東急電鉄のアクセラレータが第4期デモデイを開催、スタートアップ7チームが東急グループ各社との共創事業を提案ピッチ

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東急電鉄(東証:9005)は20日、都内で同社のスタートアップアクセラレータ「東急アクセラレートプログラム」第4期の最終審査会を開催し、東急グループとの事業共創検討に至った4社、サービス内容が秀逸と評価された7社がライトニングトークに登壇した。

東急アクセラレートプログラムは、東急グループのリソースを活用し、スタートアップにテストマーケティングの機会を提供するのが特徴。今回のバッチからは締切を設けない通年募集、毎月審査、適宜、共創検討という体制が取られ、スタートアップ153社からエントリがあり、うち39社がプレゼン審査を通過、最終的に7社が共創検討対象(今回の登壇者)に残った(3月19日現在)。

今期からは対象となる領域は5領域増えて、交通/不動産・百貨店・スーパー/広告/ヘルスケア/ツーリズム/エンタテイメント/スマートホーム/デジタルマーケ/スポーツ/ホテル・ホステル/物流・倉庫/建設/カード・ポイント/教育・カルチャーの15領域。また、これまで東急電鉄、Connected Design 、東急エージェンシー、東急メディアコミュニケーションズ、東急レクリエーション、東急スポーツシステム、東急総合研究所が事務局を運営していたが、次期の第5期からは新たに東急不動産ホールディングスが参加する。

新規性、親和性、成長性、実現可能性の4つの観点で審査される。今回の最終審査会で審査員を務めたのは以下の方々

  • グローバル IoT テクノロジーベンチャーズ 代表 安達俊久氏(ゲスト審査員)
  • トーマツベンチャーサポート 事業統括本部長 斎藤祐馬氏(ゲスト審査員)
  • 東京急行電鉄 代表取締役社長 髙橋和夫氏(審査委員長)
  • 東京急行電鉄 取締役事業開発室長 市来利之氏(内部審査員)
  • 東京急行電鉄 取締役経営企画室長 藤原裕久氏(内部審査員)

【最優秀賞】アスラボ ✖️ 東急百貨店

副賞:ASCII Startup「Japan Innovation Day 2019」セッション登壇・記事掲載権、パーソルキャリアのメディア「eiicon lab」 インタビュー記事作成・掲載権

アスラボは、さまざまな料理人の起業支援・経営支援サービスを提供。開業後3年以内廃業率66%という飲食業界で、さまざまなツールを使うことで、飲食店の継続的な経営を支援する。起業に必要な情報管理を「ITASAN」、経営継続に必要な運用管理を「OKAMISAN」というモバイルアプリで一元化し、料理人が実務に専念しやすくする。

未使用店舗空間をリノベーションして、複数飲食店が入居する横丁型スペースとして再生。料理人は20万円の権利だけで参加でき、厨房・客席・ホール係などを6〜10軒の飲食店が共有することで1軒あたりのコストを圧縮できる。これまでに4年間で、甲府グルメ横丁、天文館かごしま横丁、宮崎ニシタチ横丁、おおいた元気横丁、徳島 阿波横丁を手がけており、今後全国100拠点で1,000人の料理人の支援を目指す。

これらの横丁から4人の料理人を招き、小規模生産であったり、こだわりが強過ぎて流通に乗らな買ったりする希少食材を扱った食品フェアを、5月から6月にかけ渋谷ヒカリエ ShinQs で開催予定。SINQ の既存店舗にもメニューを開発してもらい、フロア全体でフェアを盛り上げ、期間中のべ45,000人の来店を狙う。将来は日本全国の希少食材を掘り起こし、消費者投票で人気が高かったものについて販売する計画を持っている。

【優秀賞】OKIPPA by Yper ✖️ Connected Design

副賞:パーソルキャリアのメディア「eiicon lab」 インタビュー記事作成・掲載権

Yper は、ユーザの自宅不在時に、配送業者が玄関先に手荷物を置いていってくれる〝置き配〟のためのソリューション「OKIPPA(オキッパ)」を提供。荷物管理をするためのアプリと、玄関先で荷物を置き配してもらうためのバッグで構成されている。アプリは、主要運送会社の配送システムと連携しており、EC サイト連携で荷物の配送状況をトラッキングすることができる。ユーザは頼んだ荷物の配送状況に応じて、事前の配送日時変更や置き配指定、再配達の依頼などを効率的に行える。

昨年12月には、日本郵便との共同実験を東京都杉並区の1,000世帯を対象に実施。1ヶ月間で約6,000個の荷物が配送され、平均不在率51%のうち、再配達を61%減らすことに成功した。ユーザの8割、配達員の94%が OKIPPA を評価し継続利用を希望しているという。

ケーブルテレビのイッツコム、ISP のニフティ、東急電鉄の JV である Connected Design は、IoT 開発やスマートロックを集合住宅に実装する事業を展開している。ただ、同社がスマートロックを導入する物件の8割には宅配ボックスが無いため、スマートロックと OKIPPA を組み合わせたサービス提案を行っていくという。また、OKIPPA が導入されることで、集合住宅における入退去(転入・転出)が把握できるため、ケーブルテレビの営業活動にも応用できるとしている。

