ソニー・ミュージックエンタテインメントの「ENTX」が初デモデイを開催、アスリートらがファンから資金調達できる「whooop!」が最優秀賞に

by Masaru IKEDA Masaru IKEDA on 2018.12.17

<17日17時更新> KITERU by Spring of Fashion の一部内容を修正(青字部を加筆、破線部を削除)。

ソニー・ミュージックエンタテインメント(SME)は13日、同社初となるアクセラレーションプログラム「ENTX(エンタエックス)」のデモデイを開催した。ENTX では、SME の最大の強みである音楽やアーティストといった資産の活用を最前面には押し出しておらず、また募集テーマは「音楽」に限っていない。

今回は「インバウンド」「スポーツ」「シニア」「ヘルスケア」「教育」「飲食」「住環境」「地方創生」「テクノロジー」「空間」「アニバーサリー」「人材」などのテーマから参加チームが募集された。9月26日に開始された第1期にはスタートアップ7チームが採択され、通算で6回にわたるメンタリングセッションが実施された。

©️ Dentsu Inc. All rights Reserved.
Image credit: Masaru Ikeda

本稿では、第1期の参加した全7チームについて、デモデイでの登壇内容を中心にカバーする。

デモデイの審査員を務めたのは、

  • SME 代表取締役 CEO 水野道訓氏
  • SME CFO / コーポレートEVP 今野敏博氏
  • SME コーポレート EVP 関島慶典氏
  • SME コーポレート SVP 渡辺和則氏
  • SME コーポレート SVP 石川恵子氏
  • アーキタイプ 代表取締役 中嶋淳氏
  • タグピク 代表取締役 安岡あゆみ氏
  • バスケット代表取締役、ストライプインターナショナル CDO、エンジェル投資家 松村映子氏
  • 電通 CDC Future Business Tech Team 部長 事業開発ディレクター 中嶋文彦氏

各チームは、企画の魅力度(事業新規性、市場の魅力度、実現可能性の総合判断)、企画の爆発力(解決している課題の深さやインパクト、SME との相性、プログラムでの成長度合)を勘案し審査員の評価を受けた。

【最優秀賞】whooop! by ventus

副賞:100万円

whooop! は、スポーツチームやアスリートなどがファンから資金調達できるトレカ(トレーディングカード)の売買サービスだ。既存のファンビジネスは、マーチャンダイズや興行チケットなど〝モノの販売〟に終始しており、whooop! ではアスリートへの応援や感動を他のファンと共有したいという思いのマネタイズを試みる。

スポーツチームの選手を撮影したトレーディングカードを1枚300円で販売。どの選手のカードが当たるかわからないので、購入者は欲しい選手のカードが入手できるまで、そのチームのカードを買い続けることになる。この行為を通じて、購入者はチームの収入増に貢献できるとともに(カード価格の9割はチームに還元される)、自分のカードを欲しい選手カードを持つ他ユーザと交換可能。12月5日に開催された「芸能人女子エンタメ e スポーツクイーン決定戦」で、eQ.LEAGUE との連携を実施。

【優秀賞】Dive Japan by Realista

副賞:50万円

Dive Japan は、インバウンド観光客向けの旅行前情報を動画で提供。元来の旅行情報は圧倒的にテキストで提供されているものが多いのに対し、動画の持つ圧倒的な情報量の多さから、料理レシピと同じく旅行前情報も動画で提供されることが主流化するとの考えから、サービスが立ち上がった。現在、アジア言語を中心に5言語で60秒動画を提供し、多いものでリーチが40万人、再生数14万回に達したという。

メンタリングセッションを通じ、メンターからの知見を得て、さまざまな挑戦を実施したという。そのひとつがバーチャルガイドを使った旅先の案内だ。当面のビジネスモデルは動画広告による広告収入を考えており、Realista はENTX を通じて東京海上日動で提携し、東京海上日動の顧客から動画広告の受注が決まったという。

【審査員特別賞】HeY by Super Duper

日本に来たインバウンド客の帰国後の反応を見てみると、日本の食を楽しみたいとは思っていても、十分に楽しめずに旅を終えているケースが多くないという。飲食店などで仮にメニューが外国語に翻訳されていたとしても、その店ならではの売り商品、食べるべき料理がわかりにくいからだ。Super Duper はユーザ同士が食事した内容や順序をシェアできる、フードプレイリストサービス「HeY」を開発した。

