AI特化アクセラレータZeroth、第4期修了チームなど世界の29チームが東京でピッチ——日本・中国・東南アジアの企業との業務提携も明らかに

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Zeroth 設立者の Tak Lo 氏
Image credit: Masaru Ikeda

香港を拠点とする AI(人工知能)分野に特化したスタートアップアクセラレータ Zeroth は18日、第4期「Z04」の修了に伴うデモデイを兼ねたイベント「ZEROTH AI CONFERENCE 2019」を都内で開催した。

このイベントには、香港拠点(採択10チーム中6チームが登壇)、インド・バンガロール拠点(採択8チーム中6チームが登壇)、日本・東京拠点(採択9チーム中9チームが登壇)の採択チーム合計27チーム中21チームが登壇。さらに、第1期「Z01」〜第3期「Z03」の卒業生8チームを加え、合計29チームがイベントに華を添えた。

イベントで登壇した Zeroth 設立者の Tak Lo 氏は、第1期から第3期までのファンド回収額が投資額の6倍に達していることを明らかにした。3週間後には中国の大手交通会社との提携(現時点で名前非開示)、1週間後には東南アジアの大手工事会社との提携(現時点で名前非開示)を予定しているという。

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シルバーエッグ・テクノロジーの Thomas Foley 氏
Image credit: Masaru Ikeda

昨年以降、Zeroth が支援するスタートアップは、Zeroth の戦略的投資家である Animoca Brands の複数のオフィスに活動拠点を得て、Animoca Brands が持つリソースや専門知識へのアクセスや、Outblaze などのパートナーへのアクセスも得ることができるようになっている。

また今回、大阪に拠点を置き最近香港に子会社を設立した、レコメンドエンジンなどパーソナライゼーション大手のシルバーエッグ・テクノロジー(東証:3961)が、Zeroth と提携することも明らかにされた。具体的な提携内容については不明だが、日本市場エントリやスタートアップが大企業にアプローチする過程を支援するとみられる。

第4期「Z04」から輩出されたチームのメンバー(一部)
Image credit: Masaru Ikeda

第4期から輩出されたスタートアップ27チームは次の通り。

<香港拠点>

  • BestShot(アメリカ)………スマートウォッチやコンパニオン端末を通して、コーチのようにテニスのアドバイスを行えるようなアプリを提供する、スマートウォッチで試合のデータを取得、携帯端末上で試合に関する詳細データの分析を行い、機械学習に基づいたアドバイスを受け取ることができる。
  • Dapp.COM(香港)………世界で最も大きい分散型アプリ(dApp)のマーケットプレイス。分散型テクノロジーとは何か、それをどのようにして世界に発信するのかを誰でも簡単に理解できるような作りになっているのが特長。人々が新しいテクノロジーを理解し、創り、楽しめるような世界を目指す。
  • Deeptrace(オランダ)………Deepfakes とは、顔意識などのディープラーニング技術に対し、意図的に誤認識を促す画像・映像加工技術のこと。金銭的詐欺、個人情報の流出、フェイクニュースなどに繋がるこの問題を解決するため、Deepfakes を検出するサービスを提供。
  • Docpack(アメリカ)………重要資料を送るためのより良い手段を提供。60秒以内に資料、画像、ビデオなどの読み込み、リンクの送信、誰がその資料を受け取ったかをかくにんすることができる。資料は美しく分類され、送りたい特定の相手にだけ届けることができる。
  • Easychat(香港)………e コマース業者向けの、高いマーケティング ROI の実現、ユーザエンゲージメントの工場を目的とした会話型 AI。様々なチャットプラットフォーム上で動作するオールインワン型技術を提供。
  • Graychain(香港)………仮想通貨が乱立する世界において、ユーザが相手のことを信用できるか否か識別できるようクレジットスコア算出システムを提供。
  • Rumblemonkey(アメリカ)………リアルマネープレイを e スポーツに適用する P2P 型ソフトウェアを提供。現実世界のスポーツ試合に合わせ、マネーの全ての詳細を追跡することができる。実際のゲームとは完全に独立していて、インテグレーションなどは必要ない。
  • Sharpsense(イタリア)………センサーを扱う開発者やエンジニアに、簡単に取り扱える人工知能を提供。橋、パイプ、発電所などの重要インフラを保護し、周辺環境の状況管理を支援する。見落としがないよう、大規模かつ自動的にデータ分析を行うのが特徴。
  • Srtint/雲風速(中国)………さまざまなデータソースから取得されたストリーミング情報を統合し、データウェアハウスやアナリティクス基盤などのデータ分析アプリケーションへ流す技術を有する。また、それらのデータ状態をリアルタイムに把握し、運用上のリスク特定、軽減、最適化の方法を可視化するアナリティクスを提供。
  • Veremark(イギリス)………採用や人事の現場において、候補者のリファレンス情報取得を支援。
展示ブースには、日本企業との業務提携や、シリーズ A 調達を求めるスタートアップが多かった。
Image credit: Masaru Ikeda

