離農時代を救う「アグリテック」注目はIoTとAIーースタートアップが語る注目テクノロジー/笑農和代表取締役 下村豪徳氏

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本稿はIBM BlueHubによる寄稿。スタートアップとの共創プログラム「IBM BlueHub」では2014年の第1期スタートから現在まで、参加した多くのスタートアップが大手企業との事業提携やVCからの資金調達を実現している。第5期のDemo Dayは3月18日に開催される

前回からの続き。IBM BlueHubでは3月18日に開催する「第5期 Demo Day」を控え、プログラムに参加してくれたメンターや卒業生などを中心に、B2B領域におけるSaaSなどのトレンドについてそれぞれの見解を語っていただきました。前半は主にベンチャーキャピタリストによる市場トレンド、後半はスタートアップによる技術トレンドをリレー形式でお送りします。

スタートアップの注目テックパート、6人目のナーブ代表取締役、多田英起氏からバトンを受け取るのは農業をIoTで効率化する笑農和、代表取締役の下村豪徳氏です(太字の質問は全て筆者。回答は下村氏)。

リレーインタビューでドローン、協調ロボティックス、VRの分野で活躍しているスタートアップ創業者の方に技術トレンドをお聞きしています。下村さんは農業をIoT(Internet of Things)で効率化しようという取り組み、いわゆる「アグリテック」の分野ですよね

下村:そうですね。アグリ(農業)と一言で表現しても範囲は広いですが、私たちは特に水田の水管理(入排水)に対してテクノロジー活用し、「paditch」というサービス提供を通じて農業のスマート化に取り組んでいます。

農業に携わっていない人にとってなかなか水田の「水」管理と聞いてもピンとこないのですが、具体的にどういう課題があるんでしょうか

下村:水田の水管理って毎日やらないといけないんです。例えば田んぼに水を流す水門が100箇所あったらそれ全部チェックしなければいけません。しかも基本的に人手で、板を抜いたり入れたり大変な作業になります。

それをインターネット接続型の水門に置き換えているのが下村さんの活動ですよね

下村:はい、現在は開水路向けのものから、パイプライン型(2020年4月発売予定)まで様々な水田の取り入れ口に対応していく事も計画しています。

単なる開け閉めだけではない、周囲の環境情報を元にしたより細かい、人の叡智を超えた水管理を提供したいと考えてます。地域の水資源の最適化が可能になれば、「適地適作(条件にあった作物の生産)」に繋がり、次世代農業産業に発展するのではないでしょうか。

アグリテック分野で下村さんが注目している技術は

下村:引き続きIoTやAI(エッジコンピューティング含む)技術の動向に注目しています。また、IoTはLPWAなどの通信技術と共存なので、農村地帯における ネットワークインフラ整備も気になっています。

私たちもLoRA(※)による水田での大規模実験を行いましたが、一般的な評価とは違い、現場でしか発生しない障害もあるんです。

IoT関連ではソラコムはじめ、超狭域でのネットワークインフラとビジネスモデル(料金体系など)が生まれていますが、使われる場所は工場の機器類から工事現場まで幅広いと聞いています。現場最適がやはり大変なんですね

下村:農地という場所に応じて独自のチューニングが制御に必要でしたね。また、これから先の大量離農(農業をやめること)時代を見据え、こういった人手によらない水位・水温コントロールは稲の品質管理の上でも大変重要な工程になるんです。

だからこそ農村地帯向けへの電源、通信インフラには特別な支援や整備が必要だと思っています。特に通信インフラはアグリテック向け特別な料金体系が必要になってくるんじゃないでしょうか。

特定の技術で気になっているものはありますか

下村:水田分野では、ドローンや衛星によるピンポイントでの施肥や稲の健康状態の可視化、収穫予想などに期待しています。また、草刈りロボットなど農業現場へのロボット普及も気にしたいところです。こういった分野(収穫や選別ロボット、ドローン、衛星など)も徐々に整ってきたので、盛り上がってきていますよ。

インタビュー対応、ありがとうございました。では次の方にバトンをお渡しします

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