「AIは無関係」という思い込みが機会損失を生む──人工知能、期待される「3つのビジネス分野」/NTTドコモ・イノベーション統括部、河村さん(リレーインタビュー)

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本稿はAI:人工知能特化型メディア「Ledge.ai」編集部による寄稿。リレーインタビューの参加者は2月13日開催、レッジ社主催のカンファレンス「THE AI 3rd」にも登壇予定

2018年はまさにAI(人工知能)の年でした。

ガートナーが定期的に公開し、テクノロジートレンドを伝える「ハイプ・サイクル」。2018年のサイクルには「ディープ・ラーニング」というワードが、このまさしくピークにポジションしました。数回にわたるトレンドの波を乗り越え、今やビジネスの世界でAIという言葉を聞かない日はありません。

一方で、このバズワードに翻弄される人も多いでしょう。AIは一体、自分の人生にどのようなメリットをもたらしてくれるのでしょうか?

2月13日に開催する「THE AI 3rd」では、今のAIを捉えて自分の仕事に活かし、AI時代の今すべきことをみなさんと共有する予定です。

今回の記事では、「THE AI 3rd」に登壇する3名のスピーカーに登場いただき、イベントに先立ってアイデアをリレー形式でお届けします。初回はNTTドコモのイノベーション統括部にて、事業創出・投資担当を務める河村祐輝さんから。(太字の質問は全て筆者。回答は河村さん)

あらゆるビジネス機会に潜む「AI」活用ーー3つの注目市場

ガートナーのハイプサイクルにも見られる通り、「AI」はバズワード化しつつあります。「魔法の杖」ではない、より具体的なAIの姿をお聞きしたいと考えています

河村:まず、前提として考え方をリセットする必要がありますよね。AIは手段であって目的ではありません。当たり前のように思えて、この『目的』の部分をより強く意識することでチャンスは広がります。これにAIは無関係だろう、という思い込みが機会損失に繋がっているのではないでしょうか。

具体的に、特に今年から2020年にかけてビジネス面で躍進が進みそうな分野をどのように見ていますか

河村:海外から日本にやってくるものとしては、AIによる信用スコアリングサービスがありますね。逆に日本発であればバーチャルYoutuber(VTuber)は注目しています。また、今のAIの最先端の技術を活用できている、配送ルート最適化のサービス群を挙げさせてください。

米国、中国からの波で日本でもキャッシュレス化が進む?

信用スコアリングは、特に中国が国家レベルで取り組んでいますし、国内ではソフトバンクとみずほ銀行が「J.Score」を立ち上げてます。いわゆる個人情報の争奪戦も国内で始まっていて、スマホQR決済の文脈では、昨年末に実施されたPayPayの「100億円還元キャンペーン」が話題になりました。

河村:キャッシュレス化が進んでいる米国や中国では電子決済サービスと連携し、決済情報や利用者の属性情報などを元にした個人の与信管理が広がっています。国内でも、スマホ決済サービスの知名度が急上昇しています。弊社も昨年10月に「ドコモレンディングプラットフォーム」の提供を発表させていただいておりますが、日本においてもようやくキャッシュレス化が現実味を帯びてきたのではないでしょうか。

普及への期待を背景に、国内では米国や中国同様、信用スコアリングサービスへの注目度が高まっています。国内のインターネットサービス企業や銀行、大手通信企業が参入を表明しているんです。

二つ目のバーチャルYouTuber(VTuber)ですが、仮想キャラクターを生み出すモーションキャプチャーなどの技術を実現するには機械学習の恩恵がなければ実現できないですね

河村:当初はクリエイター発のUGCに近いデジタルコンテンツでしたが、昨年には「仮想キャラクターが地上波に出演」という出来事もあって社会的な知名度を獲得しました。VTuber専門ライブ配信プラットフォームができたり、マネジメント会社設立など企業参入が相次いでますよね。

注目しているのはビジネス規模の大きさです。国内のみならず「日本発のライブエンターテイメント」として海外展開を視野に入れた広がりを見せているんです。また、企業プロモーションなどにおいて、ビジネス面での採用が容易というのもメリットです。普及が進んでいる動画コンテンツとの親和性も高く、今後より社会に浸透していくのではと考えています。

UberやDiDi(滴滴)、あらゆるサービスの裏にAIがある

最後に挙げられた配送ルートの最適化について、詳しく教えてもらってもいいですか

河村:問題の解法を自動生成する「自動定式化」領域が、今の技術を最も活かせる領域だと考えています。そこで、まさに自動定式化を実現している「配送計画の自動化」、「配送ルートの最適化」は注目です。最適化によって、配送コストの削減や新人採用のハードルを下げる効果が期待されています。一般消費者向けサービスとして、どのように展開するか?というビジネスモデルはまだ課題ですが、ニーズは大きいと見てますね。

宅配の不在者票問題は、一時大きな社会問題にも発展しました。マッチング精度を上げるという観点で言えばUberやDiDi(滴滴)などの配車サービスでも大いに人工知能が活用されていると聞きます

河村:やはり事業者にとって、避けては通れない課題は人材不足なんですよね。企業のEC化や消費者のネットショッピング利用が普及する一方、人手不足が深刻化していて、配送業務の効率化が喫緊の課題なのはご存知の通りです。0から1を生み出すのではなく、現状の課題を、テクノロジーを用いて改善していくというアプローチが第四世代と言われるAIとしての能力を存分に発揮できる領域なのではないでしょうか。

ありがとうございました。リレーバトンを次の方にお渡しします。

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