SXSW 2019番外編: 日本のフードテックは、これからの食文化伝承のカギとなるか?【ゲスト寄稿】

by ゲストライター ゲストライター on 2019.3.26

本稿は、岡本侑子氏による寄稿。同氏は宮城県石巻市生まれ。高校では建築、大学ではプロダクトデザインを専攻し、新卒から広告業界に身を置いている。

現在は、広告会社に在籍する一方、他社でもフリーランスとして仕事も受けているパラレルワーカーでもある。

最近は中国や、他国のカンファレンス情報を複数のメディアにて発信もしている。


SXSW(サウスバイサウスウエスト)2019 期間中の3月13日(アメリカ中部標準時夏時間)、非公式イベントとして「The Kitchen Hacker’s Guide to the Food Galaxy in SXSW」がアメリカ・オースティン郊外で開催された。

主催したのは、ウマミラボ、立命館大学、シェフの杉浦仁志氏、東洋ガラス。イベントには日本人を含む約70名が参加した。

立命館大学が進める「江戸未来フードシステムデザインラボ」

今回特にフードテックを活用で目立ったのは、立命館大学 食マネジメント学部で研究を行なっている「江戸未来フードシステムデザインラボ」だ。

立命館大学は、食科学の深い知見を培うとともに、高度なマネジメント能力と実践的な行動力をそなえた、食の人類的な課題解決に寄与できる人材育成を目指し、18年4月に食マネジメント学部を創設した。野中朋美さん(食マネジメント学部 准教授)、鎌谷かおるさん(食マネジメント学部 准教授)の研究室プロジェクトとして、江戸フードサステイナビリティの研究を行なっている。

なぜ京都や滋賀に拠点を構える立命館大学が、〝江戸〟未来フードサスティナビリティの研究をスタートさせたのか。

江戸には、「都市」としての江戸、「時代」としての江戸の2つの意味を含んでいる。

江戸は、江戸時代の全国各地の流通、文化、技術、情報が、交差しあいながら完成したもの。 そして、その文脈は、江戸時代の大規模輸送や、樽の開発、海路や加工技術の発展によって成長した日本酒にあてはまることから、日本酒をテーマに選んでいる。

鎌谷かおるさんによると、江戸時代に入り、本格的に大規模な造酒が、各地で可能になり、特に摂津国の伊丹や池田で作られた酒は、美味しくて有名になった。江戸時代半ばになると、摂津国の灘の酒造業が多く出回るようになった。そして、灘の酒は、日本の人々に知られるところとなり、灘を含めた摂津国で製造された酒は、江戸の町の酒の消費量の7割を担っていたとされている。

<参考文献>

日本酒100%ゼリーを使った料理

そして、今回イベント内でシェフを担当したのは杉浦仁志シェフ。

2017年5月にミラノで開催された The Vegetarian Chance で世界中から集まった多数のシェフの中からトップ8に選出されるなどの経歴を持つ。

そのシェフが今回の提供料理で使用していたのは、日本酒100%ゼリーである。

現状国内などで販売されている日本酒ゼリーは、食べやすくするために清酒の他に砂糖や果汁が含まれている。しかし、このゼリーは粉末の寒天と日本酒のみから作られているため、事実上の〝100%日本酒ゼリー〟なのである。

ユキオーの技術によって、100%の日本酒ゼリーを作ることに成功している。

技術内容の詳細は非公開。現状はまだプロトタイプであるため、販売はしていない。

現在、どの国でも旅行の際の土産として酒類の国外持ち出し量は制限されていて、もちろん日本酒も制限対象となる。他国での日本食ブームに加えて、日本酒は日本料理と切っては切れない関係もあるため、もっと多くの人に日本酒を楽しんでほしいところだが、どうしても法令による制限が絡んでしまう。

そんな課題の打開策の一つとして、ゼリーによる持ち出しは大きな可能性を秘めている。

日本酒100%だからこそ、料理などにも使うことができるし、ゼリーの寒天成分は煮出せば無くなるので、再び日本酒に戻す(完全な清酒の状態ではなく、ゼリー状では無くなるという意味)ことも可能だ。それは新たな食感を作り出し、料理の幅が広がる可能性もあると杉浦シェフは話した。

イベントでは、立命館大学 食マネジメント学部の長谷川千尋さん、黒坂ヒカルさん、立石綾さんがプレゼンテーションを行った他、ウマミラボの出汁出展、日本酒が振舞われていた。

ウマミラボは、出汁と日本酒を紹介

ウマミラボは、出汁を引く全ての機材を1つのスーツケースに収め、日本の伝統的な出汁の素材と現地の食材/調味料/お酒をブレンドすることでその土地ならではの「旨み」を発見する、移動式のポップアップ出汁ラボラトリー。発起人は望月重太朗さん(REDD)

ウマミラボは、5種類の異なる出汁を提供していた。
イベントでは18種類の全国各地の日本酒も振舞われた。
ウマミラボパートナーである山寺純さん。外国人にも大人気だった。

東洋ガラスの「Alchemist bar -taste is who you are-」

東洋ガラスが出展したこの作品は、味覚共有というもので、ドライフルーツやハーブ、スパイスなどを組み合わせて自分好みのお酒を作り、シェアするというもの。容器は、人のクリエイティビティとコミュニケーションを促進するものでありたい、という願いを込めて展示を行ったという。

東洋ガラスの「Alchemist bar -taste is who you are-」

SXSW 2019でもフードテックは重要なトピックになっており、センションカテゴリにフードが設けられているほどだった。

フードロスなどの分かりやすいソーシャルインパクトもフードテックのサービスとして注目を集めていくだろうが、自国の産業や文化をどのようにハックして多くの人に伝え、喜んでもらえるかという観点でのフードテックがあっても良いのかもしれない。

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