中国のフードデリバリアプリ需要、小規模レストラン経営者の間では減退基調にあることが判明

by TechNode TechNode on 2019.4.16

Wonton-Restaurant
営業終了後に在庫をチェックするワンタン店オーナー Chi Hongwei 氏
Image credit: TechNode/Yu Dingzhang

過去6年間にわたり、Chi Hongwei 氏とその夫の生活は、中国伝統のスープ肉団子の一種、ワンタンを売る広さ30平方メートルのフランチャイズレストランを中心に回ってきた。

レストランは数万人の大学生が暮らす上海の郊外、松江大学城にあり、夫妻は自分たちのビジネスモデルが上手く機能していることをよく分かっている。普段からフードテイクアウトアプリを使って寮に食べ物を届けてもらうようなテック通の学生たちのお腹を満たすというモデルだ。12月などのピークの月には、夫妻の小さなレストランは新たに届いた注文を知らせる通知音がレジから鳴りやまない。

時々少し圧倒されるほどで、手に余るときもあります。

Chi 氏は振り返る。レストランは1日に最大500件の注文を受けることもあるという。

同様に、小規模なレストランにとってこの5年間は黄金時代だったと言ってよいだろう。フードデリバリアプリの莫大な人気に便乗して、多くの小さなレストランはある程度のお金を集めることができた。こうしたデジタルプラットフォームは食べ物を販売する効率的で新しい手段を提供しただけでなく、アプリ事業者はプロモーション用補助金の形でレストランにボーナスも提供する意欲を見せていた。

ところが今やこうした日々がいつまで続くか時間の問題になった。Tencent(騰訊)が支援する Meituan(美団)や Alibaba(阿里巴巴)支援の Ele.me(餓了麼) がマーケットのほとんどを掴み取ってしまい、オンラインデリバリプラットフォームと提携することは以前ほど魅力的なアイデアではなくなっている。小さなレストランのオーナーの中には、フードデリバリアプリに背を向け、独自の WeChat ミニプログラム(微信小程序)を作って注文を取ったり、紙のメニュー表を配って顧客を獲得しようとしたりしている者もいる。

そうしたオーナーらは、オンラインのチャネルを捨てることで、より高収率の店内客に重点を再び戻すことができると言うのだ。

Chi 氏と夫が9月に、ワンタン店からたった50メートル離れたところに小さな寿司レストランを開いたときには、彼らは Meituan や Ele.me には載せないことに決めた。その決断は効果を生んだようだ。

これまでのところオフラインのお客さんの数は悪くありません。

パワーシフト

以前は中国のフードデリバリ市場にはいくつもの競合企業があったが、その後大きな合併や買収による統合が起きた。今やフードデリバリ市場は Meituan と Ele.me の2大勢力が独占しており、2社を合わせるとマーケットシェアの9割を占める(リサーチ企業 Analysys=易観のデータを引用した China Tonghai Securities=中国泛海証券の報告による)。同じ報告によると、Meituan はフードデリバリセクターを約60%シェアでリードし、続く Ele.me は約35%だ。

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中国のフードデリバリ市場におけるマーケットシェアの変化
Image credit: TechNode/Yu Dingzhang

中国でスマートフォンがますます普及するにつれ、食べ物のオンライン注文は2010年代初頭に人気となった。Ele.me、Dianwoba(点我吧)、Waimai Chaoren(外売超人)など多くのスタートアップのプラットフォームが、生まれて間もないフードデリバリ部門に立て続けに参入したときのことだ。ほとんど限りない額の資金を利用できたことが、これらの企業がフードデリバリ市場で早くから優位に立てた大きな理由となった。多額の助成金が事業者と消費者両方の引き寄せのために与えられた。

初期には、事業者には利益効果があった。競争相手に勝とうと、フードデリバリアプリ各社はより多くのレストランを掲載するためにお金をばら撒いた。それがより多くの顧客を引き寄せる上で重要なベースラインだった。事業者は複数のプラットフォームから選ぶ自由を享受し、最も多い優待ポリシーや最も多額の補助金を提供するプラットフォームに決めることができた。さらには、新しい技術を採用したがらない店も、当時アプリの使用率は少なかったため、自分たちが負けているとは思わなかった。

しかし、これはもはや当てはまらない。アプリの使用率は非常に高く、飲食業のほぼすべての店が配達オプションを提供している。

市場統合によりテクノロジー大手企業がフードデリバリセクターを支配するにつれ、プラットフォームと事業者の力学は徐々に変化した。補助金に支えられた競争の中、小さな企業は淘汰されていき、競争は Baidu、Alibaba、Tencent 間の代理戦争となった。

