SBも認める「評価額7700億円企業」に初期投資、鈴木氏がジェネシアVへーー80億円ファンド新設、新体制でアジア投資を強化

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ジェネシア・ベンチャーズメンバー

ニュースサマリ:シード・アーリーステージのスタートアップ投資を手がけるジェネシア・ベンチャーズは12月24日、新ファンドとなる「Genesia Venture Fund 2 号投資事業有限責任組合(以下、2号ファンド)」の組成を公表した。同時に募集のファーストクローズも伝えており、集まった資金は45億円となる。ファンドの募集はこの後9月末まで続き、ファイナルクローズ時点で80億円規模を予定している。

2号ファンドの出資社はみずほ銀行、みずほキャピタル、東急不動産ホールディングス、丸井グループ、ミクシィ、JA三井リースほか、非公開の国内企業および機関投資家。なお、1号ファンドでは国内35社、海外12社への投資を完了している。

また同社はこれに合わせサイバーエージェント・ベンチャーズ(以下、CAV)でインドネシア中心に投資活動を手がけていた鈴木隆宏氏が新たなジェネラル・パートナーとして参加したことも公表した。ジャカルタに駐在事務所を準備中で、東南アジア全域への投資活動拡大を加速させる。

ジェネシア・ベンチャーズGPに就任した鈴木隆宏氏

話題のポイント:CAVマフィアが平成の終わりに新たな門出を発表しました。鈴木さんはジェネシア・ベンチャーズを創業した田島聡一さんがCAVの代表を務めていた時からのメンバーで、長年インドネシアに駐在して黎明期の東南アジア・スタートアップの支援をしてきた人物です。既に日経やTechCrunchが報じてるファンド組成のニュースにソーシャル上では多くの友人知人から祝福のメッセージが溢れていて、彼の人望や再出発への期待を窺い知ることができます。

先日、帰国した際に少し話を聞いたのですが、2011年頃から開始した投資事業で手がけた案件は最終的に15社ほど(ほぼ全て海外)で、年間に1社から2社しか投資しない丁寧な伴走タイプです。

もちろん実績も十分で、特に有名なのはインドネシア初のユニコーン、Tokopediaへの投資が挙げられます。おそらく国内では今年11月、ソフトバンクのビジョンファンドを通じて10億ドル規模の投資を受けたことでご存知の方もいらっしゃるかもしれません。現在の評価額は70億ドル(110円レートで7700億円規模)、CB Insghtsのランキングで世界27位につけている注目株です。

このTokopediaにいち早く着目し、シード期で10名ほどしかいなかった同社に投資をしたのが鈴木さんなのです。(因みにその当時の所属先、CAVの代表は田島さんです)

鈴木さんのお話だと、当時の東南アジアはまだエコシステム自体が未熟で、このステージの企業が出資を募ってもエンジェルなどを中心に1000万円程度しか集まらなかったそうです。それに対してCAVではこの時期のTokopediaに日本円で7000万円の投資を実施しました。

資金集めに奔走させることなく、市場が成長期に入るかどうかという絶妙のタイミングで大きく出資することで、Tokopediaは日本で言えば楽天のような存在感を放つことに成功したのです。

写真右から:鈴木氏とTokopedia創業者のウィリアム・タヌウィジャヤ氏、メンバー

鈴木氏は引き続きインドネシアに駐在し、今度はジェネシア・ベンチャーズのGPとして投資に当たります。ジェネシア・ベンチャーズは基本的に投資ラウンドのリードを取るポリシーを持っていますが、さらに伴走タイプらしく、成長に合わせた追加投資をしっかりとやりたいと今後の投資方針を話していました。

鈴木さんの話で興味深ったのはやはり東南アジアのスタートアップ・エコシステムの話題ですね。彼らはシリコンバレーを向いている日本とは異なり、中国を参考にして成長したそうです。2010年当時、インターネット・インフラが劇的に悪かった東南アジアではモバイルインターネットが急速に立ち上がり、特に2013年からは中国の格安スマホ(小米など)の影響でPCよりスマホが先に整備されるという状況があったとか。

スタートアップ投資がマーケットドリブンであることを改めて思い知るエピソードです。

鈴木さんによれば、こういった違った成長過程で生まれたマーケットにはビジネスモデル自体、日本とは異なるアイデアが生まれる可能性があると言います。確かに仮想通貨やブロックチェーンのような新たなインフラやビジネスモデルの場合、国によって成長速度に違いが生まれることが確認できています。

この違いを日本にうまくフィードバックしたり、ジェネシア・ベンチャーズに出資をしている大手企業と連携させるオープンイノベーション的な動きも考えているということでした。

長年ジャカルタに在住してすっかりと「アジア人」になっていた鈴木さんが今後、どういったベンチャーキャピタリストになってインパクトある経済活動を生んでくれるのか、楽しみに次の報告を待ちたいと思います。

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