HeY はいわば、メニュー版の Spotify だ。ユーザはひたすら食べ物の写真を撮影しアップするだけで、写真の EXIF タグを元にアプリが時系列に食べた内容をリスト化してくれる。作成されたリストは URL や QR コードで他の人と共有することができる。2018年6月にローンチし、すでに飲食店173店舗に関するリストが作成されている。インバウンド客のフィードバックを元にアプリを改善しており、将来は海外にも展開したいとしている。

以下は入賞しなかったものの、第1期に採択され修了したチームだ。

Cinemally by 奥野圭祐氏

「映画が好きか」との問いに「好きだ」と答える人は多い一方で、1年間に一度も映画館で映画を観ていない人は8,000万人に上る。このギャップについて100人にインタビューしたところ、「一緒に観に行く人がいない」「誘われたいが、きっかけがない」「誘われたら一緒に観に行きたい」という回答が多数を占めたそうだ。この結果をもとに「Cinemally」は映画鑑賞の誘われ待ち市場を形成しようとしている。

Tinder のように、興味のある映画を右方向にフリックすると、同じ映画に興味を持つ気の合いそうな相手を探すことができ、誘い、日程調整を行い、チケット予約までを行える。300人以上でクローズドベータテスト中。ユーザ向けのプレミアム課金、広告収入、複数の異なる映画やイベントチケットの統合管理機能などでマネタイズ。 東宝との版権交渉仲介などで ENTX の協力を得た。

Sports Monster by Fantamstick + NewPeace

3〜5歳のうちから子供にスポーツをさせると、身体的にも精神的も醸成にも繋がると言われる。親は子供にスポーツを習わせるため時間もコストも費やしているが、指導者が経験不足であったり、教えるプロフェッショナルではなかったりして、子供にとって機会損失に終わっているケースは少なくない。子供に満足なスポーツ習得環境を与えるには、特別な環境や指導者を持たない限り不可能なのが現状だという。

そんな環境においても、子供のモチベーションとレベル向上促せるようにと開発されたのが、AI トレーナーアプリの「Sports Monster」だ。子供の成長に合わせ、「基礎体力編」では AR で身体を動かすことの楽しみを、「競技探求編」ではメジャースポーツだけでなくさまざまなマイナースポーツをゲーミフィケーションで、「専門指導編」ではプロ経験者による60秒動画でレベルアップを図れる。マイナースポーツを普及させたいプロを指導者に招いている点が特徴。

Gridge by Gridge

自身をライブなど音楽活動を行う Gridge の籔井健一氏は、自分の音源を知人の映画監督が作品のエンディングに使ってくれたことをきっかけに、ファンが大幅に増えることを経験。コンテンツクリエイターが他ジャンルのクリエイターと関わることで、新しい価値が生み出されると考え、これを促進するクリエイター配信プラットフォーム「Gridge」をローンチした。ボディペインター、トライアルライダー 、イラストレータ、ミュージシャンなどが登録している。

クリエイターはコンテンツをアップロードやストリーミングでき、ユーザはそれらをギャラリー形式で楽しむことができる。特にジャンルをまたいだクロスカルチャーに注力しており、クリエイターにとっては通常とは異なるジャンルにアプローチできることで、それまで全く興味の無かった新しいファン層を取り込めるのが特徴。インディーズ界をスタートアップ化し、エンタメ経済を分散化するとしている。特に音楽とイラストの親和性が高いという。

KITEKU by Spring of Fashion

Spring of Fashion の「KITEKU」は、アパレルショップにある洋服をレンタルし、それを着たまま外出できるサービスだ。ユーザが気に入れば購入することもできるし、買わない場合はショップに返却することができる。ユーザは KITEKU 上で本人登録を行い、提携店舗の店頭では KITEKU から発行されたバーコードを提示することでサービスを受けられる。 Instagramer がいろいろな服を着て写真撮影できる一方、アパレルメーカー側には自社ブランドのインフルエンサーマーケティングができるメリットがある。

ENTX の協力により、SME グループ M-ON! Entertainment の andGIRL の読者モデルにアンケートを実施。また、大手ファッションブランドとも提携に至ったというとは現在商談中。KITEKU では、ファストファッションよりも、ラグジュアリーブランドを抱える大手アパレルと積極的に協業していきたい考えだ。今後、大手ファッションブランドとの PoC を経て、来年2月のβ版ローンチ、5月の正式版ローンチを目指している。ユーザが支払う料金は未定無料だが、クリーニングや破損が必要となった場合の料金はエアークローゼットをプライシングをベンチマークしているようだ。

ピッチ後に開かれた、参加チームの代表全員によるパネル
Image credit: Masaru Ikeda
ネットワーキング会場に飾られたプロダクトの紹介
Image credit: Masaru Ikeda

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