CCCが「T-Venture Program 2018」の最終審査会を開催、マンガのクラウドソーシング翻訳アプリ「ToryComics」など3チームが入賞

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TSUTAYA を展開する CCC(カルチュア・コンビニエンス・クラブ)は5日、スタートアップ育成支援プログラム「T-Venture Program 2018」の最終公開審査会を都内で開催した。

今期バッチでは8月1日~9月14日に応募が受け付けられ、一次審査に進んだチームが11月1日~12月4日の約1ヶ月半にわたり連携プランをブラッシュアップ。この日の審査会では、二次審査を通過した7チームがファイナリストとして登壇した。価値創造、成長性、ブランディングなど4つの要素について審査員が採点し、入賞スタートアップ3社が選ばれた。

募集領域は TSUTAYA・蔦屋書店・T-SITE などのプラットフォーム、プラットフォームを通じたライフスタイル提案のコンテンツ、プラットフォームやライフスタイルコンテンツから得られるデータを活用したデータベースマーケテイング。業態・業種、法人・個人、年齢・国籍などは問わず、MVP などの無い企画段階のプロジェクトも募集対象とした。

このプログラムでは、通常のインキュベーション・プログラムなどと異なり、運営主体である CCC とのシナジーが見出せるか、コラボレーション内容を提案できるかどうかも審査の上での重要ポイントとして評価される。

審査員を務めたのは、

  • 増田宗昭氏 カルチュア・コンビニエンス・クラブ 代表取締役社長兼 CEO
  • 武田 宣氏 CCC デザイン 代表取締役社長兼 CEO
  • 中西一雄氏 CCCエンタテインメント 代表取締役社長兼 COO
  • 北村和彦氏 CCC マーケティング 代表取締役社長
  • 谷川 じゅんじ氏 CCC クリエイティブ 代表取締役会長兼 CEO
  • 漆紫穂子氏 品川女子学院 校長
  • 白砂 晃氏 CCC フォトライフラボ 代表取締役社長兼 CEO
  • 吉村 毅氏 デジタルハリウッド 代表取締役社長兼 CEO

【CCC 賞】ToryComics by ToryWorks

副賞:T-Point 100万ポイント

ToryWorksToryComics は、マンガをユーザがクラウドソーシング的に翻訳できるモバイルアプリだ。ある言語でマンガが出版されても、翻訳するコストが多額となるため世界展開が難しい。ToryComics を使えば、ユーザはマンガを見ながらスマホの画面上で吹き出し部のセリフを母国語に翻訳し、完成した後に世界に向けてパブリッシュすることが可能。原作者や ToryComics が著作料や手数料を手に入れられる以外に、翻訳者も収益の一部を受け取ることができるという。

現在13言語142カ国で使えるが、1年間ほどインドネシアでテストマーケティングした結果、ユーザを50万人獲得できたという。1年後の2019年11月には18言語200カ国で使えるようにする計画で、ユーザ獲得目標は300万人。CCC との協業では、T-Point を ToryComics で鑑賞できるコインに両替できるようにしたり、Tsutaya Premium の会員に ToryComics を読み放題にできたりするプランを提案。将来的には、CCC 関連会社からの作品配給や日韓協同コミックの製作を希望している。

【優秀賞】Wall Share by 180(ワンエイティー)

副賞:T-Point 50万ポイント

壁への落書きは違法なもので、中には通行人や住民を不快にさせるものもあるが、所有者の許可を取って、アート性の高いものを掲出することができれば、ビジネスとしての価値を創出することができる。180 は、いわゆる落書きがパリでは街の重要な雰囲気を形成していたり、香港では来客効果をもたらしていたりすることにヒントを得、壁主・アーティスト・広告主をマッチングすることで、観光客をターゲットにした広告ビジネスを展開しようとしている。

壁に描かれた落書きのストーリーと、その描かれている場所がわかるモバイルアプリ、空き壁主とアーティストをマッチングさせ壁に広告を出稿できるマッチングアプリを企画。空き壁主とアーティストのコラボレーション、広告出稿、有料アプリ配信、物販などでマネタイズを狙う。CCC とは専門誌「美術手帖」の広告協同営業、CCC マーケティングとスタンプラリーの実施によるマーケティング DB 構築、銀座の蔦屋書店でのアートアワードの開催などを希望。空き壁の確保で、神戸市から協力を獲得している。

【TVP 賞】CAMETIS(ケメティス) by 開成高校

副賞:T-Point 6万ポイント

CAMETIS は、小・中学生向けのピアノ練習を始めとする音楽教育を身近にするモバイルアプリだ。ピアノは現在でも、小・中学生の習い事で常に上位にランクされるが、自己学習する際に先生がいない、指摘された内容を正しく把握できないなどの課題を感じているという。そこで、CAMETIS では、ユーザの演奏を録音し間違いのある部分を指摘して集中的に練習できるようにする機能、先生の指摘を紙の譜面上に書き取るのではなく、指摘内容をデジタル表示された譜面上に整理した状態で共有できる機能を提供する。

著作権法上、問題の無いクラシック音楽のスコア配信に特化するようだ。無料ユーザは、当該楽曲のサビの部分だけを練習することができる。ユーザが気に入って全曲を通しで練習したくなったら、パッケージ購入してもらうというビジネスモデルだ。子供人口は減少傾向にあることから、ユーザには高齢者のほか、中国の小・中学生もターゲット視野に入れている。CCC との連携では、CCC が Mistletoe と展開する「T-KIDS シェアプログラム」に、次世代の音楽教育方法として採用を希望している。

