facebook への拡大を目指すとともに、ゲームに特化したプラットフォームも狙っています。動画使用目的で、権利関係がクリアな音楽への欲求は著しいです。(Phan 氏)

個人的な観点では、コンテンツクリエイター支援のため、全ての動画プラットフォームにおけるデータ権利の管理技術向上を望んでおり、Phan 氏は著作権法を現代化するため、スマートコントラクトの利用を支持している。

また、デジタル制作に興味を持つ人のために無料の応用教育を提供することが、雇用の拡大とコンテンツ品質の向上につながる重要な要素と考えている。

しかし、Phan 氏は、自身が制作した女性動画コンテンツクリエイターのためのコンテンツネットワーク、Icon とはもうつながっていない。Ipsy も離れている。Ipsy は2017年第4四半期の離脱時点で月10米ドルの会費を支払う有料ユーザが300万人以上いた

Phan 氏は以下のように説明している。

興味が変わったのです。ありがたいことに、早い段階でゴールを達成することができました。今は、Thematic のように有意義なツールを構築してクリエイター経済を助けたり、興味を持っているブロックチェーンやゲーム、製品などに役立つプロジェクトへの投資に時間を使いたいと思っています。

また、以前フランスの巨大美容メーカー L’Oreal とローンチしたリップスティックブランド、Em Cosmetics の成長も目指している。第一弾の発表から休止していたが、昨年再度市場に売り出し、新作を手ごろな値段で提供している。

これは、2017年に唯一リリースした YouTube 動画で Phan 氏がシェアしたビジョンと紐づいている。動画で Phan 氏は、2016年にソーシャルメディアを休養し訪れたスイスで過ごす中で、人々を美しく見せることから人々を美しく感じさせることへ方向転換することを決めた、と説明した。

Phan 氏は今、スイス、カリフォルニア、アジアを行き来している。Phan 氏は言う。

今集中しているのは、クリエイター経済の手助けとなるツールを構築することで、クリエイターが容易にキャリアを推進することができればと思っています。

【via Tech in Asia】 @techinasia

【原文】

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