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【審査員特別賞】ClipLine ✖️ 東急建設

副賞:東急のシェアオフィスネットワーク「NewWork」利用権1年分

動画を双方向にやり取りすることで、仕事のノウハウや手順の共有を支援する ClipLine。現在6,000店舗で11万人に利用されていて、掲載されている動画の合計再生数は1,000万回を超えているという。仕事現場で指導者が動画を作成し配信、新人はそれを見て自分の動きを動画撮影、指導者からコメントやレビューで指導を受ける。OJT を行う上で時間や場所の制約が排除され、一人の指導者が複数の新人を効率的に指導できるメリットがある。

CLipLine を導入したことで、新人の離職率が3分の1に低下、教育に要する時間が4分の1に減ったとの報告もある。東急建設では今春から、生コン受入検査や足場組みなどの教育コンテンツ作成に ClipLine を利用する予定。コンテンツ検証と現場での活用効果の確認を繰り返し、将来的には両社で建設業界全体への横展開を目指す。言葉に依存しないコンテンツも作成できることから、ゼネコンの海外展開での活用も期待している。

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【審査員特別賞】Kimakuri by BloomScheme ✖️ SHIBUYA 109 エンタテイメント

副賞:東急のシェアオフィスネットワーク「NewWork」利用権1年分

BloomScheme が開発する Kimakuri は、ユーザが簡単に気に入った洋服をオンライン上で試着体験できる仮想サービス。ユーザは予め、Kimakuri 上に自分の顔写真をアップロードし体型を入力しておく。顔写真は 3D モデル化され、ユーザが気に入った洋服の「試着」ボタンを押すと、自分の顔で体型にフィットした形での試着イメージが360°表示される。毎日30種類のコーディネートが提案され2分程度で確認できるので、店舗や E コマースでの試着に比べ、短時間で多くのコーディネートを試せるのが特徴だ。

同社では3月7日に Kimakuri の体験版をリリース。今後、あらゆるファッション EC サイトに試着のための QR コードをつけ、そこからユーザが購入前にバーチャル試着できる体験を提供するのが目標。「あの店舗に行けば似合う服がある」という確信をユーザに届け、O2O によるリアル店舗への誘導にも効果が期待できるとしている。SHIBUYA 109 の IMADA MARKET と2019年夏に実証実験を予定。

BloomScheme はリクルートの TECH LAB PAAK 第12期、毎日みらい創造ラボのシードアクセラレータ第2期から輩出された。

【オーディエンス賞】超十代 ✖️ SHIBUYA 109 エンタテイメント

副賞:東急のシェアオフィスネットワーク「NewWork」利用権1年分

プレゼンター希望により、事業内容や協業内容について非開示。

RoomCo AR by LIVING STYLE ✖️ 東急百貨店

LIVING STYLE が開発する RoomCo AR は、〝インテリアの試着と提案〟を可能にする AR アプリだ。洋服などに比べ、家具は購買頻度が低いため、どのようなものを買えばいいのかわからないと悩む人も多い。RoomCo AR では、ユーザが自分の部屋の写真や間取り図を送ると、一週間以内に LIVING STYLE のネットワークしたプロのインテリアコーディネータから、配置図や立体イメージとともに家具の提案が届く仕組みだ。インテリアブランド17社の協力を得、送客により売上を確保する。

単位面積あたりの売上効率を追求する観点から東急百貨店では家具売場が年々縮小されていく課題があり、一方で RoomCo AR にとってはユーザがリアル店舗で商品確認する機会が無いという課題がある。これらの問題を解決する糸口を見つけるべく、LIVING STYLE と東急百貨店では、東急百貨店吉祥寺店で今夏に実証実験を予定している。東急沿線にはインテリア店舗が軒を連ねる目黒通りがあり、東急電鉄は「住まいと暮らしのコンシェルジュ」という駅前コンシェルジュサービスを展開していることから、さまざまな協業の可能性が期待される。

LIVING STYLE は、KDDI∞Labo 第10期から輩出された。

STANDING OVASION ✖️ 東急百貨店

STANDING OVASION は、手持ちの洋服の情報をデジタル化し、AI がコーディネート例が提案するモバイルアプリ「XZ(クローゼット)」を提供。これまでに、80万件がダウンロードされ、900万件のユーザ所有のファッションアイテムが登録されている。同社は渋谷ヒカリエ ShinQs のショップと連携し、販売しているファッションアイテムを XZ に取り込めるようにする。

販売アイテムとユーザの手持ちアイテムで良いコーディネートが出来上がるとユーザに提案、それを契機にユーザを店舗に誘導する O2O サービスとして機能させる。店頭では店員がタブレットを使った接客補助ツールを操作することで、ユーザに目の前の商品とユーザ手持ち商品との組み合わせコーディネートを提案できるようにする。

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