給与前払いに「性善説」は成立する?手数料ナシの「Earnin」にみる”給与前払い市場”の行方

by Takuya Tsuchiya Takuya Tsuchiya on 2019.3.24

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Photo by bruce mars on Pexels.com

ピックアップ:Earnin Closes $125 Million Series C to Build Next Generation Financial System

ニュースサマリ:手数料なし給与支払い前払いサービス「Earnin」が昨年12月にシリーズCラウンドで1億2,500万ドル(日本円で約137億円)を調達。ユーザーはアプリを通して自分の給料を支払い日前に引き出すことができる。低賃金の労働者をターゲットにしており、手数料ではなくユーザーから任意で料金を徴収するチップ制のマネタイズ手法を取る。現在米国50州で50,000人以上のユーザーを獲得している。

関連記事:広がる「給与前払い市場」の日米差とはーーPayActivが2000万ドルを調達

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話題のポイント:Earnin(旧ActiveHours)は時間給ベースの従業員が、オンデマンドに給与支払いをしてもらえるアプリを提供しているスタートアップです。国内であればPayme、以前の記事で紹介したPayActivの競合にあたる企業です。いわゆるBtoEのモデルで、コーポレートフィンテックのカテゴリになります。

従業員の使い方としては電子タイムシートの写真をアプリで撮影し、ワンタップで自分の口座に働いた分のお金のうち、1日最大100ドルまで自らの銀行口座に送ることができるという仕組みです。

以前の記事にも書きましたが、米国のこの勢力を考える際には給与前払いによりオーバードラフトフィー(当座貸越)を回避できるという日本にはないニーズが米国にはあることを念頭に置いた方がいいでしょう。

面白いのがビジネスモデルです。

競合のPayActivは引出し時に手数料を徴収していますが、Earninはユーザーの任意の気持ち(チップ)でお金を貰っているところです。手数料や利息などは発生しない仕組みになっていて、ユーザーからの最大14ドルまでの任意のチップが送れる仕組みを提供しています。

Earninはオフィシャルでも「我々のビジネスはコミュニティからのチップによって成り立っている」と宣言していますので、性善説ビジネスモデルですね。成立するのかどうか、ちょっと金利に直して計算してみました。

例えば20ドルの引出しに対して2ドルをチップとして支払った場合、米国の一般的な給与サイクルは2週間に1回ですから、年間金利に直すと260%となる(20ドル分の10% x 2 / 52週)。これは米国のペイデイローンレンダーに匹敵する額になります。もちろん支払うかどうかはユーザー次第です。

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Earninのウェブサイトから。従業員エンゲージメントの実績

アプリからすぐに引出しの手続きができますから、ペイデイローンなどの店舗に直接行って手続きをするというアクションがなくなる分、給与に対してのアクセシビリティが格段に向上します。なんというか、Wikipediaみたいなモデルに思えてきます。

これらのサービスは企業にとっては離職率の低下や採用率の向上などに繋がると言われていますので、中長期でそういった結果についても見てみたいところです。

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