Here Technologies、乗車プランニングとシェアリングができるソーシャル交通アプリ「SoMo」をローンチ

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Here Technologies のアプリ「SoMo」

個人が使用するライドヘイリングやライドシェアリングには、Uber、Lyft、 Gett、Grab など世界中にさまざまなサービスがある。公共交通機関が好きな人には Google Maps、Citymapper、Transit、Moovit などが使え、それぞれのサービスは A 地点から B 地点に行くユーザに電車、船、バスなど複数の交通手段を最も効率的に組み合わせる手段を提供している。

都市交通アプリについて言えば、一見したところ参入の余地はないようだ。しかし、人気のロケーション・ナビゲーションプラットフォームを開発した Here Technologies は、その考えに異を唱える。

Here は7日、最新のスタンドアロン型携帯アプリ「SoMo」をローンチした。これは「ソーシャルモビリティ」の用語を交通アプリの概念に引き上げたものだ。SoMo は、都市と地方の両方に対応した全方位型のソーシャル交通アプリとしてゼロから作られた。

SoMo では、公共、民間、個人などすべての輸送モードを単一のプラットフォームに統合することで、あらゆる人が単一のインターフェースからすべての選択肢を確認できる。しかし SoMo の主なセールスポイントは、ユーザが特定のイベントカテゴリー周りにいるソーシャルなサークルを作ることでただ乗りできるところにある。イベントには、単発で開催されるスポーツイベントやコンサート以外にも、通勤や子どものサッカーの土曜日の朝練といった繰り返し行われるものもある。

Here Technologies のモビリティ部門を率いる Liad Itzhak 氏は次のように話している。

SoMo は、今日のシェアリングエコノミーの架け橋です。どのように移動するか、誰と移動するかについて、消費者は選択の自由を持つべきです。だからこそ SoMo は、共通の社会的関心やモビリティの需要に応じて人々を結び付けます。休日のパーティー、バスケットボールの練習、ビヨンセのコンサートに行く人たち、といった具合です。

要約すると、Here は Google Maps、TomTom、OpenStreetMap といった企業に近い大手オンラインマッピングプラットフォームである。同社が現在の地位を築くまでには紆余曲折があった。Nokia が自社の Maps 製品強化を目指して2007年に80億米ドルでデジタルマップデータ企業 Navteq を買収した。それが2012年にブランドを改めて Here となった。Nokia はその3年後、Here をドイツ自動車メーカーコンソーシアムに30億米ドルで売却した。

Hereは「Here WeGo」という Google Maps のようなナビゲーションアプリなど消費者向けアプリも複数提供しているが、コアビジネスとしているのはサードパーティーのライセンシング業務だ。ここで重要なのはデータで、Hereにとって消費者向け携帯アプリが重要な理由はそこにある。人々の移動方法についてのインサイトを蓄積するのに役立つからだ。SoMo は幅広いスキームに対応しているため、Here プラットフォームのリアルタイムトラフィックデータ、マップの品質などを改善させるのに役立つ。

しかしHereは、アプリを通してオンデマンド交通プロバイダーとのレベニューシェアリングモデルも運営していく。

SoMo: 基本情報

SoMo の設定はいたって簡単。まずは携帯電話の番号を入力する。番号は、友人とつながり、アプリにあるすべてのソーシャル機能を強化するために活用される。

その後、氏名を入力して写真をアップロードすれば完了となる。

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SoMo: セットアップ画面

アプリには「乗車する」と「集まりを作る」 という、2つのコアな要素がある。

「乗車する」の場合、SoMo は標準的なナビゲーションアプリとして活用できる。Google Maps や Waze のほか、Here 独自の Here WeGo と同類である。出発地点と到着地点を入力し、「運転」のボタンを押す(車を運転する場合)。もしくは、右側にある「バス」のタブを押すことで、最適な公共交通機関の利用メニューを確認することもできる。

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SoMo: 乗車画面

しかし、これらの機能は実は SoMo のコアなレゾンデートル(存在意義)ではない。「あったら便利」程度のものだ。

乗車の場合、友人や知り合いを誘うことができる。職場の同僚、家族、親友など一緒に移動したい人たちを自らピックアップすることを除いては、カープールやライドシェアリングのようなものである。メッセージングアプリと Google Maps を組み合わせることで同様の状況を再現できるものの、SoMo では単一のアプリ内であらゆる移動の要素が促進されるほか、最初からすべての人に対して乗車の詳細、リアルタイムの ETA(到着予定時刻)が表示される。

さらに、SoMo が Here のナビゲーションプラットフォームに構築されていることからして、このアプリは時間帯、距離、乗車する人すべてのピックアップ・降車場所に基づいて走行径路を最適化することができる。

また、SoMo は、自家用車を持つユーザだけのものでないことには留意する必要がある。昨年1月にローンチされた Here Mobility Marketplace にも統合されているので、タクシーなどサードパーティーのオンデマンド交通プロバイダーにアクセスできるのだ。最終的には、自転車シェアリング、ヘリコプター、海上タクシーなど別の交通サービスもサポートされるようになるだろう。

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SoMo: 乗車画面

SoMo のモビリティ・マーケットプレイス、ひいてはオンデマンドの乗車サービスが当初利用できるのは15都市(ロンドン、アテネ、バルセロナ、アムステルダム、ブリュッセル、ラスベガス、ニューオーリンズ、ニース、ロサンゼルス、ヘルシンキ、ピレウス、テッサロニキ、アルメレ、ハーレム、ハーグ)となる予定。しかし同社は VentureBeat に対し、これに毎月10都市が加わり、2019年中にはヨーロッパ、北アメリカ、南アメリカの100都市以上をサポートできる見込みであるとコメントしている。