以下は、入賞しなかったものの、今バッチに採択されピッチ登壇したスタートアップの方々。

マンガ教育プラットフォーム by 田中裕久氏

田中氏は長年にわたり、日本や中国でマンガ志望者に教鞭をとる立場にある人物。同氏によれば、中国人でもマンガを教われば、画力は問題ないレベルにまで成長するが、ストーリー展開のレベルはそこそこで、企画レベルは高くないのだという。その理由は、日本ではマンガ家と編集者が何度となく打ち合わせを重ねた上で、ストーリーを壁打ちした後マンガの作成に着手するのに対し、中国にはプロのマンガ編集者が不在であるため。その他、マンガ家を育成する機会の不足、マンガ家と編集者が出会う機会が無いなどの課題がある。

田中氏は中国向けのオンラインのマンガスクールを開設し、中国の地方にいるマンガ家やマンガ家志望者を発掘し育成したいと考えている。同時に、持ち込み原稿や投稿が評価できたり、自分でもネームを切れたりするプロの編集者が必要なので、編集者育成もマニュアルも輸出したいという。CCC とは、漫画投稿サービス「マンガハック」、TSUTAYA CREATORS’ PROGRAM、デジタルハリウッド、T-KIDS シェアスクール、中国の蔦屋店舗とのコラボ企画などを希望している。

COZRE by コズレ

COZRE は、子育て世代の夫婦むけのライフスタイル提案プラットフォームだ。出産予定日や誕生日など親と子供の個人情報をはじめ、600ジャンル以上で年間250万件以上の回答を集めており、定性的かつ定量的なデータベースを構築し、ユーザに対して子供の月齢に応じ、どのタイミングでどのような情報やモノが必要かを予測し、レコメンド提案して課題解決できるサービスを提供している。

CCC と組むことで、子供情報に対して TID を付与し、生まれてくる子供を0歳の段階から T カード会員にすることを提案。また、COZRE が持つユーザの月齢データに CCC のライフスタイルデータベースを掛け合わせることで、夫婦のライフスタイルに合わせた子育て商品の提案ができるようになる。親であるユーザが他の親にも役に立つ情報を COZRE 上で提供した際に、子供の T カードにポイントを付与するなどの企画も検討できるとした。

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SELF by SELF

SELF は、企業と消費者が会話を通じてエンゲージメントを高めることができる「会話型 AI」だ。情報過多の状態にある昨今に置いて、SELF は web サイトやモバイルアプリ上にボットを設置することができ、ユーザとの会話を通じて、ユーザの価値観、生活環境、趣味嗜好、感情変化などを把握。ただ情報を収集し並べて提示するだけでなく、ユーザが欲する形に〝料理〟して届けることにより、ユーザがその情報を受け入れやすくする効能が得られる。

CCC との連携では、CCC マーケティングが持つ購買データと、SELF が持つ会話型 AI 技術を組み合わせることで、より効果的な購買誘引やマーケティングが可能になると説明。T-Point アプリに導入することで、購買データをやユーザ属性から行動パターンを計算し、リサーチが可能になるとした。一例としては、30代の既婚男性が自宅の最寄りのコンビニでいつもより早い時間帯に購買行動を起こしたとき、ボットがその男性が家族と時間を楽しんでないと答えると、家族と楽しめる DVD の鑑賞をレコメンドしてくれる。

teplo by LOAD&ROAD


LOAD&ROAD は、スマートフォンと連携し、お茶の種類に応じて最適な状態でお茶を淹れてくれる IoT スマートティーポット「teplo」を開発。また、ユーザの脈拍数や指の体温、温度・室温・騒音状態を検知しデータ解析することで、その環境下でユーザに最適な状態でお茶を淹れてくれる。ポットの販売と茶葉の販売でマネタイズし、日本とアメリカをターゲット市場に位置付けている。

CCC との協業では、店舗でのハードウェアのポップアップ販売、量産開始後の蔦屋家電での販売、T-SITE 内カフェで同社の茶器を使ったお茶の販売などを希望。T-Point データベースから消費者の属性に応じた購買データをもとに、teplo のレコメンデーション精度の向上、また、消費データをもとに T-Point 加盟各社は製品開発への応用が可能としている。

STOCK POINT by STOCK POINT

STOCK POINT は、ブロックチェーンベースで株価連動型のポイントシステムを展開している。ユーザは買い物で溜まるポイントを STOCK POINT で得られると、その STOCK POINT と連携する株価(購入した商品のメーカーの株価など)の上昇に合わせ、STOCK POINT(銘柄毎)の量が増える。STOCK POINT のポイント量がその銘柄の1株以上になれば、ユーザは株式と交換し、その企業との株主になることができる。ユーザは自分が応援する企業の商品やサービスを購入することで、結果的にその企業の株主になることができ、企業は自社のファンを増やすことができるわけだ。

今後、STOCK POINT では株式市場とは連携しない、仮想通貨を使ったコミュニティ経済の形成も視野に入れている。STOCK POINT の既存サービスでは上場銘柄のみが対象になるが、この新しいコンセプトでは、興味・対象単位の各コミュニティが独自トークンを発行できる C2C 投資プラットフォームを構築する。その各経済圏(コミュニティ)が大きくなれば、各仮想通貨のホルダーはキャピタルゲインを得られる。当該の C2C 投資プラットフォームには、コミュニティ活性化ツール、集客プロモーション機能、企画アイデア募集ツールなども備わっており、同社はこの領域で CCC との協業を希望している。

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