行政手続を「イマドキの使いやすさ」に変えてくれるグラファー、インキュベイトFなどから1.8億円調達ーー法人印鑑証明をクレカで取得可能に

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ニュースサマリ:行政手続のオンライン効率化を手がけるグラファーは1月21日、500 Startups Japan、インキュベイトファン ド、および個人投資家を引受先とする第三者割当増資の実施を公表した。

修正と補足:今回の資金調達はJ-KISS(新株予約権)による実施で、初出の第三者割当増資とは違う手法でした。また、今回のリードインベスターは500 Startups Japanが務めるそうです。事前取材でお伺いしていた内容と異なる旨、連絡ありましたのでこちらに補足させていただきます。

調達した資金は総額で1億8000万円。出資比率や払込日などの詳細は公開されていない。資金はサービス開発に向けた組織強化に使われる。また、同社はこれに合わせ、法人の印鑑証明をオンラインでより便利に取得できる「Graffer法人証明書請求」を2月5日から開始することも伝えている。

法人印鑑証明書は従来からもオンラインで取得可能だったが、対応するブラウザなどの制約が多く、専門とする士業の事業者が主に利用する「プロ向け」のサービスだった。グラファーでは専用のソフトを不要にし、クレジットカード決済で利用可能にした。但しこれまで通り電子証明の取得は必要になる。

話題のポイント:法人を持っている人、もしくはそれに関するバックオフィスなどの業務に携わっている方であれば「おっ」と思うサービスではないでしょうか?グラファーさんが手がけているのはオンラインでの行政手続きを「イマドキのユーザー体験にする」サービスです。

法人印鑑証明や登記簿謄本などを取得する場合、これまでだと法務局などの役所に行くか、オンラインもしくは郵送で送付依頼する、または代行業者にお願いするという手法がありました。私も忘れた頃にこれらの証明書を取る必要が出てくるので、その都度行政書士の先生にお願いしたり、自分で法務局まで行って取っていました。年に数回しかない人であればそれでも問題ありませんが、この回数が増えてくると面倒です。

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電子証明証の取得は鬼門

そこでオンライン取得が候補に挙がるのですが、これがやや面倒なのですね。特に法人の電子証明の取得と支払いが鬼門で、おそらくカジュアルにオンラインで取れると思った人は間違いなくここで挫折することになると思います。まあ、法人証明はそう簡単にセキュリティ破られても困るのである程度のハードルは必要なのですが、グラファーさんが開発するのが主にこの2点のペインを和らげるサービス、というのが正しい説明になると思います。

印鑑証明は2月5日公開ということでまだ使えないのですが、公開されている「登記簿謄本」の取得についてはいたって簡単です。GoogleやLINEアカウントでログインし、取得したい会社名を検索、あとは通常のECと同じようにクレカ決済すれば送付してくれます。PDFであれば即日ダウンロード可能です。便利。現在準備中の法人印鑑証明でもまず、登記簿同様にクレジットカード決済で取得が可能になるようになるそうです。続いて、前述の鬼門だった電子証明についても専用ソフトをインストールしないで取得ができるようなインターフェースを開発中とのことでした。

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公開済みの登記簿謄本取得サービス。筆者の会社も検索ですぐ出てきました

では、この仕組み、どのように作られているのでしょうか?もちろん気になるのは、これができるのであればウチでも、という後続組が出てくることです。思えば人事労務をクラウド化させた「SmatHR」が大きく注目された後、似たようなサービスが結構出てきたことは記憶に新しいです。

ということで同社の代表取締役の石井大地さんに伺ったところ、別に新たに行政が公開したAPIを叩いてるわけではなく、あくまで既存の行政ウェブサービスをベースに新しいユーザー体験を「被せて」作るという、やや難しい開発を手がけているというお話でした。また、オペレーションについても独特で、これまで先行で公開しているサービスなどでノウハウを貯めており、そのアドバンテージが強みになるということも付け加えられてました。

また、もう一つ気になるのが「スタートアップのビジネスモデルとしてのスケール感」です。便利だと言っても印鑑証明や登記簿謄本を取得するのは一部の事業者に限られます。また、当然ですが手数料モデルですので大量のトラフィックを裁かなければなかなか商売にはなりづらいわけです。さらに付け加えると既存のサービスがあるわけで、わざわざこちらにスイッチする理由は薄いかもしれません。

これについて尋ねると、そもそも行政手続って全国で4万6000種類もあるそうなのですね。もしこれらを全てカバーできればそれなりのトラフィックになりそうですし、一気に作ってしまうという点で言えば「スタートアップらしい」スタイルです。また、行政側も郵送やオンラインで手続されたものについては、窓口ではなく民間業者に一括委託して処理してもらっているらしく、窓口業務を減らす意味で彼らのサービスには注目しているというお話でした。

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グラファーチームのみなさん

グラファーの設立は2017年。元々医療系サービスを手がけるメドレーで執行役員を務めた石井さんが、その後投資会社を経て創業しました。今回の調達ラウンドに入っているインキュベイトファンドのGP、村田祐介さんが「行政テック(GovTech)に注目している」ということから協力して試作サービスを作り、利用者反響が大きかったことから拡大を目指すことになったのが「Graffer」のサービス群です。

また、石井さん自身も、父親が公務員だったことから行政手続の面倒さを子供心に記憶しており、ここにテクノロジーによるチャンスが眠っていると直感的に気がついたのも手がけるきっかけになったとお話されていました。

現在10名前後の若いチームですが、わかりやすいペインとハードルがある市場だけに、新しいトレンドを生み出してくれそうな予感がします。

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