ブロックチェーンで作る「ネット投げ銭」の可能性、ALISがAPIプロトタイプを公開ーーマイクロソフトと協業

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ALISの創業者で代表取締役、安昌浩氏

本稿は1118日から20日まで東京ミッドタウン日比谷で開催されるブロックチェーンカンファレンスNodeTokyo 2018編集部による寄稿

ニュースサマリ:ブロックチェーンを活用したソーシャルメディアを運営する「ALIS」は11月7日、日本マイクロソフトと共同で開発をしていた「投げ銭API」のプロトタイプを公開している。9月に開発を公表したもので、インターネット上の感謝の気持ちをチップとして支払う仕組みで、これをブロックチェーンベースのトークンとして提供する。

EthereumのPoAProof of Authorityチェーンを使うことで投げ銭の発行に現実的な承認時間を担保しつつ、運用のコストを軽減しながらセキュアに構築できる仕組みを提供する。利用者はHTMLボタン等でサイトへ埋め込むことで利用できる。同社はこのAPIを活用した共同実験に参画するパートナー募集も同時に開始している。(提携数は最大で3件まで)

話題のポイント:9月にALISが公表したブロックチェーンベースのチップシステムのプロトタイプが公表されました。コンセンサスアルゴリズムにPoAを使うことで現実的な承認時間を実現しているのが特徴です。

ブロックチェーンの社会実装事例としてどのような未来像を描いているのか、NodeTokyo編集部では開発にあたったALISの創業者で代表取締役、安昌浩氏にショートインタビューを実施しました。(インタビュワー:増渕大志/構成・執筆:平野武士)

ブロックチェーンで作る「ネット投げ銭」の可能性

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今回進めている「投げ銭API」は具体的にどのようなシーンで社会実装される

安:色々な可能性があると思います。例えばウェブサイトに投げ銭ボタンを導入してALISやその他トークンで受け取れば、これまでの「課金」とはまた異なる運営収入になります。インセンティブとしてクーポンのようなものを提供することで継続利用者を増やす、といった使い方もあります。

暗号通貨によるトレードは新たな相場を生み出した。人気が出れば価値が上がる「チップ」というのは確かに新しい。コンセンサスアルゴリズムにPoAを選んだ理由を聞きたい

安:ALISではブロックチェーン技術の根底にある非中央集権という考えを大切にしています。しかし現状で利用しているEthereumではスケーリングの課題があり、当面はPoAがそのソリューションとして有効な選択肢の一つになると考えているからです。

なぜマイクロソフトのPoAソリューションを採択したのか

安:マイクロソフトさんって早くからEthereumのエコシステムを支えるパートナーであると同時に、新たなPoAソリューションにも挑戦されてるんですよね。クラウドサービスの中では最も進んでいる印象を受けていますし実際に進んでいると思います。その辺りがALISのベンチャー的カルチャーとも親和性が高いんじゃないかなと。また、国内ではどのプラットフォームや技術を採択すべきか情報が少ないので、少しでもその一助になれればと思い採択いたしました。

話を少し変えたい。そもそもソーシャルメディアは既存インフラでもまだまだプレーヤーが新しく出てきている。例えばリップシンクのTikTokはあっという間に時価総額でトップを取ってしまった。ソーシャルメディアをなぜブロックチェーン上に作ろうと考えたのか

安:まず、金銭資本ではなく『人のつながり』という社会関係資本を最大化させるようなサービスを作りたいと思ったことが、ソーシャルメディアを立ち上げようと思った動機でした。それを実現するためにブロックチェーンの分散性や経済報酬としてのトークンが活用できるのではと思い、現在のサービスの形になりました。

一方で、現状のソーシャルメディアでは個人情報転売などの問題に見られるように、ユーザが貢献しているにも関わらずユーザに利益が還元されない、ユーザの情報をユーザが扱えないなどの問題を解決できるとも考えています。

ブロックチェーンは確かに改ざん耐性が高い。実際にベータ運用をしてみて率直な感想はどうか

安:少なくとも『個人が発言した内容や、個人に帰属する情報が誰にも侵されない』という状態を実現する上では相性が良いと思います。

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ただ他の観点に関しては正直まだ良いとも悪いとも言えない、というのが本音です。ユーザの行動の自由度と、報酬払い出しへの関与度が大きいという前提の元、どのようなガバナンスを設計し、どの部分をブロックチェーンで実装するべきかの答えがまだグローバルに見てもないので、やってみないとわからない部分が多いですね。

分散型ならではのメリットを感じるところは?

安:やはり自分の情報(個人情報、過去の記事等)が誰にも侵されない状態を作ることができるというのは大きいです。加えて、価値と報酬体系を設計することで従来のメディアではマネタイズできないため、発信されなかった情報も発信できるようになるのではないでしょうか。

あとはスマートコントラクトとトークンにより、エコシステムに貢献したユーザへの利益還元も実現できる可能性があると考えています。サービス自体の方向性や運営をユーザが実現できるようなところにも挑戦していきたいですね。

日本で分散型ソーシャルメディアという文化を生み出すために何が必要か。例えばグローバルでみるとSteemitのような事例も先行している

安:この業界は未成熟なマーケットなので、色々なプレイヤーが出てきて各々が思うweb3.0のアプリケーションを開発することが重要だと思います。黎明期の今はまずプレーヤー全員が力を合わせながら業界を健全化し、マーケット規模を高めていくことに注力することが必要です。我々としては、「個人の信頼を可視化することで今までにつながることができなかった人とつながることができる」プラットフォームを目指し、実際にユーザに浸かっていただけるサービスを目指して粛々と開発を進めたいと考えています。

ありがとうございました。

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