バイクライダーのヘルメットを〝走る屋外広告〟に変える「Helmad」——オランダ人起業家がインドネシアで見出したソーシャルインパクトとは?

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Helmad 創業者の Michael Hendriks 氏

2015年、Michael Hendriks がツアーでジャカルタを訪れた際、彼はあるコワーキングスペースのブレーンストームルームに一晩引きこもることに決めた。その部屋は、ホワイトボードが一つあったのと、音楽が流れていただけのシンプルなもの。彼は心から愛する国インドネシアの、何百万人もの人々の生活を変えるかもしれないコンセプトに取り組んでいた。

彼はプロトタイプを作りよりもまず、友人を一人招いてその製品にフィードバックをもらうことにした。彼は何時間もの議論とやりとりの末、ホワイトボードをキレイに拭き、ヘルメットの画と広告を隣り合わせに描いた。イノベイティブな製品「Helmad」が生まれた瞬間だ。

Hendriks 氏は私に、次のように語った。

オランダから飛び立ち、観光客として多くの街を訪れた後、2015年初めにジャカルタに到着した。3億人近い人々がいて、急速に経済が成長するこの国の可能性を目の当たりにすることになった。

個人的には、ジャカルタのことをいつも故郷のように思っている。その文化、にぎやかさ、人々、ざわめき、交通渋滞までもそうだ。

数年に及んだ研究の末、Hendriks 氏は2018年に Helmad を始めた。彼のプロダクトは、ブランドにヘルメット表面で宣伝する方法を提供するとともに、バイクに乗っている人が1キロ走るごとにポイントがもらえる仕組みを提供する。言いかえれば、Helmad は人々がバイクの運転の際に着用を義務付けられる道具を、動くビルボードに変えてしまうわけだ。

ジャカルタについて約4年後に、このようなことをしているとは想像し得なかった。私は交通渋滞を新たなマーケティングマシンにしたいと考えている。でも、よりよい、安全で、人気が得られる環境づくりに貢献することは意義深いと感じている。

Helmad は、ある面で新しいマーケティングチャネルであり、またある面でソーシャルインパクトを創出すると、Hendriks 氏は説明する。

Helmad はブランドがメッセージを街じゅうに広められる方法を提供するとともに、学生がお金を稼いだり、インセンティブを受け取ったりすることを可能にする。

Helmad という風変わりな名前は、「ヘルメット(helmet)」と「広告(ad)」を組み合わせたものだ。とてもシンプルなので覚えやすく、そして奇妙な響きでもある。奇妙な名前は都合が良い。名前を好きになってくれる人もいれば、そうではない人もいるだろう。でも、それによって、人々は Helmad について話をし始めてくれる。(笑)

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Helmad の使い方

Image credit: Helmad

ドライバがサインアップすると、GPSトラッカーが内蔵されたヘルメットを受け取った後、特定の顧客広告キャンペーンが割り当てられる(学生にも参加してもらうために、Helmad はポイント特典に加え12ヶ月間の基本的な保険を無料で提供している)。キャンペーン期間中、ヘルメット表面にマーケティングメッセージがに残るよう、ヘルメットのデザインは広告主と協力してデザインされる。

キャンペーン期間中 Helmad は広告主に対して、キャンペーンの進捗状況をリアルタイムで報告、継続的な支援を提供する。キャンペーン期間中にも広告主はマーケティング計画を変更することができる。キャンペーン終了時にヘルメットは更新または交換されるため、ドライバは次の新しいブランドのキャンペーンに着手することができる。

ドライバ(学生)は、Helmad のアプリを使って、自分がどれだけ走ったか、どれだけ稼いだかを常に確認することができる。Helmad は今後、このアプリをドライバのお金を節約・管理できる金融プラットフォームへと変化させたいと考えている。

1ヶ月間または3ヶ月間のキャンペーンを割り当てられた段階で、ドライバには12ヶ月分の保険契約が適用され、誰もが保険範囲を知ることが可能だ。保険については、手頃な生命保険と多くの機能やメリットを提供してくれるパートナーと協業しており、そのほとんどの保険メニューは、使いやすいアプリを使ってユーザ自ら保険ポリシーをアップグレード/ダウングレードすることができる。(Hendriks 氏)

Image credit: Helmad

Helmad は現在のチーム構成で、そのビジネスモデルにフィットするマーケティング予算の都合から、より大きなブランドを広告主に迎えることに特化している。

インドネシア、中でも特にジャカルタで、アクティブなキープレーヤーの数社に Helmad をピッチしてきた。広告主が希望するキャンペーンの長さ、参加してもらうドライバの人数、予算に応じてカスタマイズしたキャンペーンを提供できる。見込客の半分以上が、2019年にキャンペーンを開始することに関心を示している。

しかし、Helmad はサービス対象を大手ブランドのみに限定しているわけではない。

このシステムが素晴らしいのは、サービス規模小さくできる点だ。中小企業にも興味を持ってもらえるだろうし、料金が手頃だと思う。

新アルバムをリリースするアーティスト、封切が近い映画、イベントについて考えみてほしい。インドネシアの政治にも大きな事業機会が考えられる。私が誇りに思うプロジェクトは、次の大統領選に他ならない。現時点ではこの件について多くの情報を開示できないが、大きなソーシャルインパクトをもたらせることを楽しみにしている。

Image credit: Helmad

市場調査ポータルの Statista によれば、インドネシアにおける2015年の広告市場規模は23億6,000万米ドルで、2019年には32億3,000万米ドルに達する見込みだ。この数字には、電話帳、雑誌、新聞、屋外広告(OOH)、ラジオ/テレビなどのオフライン広告メディアだけでなく、デスクトップ/ラップトップ、モバイルなどのインターネット接続デバイスといったオンライン広告メディアも含まれる。屋外広告の市場シェアは全広告市場規模の29〜30%になると見られ、これはすなわち、9億3,300万米ドルに達することを意味する。

屋外広告の成長は、(広告市場全体の)年間成長と同じ規模だ。我々 Helmad は、特定の市場が屋外広告をもっと多く、オンライン広告をもっと少なくしたいと考えるキッカケを与えられると考えている。

インドネシアは常に Hendriks 氏のターゲット市場であるが、近隣市場の可能性の模索を怠っているわけではない。

経済が急成長しているベトナム市場で事業機会を見つけるべく、ベトナムの企業ともすでに話をしている。その後には、フィリピンなどの多くの国々が続くことになるだろう。新たな夢を実現できるだろうが、現在はまずインドネシアに特化する必要があると考えている。

Helmad は創業当初、多くの困難に直面した。インドネシアの最低賃金と比較しないまま、広告主の料金とドライバの報酬額を決めたのは間違いだったという。

Helmad を始める前、Hendriks 氏はオランダで事業を行なっていたが、最近はインドネシアで事業を行なっている。

でも、かつての(オランダでの)ビジネスには社会貢献の要素はなく、完全に利益追求に特化したものだった。人々を幸せにしながらお金を稼ぐ方法を見つけるのに、15年以上の歳月を費やしてしまった。

彼はそう語り、話を締めくくった。

【via e27】 @E27co

【原文】

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