中国市場で成長と価値を追求する、イスラエル発のイノベーターたち

by TechNode TechNode on 2019.1.26

Image credit: Максим Кузубов / 123RF

つい最近まで、西側諸国の同業者に見過ごされている潜在性を特定しようと中国の投資家にピッチした創業者たちは、イスラエルやアメリカの主流VCから資金提供を断られることがあった。現在では新手のスタートアップ創業者、ファンドやアクセラレータのマネージャーたちが、いまや中国に真剣にリソースを振り向けてもよい時期だと考えるようになっている。

Infinity Group は中国とイスラエルのプライベートエクイティ・投資銀行業務で操業20年を超えるが、今では中国ファンドの多くを手仕舞いしつつある。中国内取引にほぼ特化していたInfinityは現在、中国に注目している外国の起業家を相手にしており、北京とテルアビブにある最新コワーキングスペース Innonation Powerhouse を公開している。コワーキングの巨人であるWeWorkやNakedHubと真っ向競合している Innonation は、自社をイスラエルと中国の越境活動を発展させるプラットフォームとして位置付けている。

2016年から運営している中国・イスラエル投資サミットからトラクションを確保したい意向だ。Infinity Group の創業者兼マネージングパートナーである Amir Galor 氏は、利用者に対し高付加価値サービスを提供するニッチなプレイヤーとして Innonation を成長させたいとしている。

イスラエルの AgriNation は、農業や食品生産をより効率的にする同国拠点の技術に約100万米ドルを投資する新興のベンチャーキャピタル企業だ。元イスラエルの駐北京大使で、陸軍大将でもあった Matan Vilnai 氏を会長として迎えたところだが、これから中国の投資家や企業に協業を呼びかけていくことになるだろう。AgriNation は、中国で特殊な肥料を製造している Kingenta(金正大国際)とファンドのアンカーリミテッドパートナーとして提携したほか、イスラエルの2大企業グループである Avraham Livnat や CTS とも手を結ぶことで事業を推進した。

友好的な動き

2016年に開催された Innovation Summit から
Image credit: Innonation

カナダで Huawei(華為)の CFO が逮捕されてから貿易をめぐる緊張が高まっているものの、最近の動きや中国政府の発言をみると、外国の起業家に対して友好的な関係を築く方向に働いている。12月に発表された法案では、当局による知的財産の強制移転を禁じている。法案が採択されれば、中国における外国企業の知的財産権を保護するのに役立つだろう。

11月には習近平国家主席が、輸入を拡大し経済の主要セクターで自由化を進める一連の政策を発表し、それにより中国の財・サービスの輸入金額は今後15年で40兆米ドルを超えると予想されている。アジアのダボス会議と言われる4月の「ボアオ・アジア・フォーラム(博鰲亜洲論壇)」の場で習国家主席は、外国人を呼び込む取り組みの一環で改革・解放の象徴的な場所として南部にある海南省を指定した。

中国への進出を目指すイスラエル系テック企業のプロフィールは多種多様だ。InnovizSimilar Web は成熟段階にあるイスラエルのスタートアップで、自動車とデジタルマーケティングのセクターに属する。西側諸国における膨大な顧客ベース、BMWなど大企業との戦略的な提携、米国やイスラエルのVCからもたらされた潤沢な資金が両社の特徴である。

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選択肢がなかったという理由で、企業の創業者たちが中国にいるのではない。豊富な資金を持つベンチャーのおかげで投資家を選別することはでき、中国の企業や消費者に販売することで企業価値を劇的に向上させることができると評価しているからなのだ。それでも、中国におけるベンチャー資金の潤沢さは注目されていないわけではない。

中国系メディアの報道によると、中国の人工知能(AI)企業は2018年上半期で317億米ドルの資金を調達したが、これは全世界の調達金額435億米ドルの約4分の3に相当するという。中国系 VC が、見込みのあるポートフォリオ企業に対するデューデリジェンスを強化していることもあり、魅力的な国内の投資案件は少なくなっている。そうした環境下、外国人投資家の2019年のポジションは良好で、中国系ファンドマネージャーの信頼を集めている。

一部セクターにいるアーリーステージの有望企業も中国でのシード投資を求めている。ハードウェア部品を生産している企業は、複雑な製造業のネットワークを持ち、世界で最もアジャイルなハードウェアメーカーが集積する深圳に目を向けている。テルアビブ出身で医療機器のシリアルアントレプレナーである Avi Lior 氏の希望調達金額は150万米ドルで、インキュベート資金を提供する可能性のある深圳および海口のインキュベータにピッチしているところだ。Lior氏の会社 OrthoKinematica では、上部脊柱用の人工椎間板を設計している。

深い結びつき

WakingApp の VR/AR ツールキット「EnTiTi 3.0」
Image credit: WakingApp

こうしたアプローチは過去にはみられなかったものだ。かつては中国の投資家には国境を超えた投資を主として米ドルで実施するよう仕向け、中国市場にはほとんど目もくれなかった。それにより、中国とイスラエルの両当事者の間で、目標や期待のミスマッチがみられた。

デベロッパーやデザイナー向けに拡張現実のプラットフォームを提供し、現在は経営が苦しい WakingApp Realities がそのよい例だ。同社は2015年に上海にある Youzu Interactive(遊族)から575万米ドルを調達した。イスラエルにいる同社の経営陣は中国市場には目もくれず、西側諸国での販売を優先した。現在、この会社の経営は危機的な状況にあるとされる。最終ラウンドから3年半経った2018年12月、アメリカのスマートグラスメーカーからようやく260万米ドルの資金を獲得したと発表した。

イスラエルのイノベーターたちが中国に注目するようになった最近の動きは、以前の企業とは異なり、ブランドの確立、中国での堅固な関係構築に向けた力強い取り組みが反映されている。いまは自動車、eコマース、スマート製造などのセクターで中国が支配的なプレイヤーとして台頭し、野心的な目標が国内シェアの獲得に向けて中国のスタートアップとしのぎを削るようになっている時期だ。

シリコンバレーを目指して教育とプログラムを受けているイスラエルの主な創業者らにとって、中国はいまだにマイナーな進出地域ではある。しかし西側諸国の多くの人が思っているより、中国の開放は急速に進んでいる。中国の寛容さがどのような意味をもたらすのか、より多くの主流派イノベーターたちに考えてもらうことにしよう。

【via Technode】 @technodechina

【原文】

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