<インド・バンガロール拠点>

  • Codeplay Labs(インド)………ユーザと、スマートフォンや iOS デバイスのインタラクションを容易にする音声アシスタント技術「Bolo」を開発。音声を通したデバイス制御を可能にする。訛り、地域特有の言葉の違いなども認識し、個々のユーザに合わせたシステム提供が可能。
  • Deepsight AI Labs(インド)………CCTV(防犯カメラ)から送信されたリアルタイム映像ストリーミングから危険を察知できる画像解析プラットフォーム「SuperSecure」を提供。設置済カメラのソフトウェアをアップデートすることなく、そのまま技術を提供できるのが特徴。
  • Deepsync Technologies(インド)………Alexa や Google Home など音声ドリブンのアプリ開発者が、簡単にアプリのカスタマイズや音声クローン作成ができる開発プラットフォームを提供。教育アプリ、エンタメ系アプリなどへの応用を想定。1時間の録音でボイスプロファイルを作成できる。
  • Kvinna(ニュージーランド)………女性に適切な医療アドバイスを提供することを目標に、人工知能、機械学習など活用したヘルスケア製品を提供。妊婦の死亡率は、先進国では10万人中10〜15人であるのに対し、インドでは10万人中167人と高い。これは医療知識が不足しているためだ。Kvinna はユーザに合わせた医療知識を提供する。
  • MikeLegal(インド)………法律実務の効率化、法律文面をより理解しやすい形に変換することで、ユーザにとって戦略立案の手助けとなるリーガルアシスタントのシステムを構築・提供。大企業から法律事務所まで、サービス開始から1年の間に40以上の顧客にシステム導入している。
  • The Solar Labs(インド)………ソーラー発電におけるパネルレイアウトの分析・最適化を行う SaaS プラットフォーム。最大15%の発電効率向上が望める。建物毎の発電量を割り出し、地域全体の太陽光発電量を計算することもできる。
  • Unreal AI(オランダ)………画像解析モデルをエッジデバイスに展開しやすくする。
  • Vizzbee(インド)………飛行データをもとに、自動運行ができるドローン運行サービスを開発。緊急応答とラストマイルデリバリーの分野に特化している。
日本から参加した Cotobox によるピッチ
Image credit: Masaru Ikeda

<日本・東京拠点>

  • Anytech(日本)………化学センサーを使わず、カメラからの映像だけで液体や水の異常を検知できる AI ソフトウェア「DeepLiquid」を開発。これまでは、経験のある研究員が、液体や水の濁りや泡沫を見分けする必要があったが、DeepLiquid の導入により、給水施設、飲み物工場、化粧品工場での作業の一部を自動化できる。
  • Clocksmith(アメリカ)………環境と経済データの因果関係を学習することで、未来の風景を写真のようにリアル描写する可視化ソリューションを提供。GAN(敵対的生成ネットワーク)を使った機械学習アルゴリズムを利用している。
  • Cotobox(日本)………商標検索と商標登録ができるサービスで、弁理士の仕事を再現したような画面検索 AI を導入している。従来の方法よりも低コストで世界中の商標を対象とした調査が可能となる。
  • Finhay(ベトナム)………東南アジアのミレニアル世代を対象に、操作が簡単で少額投資ができるロボアドバイザーアプリを提供。
  • Generalized Intelligence/泛化智能(中国)………エンドツーエンドのレベル5自動制御ができる、産業用ドローン向けソフトウェア開発プラットフォームを提供。
  • MatarStars(シンガポール)………物流企業のビッグデータを活用し、運用の最適化とコスト削減を目的としたソリューションを提供。
  • Roboken Co.(日本)………人間の表情を読み取り可視化する技術「NeuroAI」を開発。特に人材分野への応用に特化している。面接で本当のことを言っているか、作り笑いではないかの見極め、従業員満足度やモチベーションを可視化することで、個々人の精神的ストレスなどを分析。問題の早期解決に繋げる。
  • Rosetta.ai(台湾)………中小規模 e コマースサイト向けユーザエンゲージメント向上ソリューション。API 接続が可能で、ポップアップ、E メール、チャットアプリ、電話など、さまざまなチャネルを通じてユーザとの接点を維持することを支援する。
  • Sapiens Technologies(香港)………金融商品の販売に携わるリテールバンカーやプライベートバンカーらが、顧客の感情特性やリスクに対する敏感性などを分析できるようにする自然言語処理エンジン。

なお、次期バッチとなる「Z05」の募集要項と受付開始について、Zeroth では近日公開するとしている。

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