「ブロックチェーン版PayPal」を計画する韓国のTerra、仮想通貨取引所大手各社から3,200万米ドルを資金調達

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Photo credit: Terra

主流化。仮想通貨が直面する最大の難問だ。皮肉屋は常にこう言う。デジタルウォレットに何十種類ものデジタルトークンを所有し推定価格が変動するのは、大変結構なことだ。だが、実際にモノを買う際に使えないなら、何の意味がある?

これまで多くのスタートアップが、仮想通貨を主流化しトークンを日常的な決済方法に変えると主張してきた。

Terra はそれらスタートアップの中でも間違いなく傑出している。資金調達額や投資家の数だけをみてもだ。複数の有名パートナーも Terra の仮想通貨方式の決済ソリューションにサインアップしている。それはオンラインストアにおける PayPal や Alipay に似た、Terraが売り込むブロックチェーンベースの代替サービスだ。

Terra の共同設立者である Daniel Shin 氏は Tech in Asia に対し次のように語った。

仮想通貨での支払いは、他の会計方法と体感的に何ら違いはない、と強く思います。もしあるとすれば、より利便性が高い点でしょう。弊社では、ユーザの皆様が会計時の決済方法として Terra を選択する際、仮想通貨で支払っていることを意識しないような製品設計を行っています。

Terra は韓国に本拠地を置くスタートアップだ。e コマースポータルサイトにおける仮想通貨ベースの決済システムの導入を推進しており、有名投資家の面々から3,200万米ドルのシード資金を確保した。

投資家の中には、世界最大の取引量を誇る仮想通貨取引所6社のうち4社のベンチャーキャピタル部門も名を連ねる。Binance Labs(幣安実験室)、Huobi Capital(火幣資本)、OKEx、Dunamu & Partners(두나무앤파트너스、Upbit 運営会社 Dunamu の関係会社)だ。

ブロックチェーン専門のベンチャーキャピタルもこのラウンドに複数参加した。Polychain Capital、FBG Capital、Hashed などだ。TransLink Capital のような古参 VC プレイヤーも参加した。

Terra は、資金のうちトークンの販売もしくは購買契約によるものは(もしあれば)何割か、という Tech in Asia の質問には回答しなかった。しかしながら、今回得られた資金は「価格安定」仮想通貨のローンチに使用するという。仮想通貨は社名と同じく Terra と命名され、Terra の決済システムの基礎となる。

ステーブルコインがステーブルコインを救う

Terra のトークンは「ステーブルコイン(安定通貨)」である。仮想通貨の主流であるビットコインやイーサの特徴とされてきた、急激な価格変動や投資家の投機を回避するよう設計されたデジタル通貨だ。

多くの潜在ユーザにとってこのボラティリティは、ビットコインやイーサなどのトークンをオンライン決済などの日常的な利用には不向きなものにしている。

ステーブルコインは、原資産で直接担保されている。原資産には法定紙幣や金(ゴールド)、他の仮想通貨などがある。最も広く認知されている例としては、米ドルに価値が連動するとされる Tether がある。

これは、ビットコインなどの主流トークンが経験したような価値の損失からステーブルコインを保護するための設計である。(ビットコインは、2017年12月に1BTC あたり2万米ドルという高値を記録したが、本稿執筆時には7,000米ドル前後で取引されている。)

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Terra 共同設立者 Daniel Shin 氏
Photo credit: Terra

Shin 氏によると、Terra のコインは、二次仮想通貨からなる「分散化した安定引当金」により担保されるという。

Shin 氏はこのように説明している。

Terra では二重トークンシステムを使用しています。ステーブルコインである Terra と、二次トークンである Luna で構成されています。Terra の需要や価格が上がった時は、Terra を追加発行し価格を下げることができます。

Terra の追加発行分の一部は、割引という形で、Terra を使った支払いに対するインセンティブとしてユーザに返される。

他方で、Terra の需要や価格が下がった時は、Terra を買い戻し消却する必要があります。

Terra は、保有する Luna コインを使って Terra を購入し、エコシステムにおける支払い能力を維持する、と Shin 氏は言う。

そして Luna のトークンは、Terra の決済システムのユーザに課される決済手数料により価値を引き出す。

プロトコル自体は収益を得られるようには見えませんが、Terra Foundation は一定額の Luna を安定引当金に保有しています。Terra の取引量が増えれば、Luna の保有者に支払われる決済手数料も増えます。これは、Visa ネットワークの仕組みに似ています。Visa ネットワークは約2,900億米ドルもの価値がありますが、これはネットワークの総価値が利用者の加入と比例して増加するからです。(Shin 氏)

Terra は、金融サービスプロバイダと連携し、「Terra のプラットフォーム上で、法定通貨から直接 Terra のステーブルコインに簡単に両替するか、顧客の選んだ仮想通貨取引所で Terra を購入するか、いずれかを顧客が選べる」ようにする、と Shin 氏は付け加えた。

有名パートナー

Terra の生き残りは、オンラインストアでの導入やオンラインショッピングユーザによる定期的な利用にかかっている。この点に関して、Terra はすでに大きな進歩を果たしているという。

Shin 氏自身が韓国 e コマース業界のベテランである。前職では、チケット購入ポータルサイト Ticket Monster として設立した e コマースサイト Tmon の CEO を務めていた。

Tmon は、自身のサイトで Terra を決済方法の1つとして導入することを約束するグループ、Terra Alliance に加入した e コマースプラットフォームの1つである。その他にも、東南アジアの CarousellPomelo FashionQoo10Tiki、韓国の AltheaWoowa Brothers(우아한형제들、「配達の民族(배달의민족)」を運営)もサインアップしている。

Terra Alliance のグローバルパートナーは、計15社。顧客4,000万人、年商250億米ドルである。

目標は、2022年までに年商1,500億米ドルに到達するようアライアンスを成長させることです。(Shin 氏)

Terra のブロックチェーンベースのシステムは、よりセキュアな決済方法を e コマースサイトに提供することができ、手数料も、クレジットカード会社などの決済プロバイダに現在支払っている額の何分の1かで済むという。

Shin 氏はこのように指摘している。

e コマースパートナーがクレジットカード決済手数料単体で年1億2,500万米ドル以上を支払っているとすると、Terra では1億米ドル節約することができます。さらに、Terra のモデルでは本質的に顧客ディスカウントが含まれるため、参加プラットフォームには即時の売上上昇と市場シェアの獲得が期待できます。

Shin 氏によると、Terra は2018年第4四半期に決済システムのベータテストを計画しており、年末には Tmon での正式なローンチを予定しているという。

なお、Arrington XRP、Kenetic Capital、1kx なども Terra のシードラウンドに参加した投資家として公表されている。

【via Tech in Asia】 @techinasia

【原文】

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