MusicLifeが500万米ドルを調達、AIとブロックチェーン技術による音楽配信を目指す

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Image Credit: MusicLife

ミュージシャンが150億米ドルの音楽業界の中で一山当てるのは簡単ではない。7,000万人以上の有料会員を持ち世界最大の人気を誇る音楽配信サービスSpotify は1回の再生につき0.006ドルから0.0084ドル(100万回のストリーミングにつき約7,000ドル)を支払っており、そのお金はさらにプロデューサー、レコード会社、作曲家、そしてアーティストで分割される。より小さなシェアのプラットフォームでは、さらに懐が厳しい。

シンガポールを拠点とする非営利組織 MusicLife Foundation と、日本を拠点とする MusicLife Company が共同運営する MusicLife は、ブロックチェーン技術と人工知能(AI)でその問題を解決しようとしている。本日(原文掲載日:8月27日)、同社は Metropolis VC がリードする500万米ドルの資金調達ラウンドを発表した。この資金は音楽の売買やシェアを行うプラットフォームの拡大に使用されるとしている。

MusicLife の設立者兼代表取締役の Kaiming Liu 氏は声明の中で述べた。

音楽業界の分散化という弊社のビジョンの実現のため Metropolis VC と協力することに、とてもわくわくしています。

現在の音楽業界は大手に支配され、著作権の制限に縛られ、そしてアーティストへの公平性と透明性に欠けています。MusicLife はアーティストにより多くの利益をもたらし、そしてファンの皆様には楽曲の所有者となる機会を提供します。

Pandora や Spotify と同様に、MusicLife はデジタル店舗である MusicLife Exchange を通じて、有料オプションと補完的なオプションの組み合わせを提供している。楽曲は最初の5万回の再生は無料であり、その後はAI駆動のシステムが人気を考慮して価格を決定する。ここで言う人気とは、毎日の収益の総額、総再生時間、リスナーの数、そして再生された場所によって決定される。一般的には、より多い再生回数は、MusicLife の2つの仮想通貨のうちの1つであるMitCoin(MITC)で、より高い価値に相当する。

MusicLife Exchange で購入した場合、1曲あたり平均1ドル前後だが、再生する権利を得られるだけではない。アーティストは自身の作品の著作権を、95%は自分のものとして残しながら、MusicLife Foundation が頒布できるよう認めている。(MusicLife は収入の50%を「音楽とミュージシャン」のためのインキュベーションプログラムに投資するとしている。)すべての楽曲は MusicToken(MSCT)を生成し、その一部は MITC に交換される。そしてリスナーは楽曲のストリーム配信に MITC で支払うか、MSCT で(アーティストの上記95%の45%まで)投資するかを選ぶことができる。投資を選べば、他の人がその楽曲を買った際に配当を受け取る。

MusicLife の経済モデル( クリックして拡大)
Image Credit: MusicLife

MITC を入手する方法は現金だけではない。他には、MusicLife のソフトウェア開発キットを活用するハードウェアを通じてもできる。視聴データを提供する者は効率的に仮想通貨を「マイニング」し、直接的に MITC を手に入れることができる。骨伝導スピーカーや装着者が聞いていることを確認するセンサーを内蔵した189米ドルのサングラス MusicLens は、「2018年後半」に販売されればこういったタイプのやり取りを促進する最初のハードウェアとなる。

音楽の配信にブロックチェーン技術を用いたのは MusicLife が初めてではない。UjoMusic とニューヨークを拠点とするブロックチェーンスタジオ ConsenSys は、イーサリアムを基にプラットフォームを構築した。この中ではユーザが個人使用または商業使用のライセンスの代価を、スマートコントラクトを通じて直接アーティストに支払うことができる。(Imogen Heapとコラボして2015年に楽曲をリリースしている。)

音楽に注力している別のスタートアップ PeerTracks は、市場原理と結びついた価値を持つブロックチェーントークンの「ノート」を購入することで、ファンが楽曲をストリーミング配信したりダウンロードしたりできるようにしている。アーティストの評価が高いほど、楽曲の価格も上がる。

しかしながら、MusicLife は自身のブロックチェーンのソリューションが著作権侵害に対する保護のため特に設計されている数少ないものの1つであると強く主張している。同社の「ハードウェアが組み込まれたシステム」は、APIを利用するあらゆるハードウェアでそれまでにストリーミング配信された音楽の量を計算しており、詐欺行為や偽の再生データを防いでいる。

MusicLife は、同社のウェブサイトで次のように述べている。

MusicLife は迅速なトランザクションの処理、ブックキーピング、そして権利の確認を、人間による検証なしで行うことができます。

MITC を通じてコミュニティのメンバー全員が強く動機付けされ、全員が積極的にプラットフォーム開発を促進することができるのです。

同社は今後数ヶ月のうちにファーストパーティのウェブストアとアプリをローンチする計画であり、MusicLife Exchange については今年の初めに試験を行った。中国の音楽サービス Echo は今年7月に、MusicLife のウォレット API を通じて融合している。

MusicLife は今日までに60万人以上がプラットフォームを使うために登録したとしている。

【via VentureBeat】 @VentureBeat

【原文】

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