新連載:日本の顧客課題解決を掘り下げる「鈴木のHi ! カスタマーサクセス」ーー初回:鈴木氏インタビュー

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編集部注:本稿は企業のカスタマーサクセスを支援する「HiCustomer」を運営する鈴木大貴氏による連載。プロダクトを通じて顧客の課題解決に取り組む企業の実態に迫ります

以前、本誌にて執筆してくれていたブロガーで、現在はスタートアップ創業者として活躍している鈴木大貴さんが新しい連載で帰ってきてくれました。おかえり。

今回の連載テーマは「カスタマーサクセス」です。2014年から投資家サイドのブロガーとしてB2B SaaSに注目し続け、自身もこのカテゴリを支援する「HiCustomer」を公開した鈴木さん。各社の課題解決の現場を、ショートインタビュー形式で掘り下げていきます。

初回は特別編として、編集を担当する私が鈴木さんにお話をお伺いします。

そもそもカスタマーサクセスとは何か。サービスを評論する立場から運営する側に回った彼に、その具体的な手法を聞きました(太字の質問は全て筆者、回答は鈴木さん/取材・編集担当:平野武士)。

連載復帰おかえりなさい。昨年4月にクローズドβの公開、7月にシード資金調達と順調にステップ踏んでますね。サービスの現在の状況から教えてもらっていいですか

鈴木:正式リリースは2018年12月4日でちょうど2カ月経ちました。主にB2B SaaSを提供する、成長フェーズに入ったスタートアップ中心に導入が進んでいます。

自社プロダクトの導入社数が増えてChurn(解約)が課題になってきている、カスタマーサクセスがチームとして組織化され、チームの生産性を上げないとまずい、みたいなフェーズで導入いただくことが多いです。

大手企業の導入はどうですか

鈴木:正式リリース後は大手企業の問い合せも増えてますし、導入も順次始まっています。

ブロガー辞めてスタートアップしてよかったですね(笑。組織も大きくなってますか

鈴木:ありがたいことです(笑。従業員はフルタイムで6名で、副業メンバーが多く、そこも合わせると12人くらいです。採用もぼちぼち決まり始めているので、春にはフルタイム10人くらいになってるかもしれません。

鈴木さんは元々アーキタイプでスタートアップ支援してましたから、資金調達もスムーズだったのでは

鈴木:そうですね。シードのタイミングで6000万円を500Startup Japan、BEENEXT、アーキタイプベンチャーズから調達しましたし、実は別途借り入れも合わせてやってます。

あと、1月中旬に五反田へオフィスを移転しました。メンバー増えるまでそこそこスペースが空いているので、最近はお客さんを呼んで勉強会やワークショップを頻繁に開催しています。

スタートアップして早々にオウンドメディア立ち上げたり、勉強会でコミュニケーション細かく取ったりPRにスキがないのはブロガーならではですね。コーポレートサイトよりもそちらを優先させてるところ、好きです

鈴木:それな。

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Image Credit : HiCustomer website

さて、そももそこれから連載していくにあたって、カスタマーサクセスとはなんぞや、をぜひ教えてください

鈴木:まず、カスタマーサクセスとは「プロダクトを通じ顧客の課題解決のため実施することの全部」です。チャットサポート、ヘルプコンテンツ、ユーザー会の実施からプロダクトの改善や組織のトランスフォーメーションも含め、定義に含まれる範囲が広いので「カスタマーサクセスは概念」とよく言われます。

お客さまサポートを可視化してPDCAを可能にしたもの、みたいな仕組み化の表現を使う人もいますよね

鈴木:「概念だし今までやってきていることと同じじゃん」と足が止まってしまうケースもどうやらあるようです。ただ、これがトレンド化した背景には、やはりサイエンスとテクノロジーを持ち込むことで、成果の最大化が可能なことが知れ渡ったことがあると思っています。

ここで言う成果とは

鈴木:カスタマーサクセスの成果は、その活動を通じて「企業・プロダクトの売上最大化を行うこと」です。プロダクトのブランド価値を高め、マーケティングの力を強めることにも効果を発揮します。

売り上げ最大化をKGI的に取り扱った場合、KPIに設定されることが多い要素はなんでしょうか?

鈴木:KPIとしては解約率や契約更新率・金額やアップセル/クロスセルの機会創出を求められることが多いですね。またこれらは行動が成果に繋がっているのか、KPIへの反映に時間がある程度掛かるので、中間指標として特定機能の利用状況やNPS、ヘルススコアが改善しているか否かをモニタリングするケースも多いです。

モニタリング数値に対して、具体的にどういうアクションが改善に役立ちますか

鈴木:チャットやヘルプコンテンツ、ユーザー会など挙げましたが、プロダクトや顧客の特性により効果的な施策は異なります。重要なのはどんなアクションが顧客の行動変容に効き、企業の売上に寄与できているのか、試行錯誤を繰り返し、再現性をチームに宿すことです。

ファーストステップとしておすすめしているのは

鈴木:どんなアクションが響いたのか否か、顧客のコンディションを定点的にモニタリングするため、カスタマーサクセスを本格的に始める場合は顧客データの可視化から手を付けるケースが多いです。

なるほど、ユーザー獲得コストや継続率などは各社観測しているでしょうから、それを整理するところから、というわけですね。これってそもそも勝ちパターンみたいな類型分類って可能なのでしょうか

鈴木:もちろんケースバイケースで、それぞれの企業で異なりますが、勝ちパターンは作れると考えてます。顧客を分類し、モニタリングと施策を繰り返すことです。マーケティングに似てます。異なるのは人対人、1対1のコミュニケーションが重要になる局面が多めなこと、個社個別のデータをモニタリングする必要があることかもしれません。

もうちょっと具体的にお願いできますか

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Image Credit : HiCustomer

鈴木:まず、分類はプロダクトの「ライフサイクルステージ」で分けることをおすすめしています。「オンボーディング」「活用初期」「安定運用」「契約更新前」など、各ステージで顧客の活用状況は近似するケースが多いので、ステージごとで顧客をモニタリングし施策を打つ、を繰り返すことで自社のプロダクトに適したカスタマーサクセスの運用を作り上げることができます。

取得するデータも複雑です。どういう視点で向き合えばいいでしょうか

鈴木:そうですね、データを取得するといっても、何を取ったらよいのか迷ってしまうケース多いと思います。もちろん、なんでもかんでも取得するわけにはいかないので、顧客がこういう状態になったときにこういうアクションを行おう!というアクションのトリガーになるデータの取得から始めるのがよいと思います。

これから連載で一緒に各社のカスタマーサクセスをお聞きするの、楽しみにしています

鈴木:カスタマーサクセスに特化した専門家集団として、各社のベストプラクティスからプロダクトを磨き込んでいます。チームのパフォーマンスを上げたい、これからカスタマーサクセスチームを新設するのだがどうすれば、みたいな方がいればぜひご相談ください。

この連載では各社のプロダクト愛とカスタマーサクセスの取り組みを紹介することで、業界のスピードアップと便利なプロダクトで満ちる世の中づくりに貢献していきたいと思っています。

ありがとうございました

編集部よりお知らせ:「鈴木大貴のHi!カスタマーサクセス」ではインタビューに答えてくれるスタートアップの方を募集しています。連載に参加されたい方はこちらのフォームからご連絡ください

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