本稿は11月18日から20日まで東京ミッドタウン日比谷で開催されるブロックチェーンカンファレンス「NodeTokyo 2018」編集部による寄稿
ニュースサマリ:エンタープライズ向けのブロックチェーンソリューションを提供するKadenaは11月19日、日本市場への本格的な参入を表明した。Kadenaはスマートコントラクト言語「Pact」を中心に、パブリックブロックチェーン「Chainweb」とプライベートブロックチェーン「ScalableBFT」を提案する。
ニューヨーク拠点で創業は2016年。JPモルガン内のブロックチェーン研究グループを率いていた技術者、Stuart Popejoy (スチュアート・ポープジョイ)氏とWill Martino(ウィル・マティーノ)氏が独立してスタートアップした。ウィル氏は米証券取引委員会 (SEC) の仮想通貨運営会の創立メンバーで、テックリードを務めた経験も持つ。直近のシリーズBラウンドでVCなどから1200万ドルを調達している。
NodeTokyo編集部では日本市場参入にあたって同社にそのビジョンなどを伺った。(インタビュワー:増渕大志/構成・執筆:平野武士)
ブロックチェーンで実現するシェアリングエコノミーの可能性
Kadenaが提案する内容を社会実装という側面で表現してみたい。どういうビジョンをお持ちか
Kadena:Kadenaの特徴としてパブリック・プライベート両方のプロトコル提供があります。この2つを往来させることで、従来、企業がセキュリティなどの観点から外部に出すことができなかった情報を「資産」に変えてサービス化できる可能性が出てくるんです。これを社会実装する例としてシェアリングエコノミーへの適用アイデアをお話してみますね。
ところで米国で人気の Rent The Runway(RTR)ってご存知ですか?
ファッションレンタルですね。高級ドレスを所有から体験に変えた
Kadena:RTRのビジネスオペレーションには商品をドライクリーニングする工程があります。ユーザーがファッションをレンタルして返却したらその自社工場でドライクリーニングして次の注文に備えるというオペレーションサイクルです。これは彼らが自社で抱える北米一大きなドライクリーニング工場で行われているそうです。
考えてください。もし季節のトレンドなどで RTR の自社のドライクリーニング工場のキャパシティに余裕が出る時期があるとすれば、空いた時間ってもったいないと思いませんか?
確かに。しかし空いてるからといって他の企業に使ってもらうにはセンシティブな情報が多そうです。空いた時間が多ければビジネスに問題あるかのように思われてしまう(笑
Kadena:そこで登場するのがブロックチェーン、というわけです。もし RTR がこのライフサイクル情報をトークンもしくはスマートコントラクトとしてプライベートチェーン上で管理し、さらにパブリックチェーン上で幅広くAPIとして他の企業に提供すれば、安心して「眠った資産」をマネタイズすることが可能になります。
なるほど、シェア経済は確かに効率的ですが自社としては触れられたくない情報も含む。その安全性を担保してくれる
Kadena:「エンタープライズにおけるシェアリングエコノミー」は、今すでに注目されているオープンAPIの未来像でもあるんです。将来的に、パブリックブロックチェーンは企業が「仕組みのマネタイズ化」を行う手段として浸透していくとみて間違いないでしょう。
少し話を変えてウィルさんにKadenaの成り立ちについて聞きたい。そもそもPactなどを開発しようと思ったきっかけは?
ウィル:私のバックグランドで(SECやJPモルガンでの経験)、イーサリアムなどのブロックチェーンを実際に導入してみよう!ていうプロジェクトをいくつか担当していたんです。だからこそブロックチェーンが求められていることは知っていたし、特にエンタープライズ向けのプライベートブロックチェーンについてはニーズを感じていました。
ブロックチェーン市場、特に社会実装についてどのような見通しを持っているか
ウィル:結論から言えばこれから先、2〜5年以内にはブロックチェーンの社会実装が始まると思っています。特に保険業界や銀行などの市場での成長スピードは早い。けど、結局ユーザー視点で見たときブロックチェーンを一番実感できるのは暗号通貨で、実際にブロックチェーンが業界に実装され始めても、意識しない限りそこまで気が付くことは少ないと思っています。
確かに、インターネット世界でもこれがどこのブランドのクラウドで動いているかは気にしない
ウィル:ただ一つあるとすれば、ユーザーがある行動に対してインセンティブを受けられるまたは感じられる機会が増えるんじゃないかなと。インセンティブ面以外でいえば、あらゆる環境下でも個人の証明が簡単になると思います。もしかしたらそれが一番感じ取れるメリットかもしれませんね。
日本市場への参入について聞きたい。このマーケットをどのように見ている
ウィル:日本は実は独特な市場だと思っています。海外のエンタープライズ企業でも確かにプライベートブロックチェーンを一緒に実験してくれているところは多いです。だけど日本での例を見る限り、日本のエンタープライズは最初からパブリックブロックチェーンに移行することを前提としているんですよね。
これはKadenaのプライベートにもパブリックにも対応することができるアプリケーションとしては最高のマッチな気がしています。だから北米、ヨーロッパと拡大してきて、アジアでは真っ先に日本にくることに決めました。
具体的にどのような業界バーティカルに注目している
ウィル:これは日本に限った話ではないのですが、業界でいえばサプライチェーン、リテール、証券取引所、保険に注目していますね。
ありがとうございました。
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