ClearMotion、シリーズDラウンドで1億1,500万米ドルを調達——車の乗り心地を良くする「デジタルシャーシ」の開発を強化

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マサチューセッツ州の企業 ClearMotion は標準的な自動車の衝撃吸収技術をソフトウェアと専用のハードウェアを組み合わせたものに変えたいと考えており、ニューヨークを拠点とする投資会社 Franklin Templeton がリードするシリーズ D ラウンドで1億1,500万米ドルを調達した。また Microsoft、Bridgestone、Qualcomm、World Innovation Lab、NewView Capital、Eileses Capital、そして「J.P. Morgan Asset Management から勧められたクライアント」もこのラウンドに参加した。

2009年に設立された ClearMotion は同社が「世界初のプロアクティブライドシステム」と呼ぶものを開発している。これは本質的には従来の自動車のサスペンションを再考しようとするものだ。道路の状況を予測して1秒未満で自動車が反応できるようにすることで最高の乗り心地を保証するものであるとボストンに拠点を置く同社は述べた。

この「デジタルシャーシ」はそれぞれのホイールに取り付けられた4つの電気油圧式「アクティバルブ」からなり、分析や後日の修正のために道路のデータを収集してクラウドに保存する。「デジタルシャーシ」は運転者の行動によるリアルタイムな入力キューを使うことに加え、HD マップやアルゴリズム、そして多くのビッグデータを使い、道路の状況を学習して適応する。

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ClearMotion: Data

くぼみキャンセリング

ClearMotion がよく言うのは、音声に対してノイズキャンセリング技術がしていることを、動きに対して同社の技術がしているということだ。実際これは、同社が2017年に Bose のビジネスの一部を買収したことを考えれば、非常に適切な比喩である。

偶然にも同じくマサチューセッツ州を拠点とする Bose はスピーカーやヘッドフォンでよく知られているが、以前は磁石やモーター、ソフトウェアを活用し自動車が路上の隆起に素早く反応できるようにする技術を開発していた。この技術はスケールの面で自動車分野まで届かなかったが、Bose はその後2010年の新たな Bose Ride ビジネスユニットの一部として、凸凹道を走るトラックドライバーの苦痛やストレスを緩和するためにその技術を一部のトラックに導入した

Bose のチーフエンジニア Mike Rosen 氏は当時こう説明していた。

トラックが道路のくぼみの上を走ると、運転席の床面が下方へ加速し Bose Ride がそれを検知します。コンピュータはリニアアクチュエータに上向きの力を発生させるように指示し、運転手が快適にくぼみを通過できるようにします。反対に上向きの力がかかれば、アクチュエータはトラックの床面と共に座席を下げるように指示し、運転手の高さを一定に保ちます。

2017年11月に ClearMotion は「モビリティにおける運動制御のリーディングカンパニー」を目指し Bose Ride が保持する300件以上の特許と共に同部門を入手したと買収後の声明で述べた。ClearMotion は今日では世界中で申請中のものも含めて1万件の特許請求を保持しているという。

同社は以前にも1億5,500万米ドルを調達しており、今回の1億1,500万米ドルと合わせて今後の繁忙期に向けて技術を準備する予定だ。すでに委託する生産設備を持っており最初の自動車メーカーのために準備が整っているとしているが、顧客の名を挙げることはしなかった。またデータサイエンスと機械学習のチームを拡大するとも付け加えた。

ClearMotion の CEO 兼設立者 Shakeel Avadhany 氏は VentureBeat にこう語った。

1980年代に始まった OEM(original equipment manufacturers)は、「プロアクティブライド」がしていることを実現させようと多くのソリューションを試してきました。実に40年間と数十億米ドルを費やしましたが残念ながらあまり成果はありませんでした。その理由は、エネルギーや重量、コスト、そして「度肝を抜く」ような要素のために、解決が非常に困難な問題だからです。昨年に弊社製品の最初の公開テストを行ってから、すぐに OEM から市場が盛り上がったのが分かりました。彼らは問題を抱えており、このソリューションに大きな価値を見出しています。

自動運転技術

ClearMotion の技術は、人間が運転する自動車へもっと直接的に応用されるようになり、車酔いを緩和したり、より快適な乗車体験を可能にしたりするだろう。だが自動運転車(AV)産業の急激な発展はさらに加速しており、ClearMotion のスマート技術の需要が特に高まるかもしれない。

Avadhany 氏はこう付け加えた。

ClearMotion は最初は現代の自動車市場に乗り込むつもりですが、AV へのアプリケーションも大量にあるのは明らかであり、弊社はそれについて議論を続けています。これはあらゆる自動車メーカーが今日製造しているすべての自動車に関連した問題です。そして同じくらい重要なこととして、彼らは自動運転の未来について考えています。

自動車が単なる交通手段から人々が眠ったり仕事をしたりする移動式の居住空間へと進化していくにつれて、おそらく乗り心地の穏やかさはさらに重要な問題となるだろう。

実際に自動運転車は乗り物酔いの増加という思わぬ副産物を生み出すかもしれない。人々がだんだんと乗客という身分になっていくにつれて、自動車の内装は再デザインされることになるかもしれない。座席が後ろ向きになったり、横向きということもあるかもしれないが、そういった座席の向きは乗り物酔いを増加させるということはよく知られている。同様に、乗客が仕事や映画鑑賞に集中するにつれて、道路からの干渉を受けないようにし吐き気を抑えるにはよりスマートなくぼみキャンセリング技術が必要とされるかもしれない。

Avadhany 氏はこう続けた。

弊社はタイヤから人間へという道路とのアナログなつながりをデジタル化するために、ソフトウェアとハードウェアのソリューションを開発しています。人々が都市や近郊を移動するためのモビリティの選択肢が変わっていく中で、乗り物の中で過ごす時間の質の重要性は、運転手と乗客の両者にとって次第に上昇しています。

ClearMotion の技術が公の舞台に姿を現すのはいつ頃だと期待していいのか、同社は期限を明確にしていないが、少なくとも1つの「一次請け」のパートナーシップを確保しており、2019年内に製品を出荷できる予定だと述べた。

【via VentureBeat】 @VentureBeat

【原文】

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