次なる課題に直面するLa French Tech——さらに飛躍するにはどうすれば良いか?

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ラスベガスの CES に参加したフランス企業

フランス政府が野心的な起業家プログラム「La French Tech」を立ち上げてから5年以上が経過した。このプログラムは顕著な実績を残してきた。しかし最近発表されたベンチャー資金調達のレポートは、フランススタートアップのエコシステムが直面している大きな課題を浮き彫りにしている。

CB Insights がまとめた La French Tech 最新レポートによると、フランスのスタートアップは2018年に前年比8%増の35億米ドルを調達し、過去最高を記録したという。一方で調達件数は2017年の771から699へと減少した。

210社が15億米ドルを調達したというプログラム初年度の実績からすると、金額・件数ともにはるかに増加している。2014年以降でみると、フランスのスタートアップは2,511案件で117億1,000万米ドルを調達したことになる。

しかしながら………

前年比8%増というのは、2015年以降で最も低い増加率だ。国内外のベンチャーキャピタルの関心を集めた点では進展があったものの、国内で最大の資金供給源は公的投資銀行 Bpifrance だったと同レポートは指摘している。

テックエコシステムを絶対的な基準で比較することはできないが、アメリカでは2018年、ベンチャーの支援を受けた8,383社が前年比830億米ドル増の1,300億米ドルを調達した。中国でもスタートアップエコシステムが劇的に拡大している中にあってこのような発展がみられる。最大のライバルがアクセルをふかしているのとは対照的にフランス(とヨーロッパ)の成長はやや減速気味だ。

他のヨーロッパ諸国と比較しても、フランスの成長は堅調だが、特に著しいわけではない。資金調達に関して言えば、ヨーロッパで最も勢いのあるのは今でも間違いなくイギリスだ。フランスは差を縮めているものの、2018年はドイツが確実に二番手の座を占めた。

このようになる理由は何だろうか? イギリスとドイツでは、レイターステージの資金調達が増えている。CB  Insights によると、フランスの平均的な取引規模は370万米ドルと、イギリスの1,100万米ドル、ドイツの720万米ドルよりかなり少なかった。

フランスはアーリーステージの起業家の活動で大いに注目を集めたものの、未来を取り込もうとしない国のイメージもあって勢いの削がれた国になってしまった。しかしアーリーステージを生き残った企業は、フランスでは期待できそうにないレイターステージの資金を求めて外国に向かうようになっている。

マクロン政権で政策を担う高官は、企業の規模拡大への協力に重点を置いた La French Tech を再起動させると発表した。計画の多くはまだ実施されていないため、多くを期待するのは時期尚早だ。しかしニーズは急を要する。2018年はアーリーステージ案件が全体的に減少する中にあって、レイターステージの案件がようやく上向きつつあると CB Insights はコメントしている。

スタートアップの国になりたいという夢の実現をフランスが目指すなら、その山を越えることが重要になるだろう。その一環として、フランスは雇用を生み出せるダイナミックな経済を育み、頭脳明晰で学歴の高い人に対し、この国には未来があることを説得していかなくてはならない。

それは確かに困難な仕事ではあるが、不可能ではない。人材テック企業の Talentsoft は1月早々、Francisco Partners、Goldman Sachs、先述の Bpifrance が参加するラウンドで5,000万米ドルを調達した。

2007年に設立された同社はパリ郊外に拠点を構え、130カ国に従業員が600人もいる。シリーズ D ラウンドを終えた時点で、総額1億米ドル以上を獲得した。フランスの企業が国内にとどまり、さらに大規模なラウンドで資金調達ができる証拠だと言える。

このようなストーリーが例外ではなく、一般的な話にならなくてはならない。

【via VentureBeat】 @VentureBeat

【原文】

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