次に、Here Mobility Marketplace で利用できるオンデマンドの交通プロバイダーは数が限られているという問題がある。Here では、あらゆる場所に存在するライドヘイリング企業の Uber が参加を希望する場合は歓迎するとしているが、Uber はまだ入っておらず、状況はすぐに変わりそうにない。

同社広報担当は VentureBeat に次のように語った。

競争的なモビリティのエコシステムを構築するというというビジョンを共有する企業は参入を希望すると思います。独占的な地位を築こうとする道を選択し、市場にいる競合を排除しようとするごく少数のプレーヤーはおそらく、参入することはないでしょう。Uber に限らず、モビリティの将来をどのように考え、参入するかしないかの最終決定をするのは、それぞれのサービスプロバイダーです。

ソーシャル

SoMo のソーシャルな要素が市場の中で重要な役割を果たしていることからすると、この機能の重要性を強調しておく意味はある。

ユーザは、移動が手配される場面でソーシャルなサークルを構成する人の集団をアプリ内で作ることができる。「職場への通勤」、「サッカーの練習」といったグループだ。こうしたグループは、アプリが持つソーシャルなライドシェアリング的な要素の基本となっている。

こうしたグループは、アプリの「集まり」にとって特に重要な部分だ。集まりを定義するのは場所、時間、意志、参加する人々のグループという要素である。1回限り、繰り返しのどちらのイベントであっても、設定する際には時間、場所、メンバーといった詳細情報を決めていくことになる。新規メンバーを追加することができるのはグループの管理人だけだ。追加されたメンバーにはその際、自分の端末にプッシュ通知が送られてくる。

この集まりを通して、メンバーたちは特定の場所に向かうのに最適な方法を把握できる。オンデマンドの輸送手段、電車、その組み合わせを利用してお互いに乗車をシェアしていくことになるのだ。

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SoMo: グループと集まり

集まりはデフォルトでプライベート(個人)の設定となっているが、パブリック(一般)に変更も可能。それにより SoMo の潜在性が一段と高められる。

たとえば、日曜の夜に近隣の町や都市で行われるコンサートに行く際には交通手段の確保が大きな障害になったりする。終電が午後11時の場合、帰りの人混みに巻き込まれないようにするには終演30分前に退散しなければいけないかもしれない。自家用車で行く場合でも駐車場の確保が難点である。盛り上がるコンサートでビールを飲むこともできない。SoMo の「パブリックな集まり」では、特定のイベントについて一時的なソーシャルサークルを設定して参加することができ、一緒に移動する人も探し出せる。

また、SoMo は移動に関わるすべてをカバーするので、メンバー全員が目的地に行って帰るのに最適な手段を示してくれる。

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SoMo: パブリックな集まり

ここで1つ留意しておくべきは、もし SoMo に何らかの「チップ機能」もしくはライドシェアするメンバーがガソリン代をシェアする便利な方法があれば、もっと良いものになると思う。現状、乗車メンバーは運転手に現金を手渡しするか、PayPal もしくは銀行口座の詳細情報をお互いに共有するしかない(運転手がガソリン代の負担を相手に求める場合)。

パブリックとプライベート

以前にも書いた通り、Uber のような民間の交通アプリと Citymapper のような公共の乗換アプリの間にある境界線はすでに曖昧になっている。たとえば Uber では、公共交通機関の乗り換えデータをリアルタイムで表示して輸送モードの組み合わせを可能にしている。一方の Citymapper は、アプリから直接、乗車を予約できるスマートバスサービスをローンチした。

SoMo はその一歩先を行っている。大きな潜在性を秘めた真の興味深いオールインワンの交通機能を備えているからだ。ここでのキーワードは「潜在性」である。類似のソーシャルアプリが直面する最も困難な障害はユーザの獲得である。SoMo は1人の移動者向けのスタンドアロンのナビゲーションアプリとして動作するものの、主要なセールスポイントはそのソーシャル性である。友人や同僚が使用しなければ、SoMo の訴求力は限られたものになるだろう。SoMo の利用に関しては、口コミが重要な要素となる。多種多様な人にアピールする方法について、Here にはさまざまな考えがあるようだ。

Itzhak 氏は次のように話している。

LinkedIn、Airbnb、Facebook などのプラットフォームがソーシャルな接続性を活用しているように、SoMo もソーシャルネットワークの持つ力を借りて交通の未来を再構築したいと考えています。ソーシャルモビリティ革命の最前線にいる SoMo を使えば、ユーザはシンプルかつ簡単に移動を計画、シェアし、乗車することが可能になります。乗車占有率が高まれば交通渋滞もなくなりますし、大気汚染が緩和されてずっと環境にやさしくなりますから、地球全体にとっても大きな影響があります。

しかしながら、Google Maps を持つ Google が同じような機能を有効にしないのはなぜかという疑問は残る。実際、同社は最近、Maps に多くのソーシャルな機能性を取り込み、携帯アプリに新たなグループプランニング機能をローンチするなどしている。しかし、これは食事をする場所の人気投票を作るようなものである。ただし、Google が将来、SoMo と同じような製品をローンチしたとしても驚いてはいけない。何十億という人が携帯電話で Google Maps をすでに利用していることからすると、参入によりトラクションを獲得する機会は大いにあるとみてよいだろう。

SoMo は現在、iOSAndroid でダウンロードして利用できる。

【via VentureBeat】 @VentureBeat

【原文】

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