スタートアップにクリエイティブの力を注入するプログラム「GRASSHOPPER」が始動、キーマン2人に狙いを聞く

by Masaru IKEDA Masaru IKEDA on 2018.10.26

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スタートアップの文脈で、電通の名前を耳にすることは多い。CVC である電通ベンチャーズに始まり、デジタルガレージとの JV である電通サイエンスジャム、スタートアップ向けコミュニケーションプロトタイピングの「TANTEKI」など、機能や役割、そこに携わる人もさまざまだ。

かくいう THE BRIDGE も 2016年に電通と THE BRIDGE Fes を開催しているが、この際にプロデューサーとして関わってくれた月村寛之氏を中心に、新たなスタートアップ支援プログラムが立ち上がった。新プログラム「GRASSHOPPER」を率いるのは月村氏に加え、PARTY のクリエイティブディレクターで VALU 取締役も務める中村洋基氏HEART CATCH 代表でプロデューサーの西村真理子氏ら〝村・村・村トリオ〟。全く異なるバックボーンを持つ3人が交わり、スタートアップエコシステムに新しい風を吹かせようとしている。

中村氏「スタートアップにクリエイティブを橋渡ししたい」

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PARTY 共同創業者でクリエイティブディレクターの中村洋基氏。GRASSHOPPER 副代表を務める。

ナショナルクライアントの広告クリエイティブで有名な賞を総なめし、最近では VALU の創業でスタートアップにも関わっている中村氏。もともとスタートアップのカルチャーが好きで、スタートアップとクリエイティブの文化を隔てている壁はあるものの、双方はシナジーのある関係になれるんじゃないか、と考えていたという。

最も想像しやすいスタートアップのクリエイティブエージェンシーの関わり方は、シリーズ B やシリーズ C ラウンドくらいの資金調達を経て、サービスのキャズム超えを目指して TCVF を打ち始める頃にやってくる。彼らは懇意にしている広告代理店に連絡をとり、クリエイターの頭脳を結集してもらい、人々の印象に残るキャンペーンを展開する。

しかし、この種のキャンペーンは残念ながら一過性のものであることが多かった。従来からのエージェンシーの体制やキャンペーン単位で予算が確保されるモデルでは、クリエイターが企業やスタートアップと継続的なリレーションをとり続けることは難しかったからだ。

今回、中村氏の古巣でもある電通が GRASSHOPPER を立ち上げたことを契機に、彼はクリエイティブからスタートアップへの〝出島〟となるようなイベントをやってみたいと語ってくれた。 THE BRIDGE Fes や西村氏が以前主催した HEART CATCH で見られたような、スタートアップにクリエイティブが加わることで、プロダクトやサービスを人々に受け入れてもらいやすくなる挑戦を、今後は GRASSHOPPER を通じて試したいと考えているようだ。

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月村氏「スタートアップの世界に、もっとクリエイターが入っていってもいいんじゃないか」

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GRASSHOPPER 代表の電通チーフプロデューサー月村寛之氏。

10年以上にわたり、キャンペーンや CM 制作などでクリエイティブのプロデューサーを務めてきた月村氏。中村氏の関わった、動物の排せつ物で走る3輪オートバイ「TOTO トイレバイク ネオ」を身近に見た2012年頃からリーンスタートアップの手法にヒントを得て、クリエイティブの世界にアジャイルな方法を取り入れてきた。

初めから企画やコンテを確定させてクリエイティブの制作に臨むのではなく、市場に熱狂者を作り出し、彼らの反応を見ながら新しいアイデアを組み入れていく手法は、クリエイターやクライアントをも楽しくさせる。そんなことから、ある日、クリエイターとスタートアップの接点ができれば、日本の産業がもっと面白くなるのではないか、と考えたのだという。

2017年には、VALU、CASH、タイムバンクなどといった、これまでとは違った面白いサービスが生まれた。でも、こういうサービスを起業家にだけ任せておいて、なぜ、エージェンシーにいるクリエイターが作らないのだろう? スタートアップの世界に、もっとクリエイターが入っていってもいいんじゃないか。

GRASSHOPPER では、スタートアップにプロダクトを磨いてもらうべく、電通や外部メンターなどからクリエイティブのリソースを提供する。ナショナルクライアントのほとんどにアカウントを持つ電通のポジションを生かし、必要に応じて、ナショナルクライアントとの協業企画なども提案できるという。

メンタリング + イベント + メディア + 投資

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GRASSHOPPER のメンターの皆さん

GRASSHOPPER が提供するプログラムの多くは、クリエイティブ、ブランディング、UI/UX、PR、マーケティングを中心としたメンタリングで構成される。電通が得意とする分野については電通社内の人材リソースを、また、事業計画、資本政策、法規などについては外部の専門家と連携してメンタリングが提供される。3ヶ月間のプログラムが修了する際には、一般的なアクセラレータと同じく、スタートアップが出資者や協業先を募れる機会としてデモデイが開催される(GRASSHOPPER DAY)。GRASSHOPPER では、このようなバッチが年に2回程度実施される予定で、1バッチあたり概ね10チーム程度の採択を見込んでいる。

オフラインにおけるコミュニティ醸成のためのイベント開催に加え、オンラインで露出やタッチポイントを増やすために自前のメディアを持ったことは GRASSHOPPER にとって大きい。アクセラレータの中にはオウンドメディアを開設するところも増えてきているものの、GRASSHOPPER のメディアでは前出の西村氏を編集長に迎え、多彩なメンター陣が洞察を語るのもユニークな試みだ。また、プログラム修了時に評価の高かったスタートアップには、電通が出資するスキームも開設するという。

今週募集が開始された GRASSHOPPER の第1期のエントリ締切は11月末。デモデイは3月下旬に開催される予定だ。クリエイティブがスタートアップに与える影響は目に見えやすい部分だけに、デモデイではプログラム参加の before/after の比較がわかりやすいのも、他のアクセラレータプログラムに無い特徴。GRASSHOPPER はエクイティによるキャピタルゲインを狙った運営でもなく、電通のコーポレートアクセラレータ(電通との協業やシナジーを前提したもの)でもないとのことなので、ここから新たなスタートアップ支援のトレンドが生まれることも期待したい。

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