ビジネス協働は5Gでどう変わるーーXRコラボツール「NEUTRANS」開発のSynamonにKDDIらが出資、2.4億円を調達

by Takeshi Hirano Takeshi Hirano on 2019.3.26

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写真左から:KDDIの中馬和彦氏とSynamon代表取締役の武樋恒氏。XR空間で撮影してもらった

VR(バーチャルリアリティ)やAR(拡張現実)などのプロダクト開発を手がけるSynamonは3月26日、KDDIら複数社を引受先とした第三者割当増資の実施を公表した。

引受先となったのはKDDIが設立し、グローバル・ブレインが運用する「KDDI Open Innovation Fund(3号ファンド)」と三井不動産のCVC「31VENTURES」、三井住友海上キャピタル、SMBCベンチャーキャピタルの4社と個人投資家。株式による増資に加え、金融機関からの融資を合わせて調達した資金は2億4000万円。各社の出資比率や払込日程などについては公表していない。

また、これに合わせてKDDIとはVRコラボレーションツール「NEUTRANS BIZ」の拡販に関する協業を進めるほか、三井不動産運営のコワーキングスペース「Clipニホンバシ」および「KOIL」に同ソリューションを導入することも公表している。

NEUTRANS BIZは、VR空間で遠隔に離れた人々を繋ぎ、ビジネスコラボレーションを促進させるソリューション。ミーティングや研修など、従来人が集まる必要があった協働作業のハードルを下げる効果を狙う。現在、大型アップデートを進めており、2019年4月の正式リリースを予定している。提供価格などのライセンス形式については問い合わせが必要。

本誌では今回の協業を推進する、KDDIライフデザイン事業企画本部 ビジネスインキュベーション推進部長の中馬和彦氏と、Synamon代表取締役の武樋恒氏に5G活用と協業の内容についてインタビューを実施した(太字の質問は全て筆者)。

資本を含めた業務提携について経緯を聞きたい

武樋:まず弊社が目指す、XR技術がインターネットのようにあって当たり前の世の中の実現のためには、ヒト、モノ、AIなどすべてがネットワークで繋がり、常時コミュニケートできている状況が当たり前になっている必要性があったんです。その視点において、KDDIさんは5Gという新しい通信システムを軸に、先端テクノロジーとの融合に向けの取り組みに注力している背景や、国内企業の中でVRやAR技術に関連した取り組みを積極的に手がけている実績があり、弊社事業とのシナジーが大きかったことが挙げられます。

中馬:私たちも5G普及にあたって「XRコミュニケーション」が日常化すると予想しています。また、当社は「顧客体験価値を向上させる次世代コミュニケーション」としてXR市場を切り拓いていきたいという想いもあります。内製開発のベースシステムを保有し、また「XR×コミュニケーション」に強みを持つ企業、という観点でSynamonが狙う世界観はKDDIのXR戦略とも合致することから協業を決定しました。

武樋:一般的にはVR技術ってまだまだ見えづらい状況だと思うんです。しかし、私たちが採択頂いた「KDDI ∞ Labo」の取り組みで、KDDI担当者のVRにかける熱い想いを感じた事も最終的な決め手になってます。

5Gというキーワードが出たが、具体的に利用シーンを教えて欲しい。こういったVR会議システムであれば有線環境があるように思う。無線を使う理由は

中馬:まず「VR会議」という分かりやすいワードを使うべきか悩んだことはお話させてください。そもそも携帯電話やメール、ビデオ会議、これらは旧来のコミュニケーションを「Disrupt(破壊)」するのではなく、コミュニケーション手段のバリエーションを拡張してきたと捉えています。

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NEUTRANS BIZで遠隔地の協業ができる

なるほど。確かに今回もテレビ電話による遠隔取材だが、メールや電話も併用している

中馬:キーワードは「コラボレーション」です。

もちろんVRを活用することで離れた拠点間の移動コスト削減が見込めます。しかしそれよりもVR活用ならではの機能(3Dモデルの活用、360映像に入ることによる疑似現場体験等)による新しいコミュニケーションの実現ができるんです。これは移動の効率化だけでなく、生産性の向上をもたらしてくれます。

遠隔でのコラボレーションと5Gはどういう関係があるのか

中馬:例えば離れた空間でとある新素材を検討するミーティングを開催したとします。その際、VR空間にはリアル空間から取り込む素材をライブストリーミングする必要がでてくるんです。

なるほど、手元にある素材をそのまま空間転送させる必要がでてくる

中馬:屋外等で360カメラ映像をアップロードする際、5Gを活用することで有線ネットワークがない環境でも無線で手軽に、かつ高画質の映像を送信することが可能になります。つまり「リアル空間のネットワーク化」を進展させることこそXR活用領域を更に拡大することに繋がると考えているのです。

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ミーティングに出てくるアイテムに通信が必要になる時代がやってくる

ーーつまりこういうことだ。5G回線は別に大容量の映像を配信するためだけに必要なのではない。その空間にある「全てのモノ」が通信の対象になっている、と言っているのだ。思い出して欲しい。KDDIはあらゆるものの通信をクラウド化することのできるソラコムを買収している。このIoT(Internet of Things)技術を5G、さらにXRと重ねれば、ここで話されているリアルな「コラボレーション」も現実味を帯びる。

話を続けよう。

武樋:確かに直近の確実性という意味ではまだまだ有線も必要でもありますが、単純に線があると邪魔ですよね。VR利用においても有線ケーブルが邪魔という問題があり、スタンドアロン型端末の提供が望まれてもいます。

このビジョンが実現すれば、ビジネスコミュニケーションが大きく変わることが予想される。現時点で想定しているインパクトを教えて欲しい

武樋:定量的にはまさに移動コストや各種コンセンサスを取る上での情報伝達コストは下がると考えています。ですがこれらはまさに現状の「改善」です。弊社が目指す先としては、そこで減ったコストを活かして、今までにない新たなイノベーションを生み出す仕組みにしたいと考えてます。

中馬:同じ場所にいて移動コストの削減等がなくとも、VRを活用したほうがより良い取り組みができるよね、となるような世界は目指したいです。SynamonのVRコラボレーションシステムをコミュニケーション手段として定着させ、移動コストの削減やデジタルを介することで伝達効率を高める利用シーンを創出し、あらゆるビジネスシーンにおける生産効率の向上に寄与したいですね。

利用する側の障壁はどのようなものがあるか

武樋:「KDDI ∞ Labo」の取り組みとしてパートナー連合企業の皆様に向けた体験会を実施し、事実9割以上の方に好評は頂けたのですが、正式導入に向けては機材の購入や管理運用、加えて情報セキュリティの観点での課題が大きく浮き彫りになりました。

特にセキュリティについては、弊社システムに問題があるというよりはVR×ネットワークというシステムに前例がないため、各社での確認がうまく進まないという状況もあり、そのあたりの裏周り部分を一つ一つ取り除く活動は引き続き注力して進めていく予定です。

確かにXR時代のセキュリティは考えるべき項目が全く違いそうだ。価格はどのように考えるか

中馬:確かにVRデバイスの価格は1つの障壁になり得ます。しかしデバイスの価格は例年下落するとともに小型・軽量化も進んでいるため、徐々にこの問題は解決していくものと考えています。

その他、VRは視界をすべて覆ってしまうためリアルの世界が見れないことに対して抵抗が伴うシーンもあると考えています。その点についてはSynamonのシステムをAR上でも動作させる取り組みも行っているため、今後解決できる範囲と考えています。

ありがとうございました。

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