Facebookが口パクアプリ「TikTok」をコピー?ーーコンテンツ消費新時代「音楽産業4.0」を考える

by Takashi Fuke Takashi Fuke on 2018.10.30

people enjoying the concert
Photo by anna-m. weber on Pexels.com

ピックアップ : Facebook is building Lasso, a video music app to steal TikTok’s teens via TechCrunch

ニュースサマリー : Facebookが口パクアプリ「TikTok」の模倣サービス開発へ動いていると報じられた。ユーザーは人気曲の口パクもしくはダンス動画を手軽にシェアできる。市場では「Facebookが好きなアプリ」と答えた10代ユーザーの割合がたったの5%しないというデータもある。本件はこうした若者離れを食い止めるための施策であるとみられる。

Facebookは2018年2月に音楽ラインセンス企業との提携をしている。加えて、カラオケ動画共有サービス「Lip Sync Live」をすでに展開していることから、口パクアプリ開発への前兆はすでに見られていた。

話題のポイント : すっかり他社人気サービスの後追いをするSNSになってしまったFacebookが次に目をつけたのが「TikTok」。日本でもすっかりお馴染みになりましたが、どこまで流行るのか注目が集まります。

元々、市場を先行していた口パクアプリ「Musical.ly」がTikTokによって買収されて開発中止へと至って以来、米国市場にはぽっかりと穴が空いている状態になっています(Musical.lyを検索するとTikTokアプリページへ強制的に流れる導線になっています)。

アジア生まれのアプリに米国ユーザーが流れ込んだとしても、コンテンツやコミュニティ文化の違いが生まれ、上手く同期が進んでいるとは思えません。Facebookはこうした欧米市場で生まれた穴を埋めるようにサービス開発へ躍起になっていると考えます。

さて、ここでポイントは2点あります。1つはジェネレーションZおよびミレニアル世代の音楽消費の形が大きく変わったということ。

筆者が小中学生だった15年ほど前、音楽はCDやMDで消費する時代でした。そこにスティーブ・ジョブズ氏がiPodシリーズとiTunesを投入。オフラインからオンラインで音楽を購買する「音楽をダウンロードする」時代の幕が開けました。

しかし、iTunesの市場寡占はSpotifyを代表するストリーミング配信によってディスラプトされてしまいます。自由かつ無料で音楽を趣向する時代が訪れたのです。ここまでの流れを汲み、仮にCD・MD時代を「音楽産業1.0」、iTunesの登場によるオンライン音楽購入時代を「2.0」、ストリーミングサービス台頭時代を「3.0」と称しておきましょう。

そして2014年、Musical.lyが登場してから市場は次のステージへと向かいました。無料で音楽を聴ける点はそのままに、音楽の楽しみ方が「単に聴く」のではなく「自分好みにカスタマイズして楽しむ」という体験へと変わったのです。言い換えれば、現在私たちは新たな音楽コンテンツ消費時代「音楽産業4.0」を目の当たりにしているのです。

ユーザー体験が大きく変われば、音楽ビジネスモデルも変化せざる得ません。そこで2つ目のポイント、音楽収益軸のシフトチェンジが見えてくるわけです。

先述の通りユーザーの音楽消費の形が変わったからこそ、音楽を単曲やアルバム単位で販売する必要がなくなりました。無料でコンテンツがばら撒かれるのを前提にサービス設計をする必要があります。この点、上手くアーティストの著作権を担保しつつ成長するかが鍵となります。そこで大手音楽ライセンス企業との提携が戦略上重要となってくるのです。

TikTokが「エイベックス」と提携したニュースを筆頭に、日本市場でも提携話はさらに加速するでしょう。Facebookも各国の音楽ライセンスネットワークをさらに広める動きに出るとみて間違いないと思います。

大切なのは、音楽コンテンツが無料で垂れ流される時代に逆行した意見を言うのではなく、「音楽産業4.0」の流れを好意的に受け入れる姿勢を持つことだと考えます。

Facebookのような大手企業がしっかりとライセンス契約を取り付けた上でユーザーに音楽コンテンツを提供するようになれば、著作権を無視して配信されるコンテンツ普及率が圧倒的に減るかもしれません。この流れを積極的に受けて次なる商機を考えるべきでしょう。

たとえばSpotifyのように積極的にブロックチェーン技術などを取り入れ著作権を管理し、誰がどのようなコンテンツを消費したのかを徹底的に分析。音楽が無料で利用されることを前提に、ユーザーに最適な音声コンテンツを届けることを目的としたパーソナライズ化音声広告収益軸を提供することが考えられます。

Facebookが口パクへと動けば、同様のサービスが傘下のInstagramやWhatsAppでも展開されるでしょう。競合の動きにSnapchatやTwitterも黙っていないと思われます。LINEも同じく日本市場で口パク動画の動きを広める可能性があります。

音楽消費の形が急速に変わっている昨今、ビジネスモデルもこうした時代に沿った形で進化することが求められています。Facebookの口パクアプリ機能開発のニュースからは音楽消費の変遷と、時代が私たちに次世代のビジネスセンスを確立するように求めていることがわかります。

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