野菜生産から配達まで一貫「野菜スーパー版D2C」Bowery が9,000万ドルを調達

by Takashi Fuke Takashi Fuke on 2018.12.25

ピックアップ: Bowery, an indoor farming startup, raises $90 million more, including to counter a SoftBank-funded rival

ニュースサマリー: 都市近郊で屋内農業を営む「Bowery」が9,000万ドルを調達した。発育状況を自動モニタリングで随時確認、従来の農家プロセスより早いスピードで栽培から収穫までを行えるスマート農業を確立。

遺伝子組換え種子を扱わず、屋内栽培のため害虫スプレーも使用しない。各品目に最適化されたLEDライトおよび栄養分を充分に含ませた水を使用し、育成スピードを通常より早くさせることに成功。モニタリングデータをフル活用しながらライトや水分量を調整。従来の農業と比較して95%使用水分量を削減させている。

現在ニュージャージー州の2つの倉庫で野菜を栽培し、ニューヨーク州へ出荷する。都市近郊に拠点を置くことで物流コストを抑え、かつ新鮮な野菜を消費者へ届ける。競合にはソフトバンクが出資したAI屋内農業を営む「Plenty」が挙げられる。

話題のポイント: 都市農業の最大のメリットは物流コストを下げられる点にあります。参考スタートアップとして「Good Eggs」を挙げさせてください。

同社は地元のオーガニック食材を当日もしくは翌日配達するサービスを展開。既存の小売チェーンでは地元の食材を使っている比率が一桁台。Amazonに買収されたオーガニックスーパー「Whole Foods」ですら地元食材の販売率は20%前後であるとのこと。一方のGood Eggsは85%を占めています。こうした”超地元志向”のデリバリーサービスを通じて、新鮮なオーガニック食材しか口にしたくないコアファンを獲得してきました。日本で例えると、少しお金を出してでも成城石井で食材を購入する顧客層に通じるものがあるかと思います。

さて、地産地消は響きが良いですが拡大戦略が非常に難しく、2015年には経営が大きく傾いています。地元農家から食材を仕入れて当日に出荷するオペレーション構築の難易度が高かったのです。しかし2016年には立て直して再度全米展開へと舵を切り、1,500万ドルの資金調達を達成しています。

Good Eggsの競合優位性は配達網にあります。地元食材に特化していることから、他社と比べて配送センターや在庫倉庫への集荷および顧客宅への配達コストを下げられます。

ここでBoweryの話題に戻りましょう。同社のターゲット顧客もGood Eggs同様に新鮮な野菜を欲するオーガニック志向の顧客層です。都市近郊に農場場所を集中させていることから配送コストの削減にも成功できるでしょう。加えて全米では人口の都市集中化が進んでいることから市場規模は年を追うごとに大きくなることが予想されます。この点、野菜生産から配達までを一貫して行う「次世代小売事業者」へと大きく成長するポテンシャルが垣間見えます。「野菜スーパー版D2C」とも言えるかもしれません。

未だにデータドリブンな都市農業は発展途中でありながら、ブレークスルーを抜けて農場規模を拡大できれば大量生産・一括出荷・効率配達により販売価格を圧倒的に下げられるはずです。サプライチェーンに一貫性を持たせることで、既存スーパーに勝てる高い競合優位性を持てる可能性が見えます。

ここで重要なのは、単なる農業効率化が進んでいるのではなく、大手スーパーチェーン「WholeFoods」や「Blue Apron」に代表される食材配達サービスに対抗する新興サービスが登場する兆しがあることを認識しておくことでしょう。

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