2015年から2017年の間に、Alibaba 支援の Ele.me、Tencent 支援の Meituan、そして Baidu Waimai(百度外売)3社が同セクター最大の企業となった。その後 Baidu(百度)がフードデリバリ部門から撤退し人工知能に重点を移すと、3社の戦争は終わった。2017年、Ele.me は Baidu Waimai を買収した

2018年に、一連の出来事により Meituan と Ele.me が優勢となった。Alibaba が Ele.me を買収し、10月に自社のローカルサービス Koubei(口碑)と統合させた。Tencent が支援する Meituan は昨年9月、香港での IPO で42億米ドルを調達した。

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情勢が2社独占に落ち着き、フードデリバリプラットフォームはルール設定の主体のようになってしまい、事業者は交渉上弱い立場に置かれてしまった。

同時に、補助金の激増により、フードデリバリアプリによる注文に対して割引を提供することができるようになり、こうしたアプリを利用した注文方法は消費者の間に定着した。

そのことが中国の飲食業界に与えた効果は絶大だ。とりわけ小さな街ではそうだ。レストランはテイクアウトの注文に非常に頼っており、多くのレストランは事実、客用の店内の座席のあるレストランからデリバリのみのキッチンに軸足を移したか、座席がほとんどない、あるいはまったくないレストランに移行したかのどちらかだ。ときには、店員が店内の客にほとんど注意を払わないか無視さえして、大量の配達注文に対応して走り回っていることもある。

今は現存しないフードデリバリプラットフォーム Waimai Chaoren の設立者で CEO を務めていた Lucas Englehardt 氏は語る。

フードデリバリは「勝者が利益のほとんどを得る」という市場です。そのため、こうした企業は補助金に多額を投資し、マーケットシェアを勝ち取ろうとするのです。優勢を誇る競争者であることから、彼らはレストランに課す手数料をより高くし、その費用は消費者に押し付けられるのです。

こうした体制は市場にとって健全ではないと、現在は歯のホワイトニングおよび矯正器具開発を行う上海拠点の Xixilab で CEO を務める Englehardt 氏は語る。上述の2つのプラットフォームが上場した現在、同じような傾向は続いていくだろうと同氏は見込んでいる。

競争が近々止むとは思えません。両社とも投じられる資金があり、異なる強みをもっているからです。

同氏は TechNode の最近のインタビューでそのように述べた。

Englehardt 氏によると、他国では、小企業を淘汰するために企業が補助金に頼るということはそれほどよくあることではないという。しかし、Ele.me も Meituan もまだ利益を上げておらず、どちらも市場を完全に支配しているわけではないので、中国政府も両社のアグレッシブな行動を制限しようとはしないのだそうだ。

手数料引き上げに苛まれる事業者たち

ワンタン店のオーナー、Chi 氏によれば、2018年時点でも事業者はまだフードデリバリプラットフォームと提携して利益を得る道を見つけることが可能だったという。しかし、負担を耐えきれなくさせる事態がこの1月に起こった。Meituan と Ele.me が、レストランに課す料金を3%引き上げたときのことだ。これにより、場合によっては手数料が商品価格の20%以上に上昇することになった。つまり、レストランが1注文につき100人民元(約1,700円)を得るとして、この100元につきプラットフォームへの手数料を20元(約335円)も支払わないといけないことになる。

上海の小さなレストランのオーナーにとって、2月中旬の手数料は16%から18%に上昇した。これは、自らのレストランをたった1つのデリバリプラットフォームに載せてもらう場合の話だ。もしも、複数のプラットフォームに載せてほしいという場合、彼らに課される手数料はさらに高くなるのが普通であり、たいてい20%前後だ。

Ele.me の広報担当者は、松江大学城のいくつかのレストランに対する手数料は、今年優待ポリシーの期限が切れる際に上昇するかもしれないとは認めつつも、同社が手数料を現在引き上げていることを否定した。

Ele.me の広報担当者は次のように語った。

弊社は手数料を引き上げていません。弊社は事業者をサポートするため、広東省、重慶、江西省、四川省、福建省など、中国の多くの地域で実質的に手数料を下げています。

Meituan はコメントを控えた。

国際的観点からすると、20%は高いと Englehardt 氏は言う。他国の手数料は5%から15%だそうだ。中国のプラットフォームは配送を提供する場合が多く、一方他国は通常レストラン自身が配送を行っている。

手数料は飲食店の規模と所在地により変化する。上海で鍋料理レストランを経営している Zhu Congyang 氏によると、大きなレストランはデリバリプラットフォームとの交渉の際、強気な姿勢になれるという。

Chi 氏の経験上、これらの手数料は赤字と黒字の重要な分かれ目になる。ワンタン1皿が20元(約335円)で売れるが、その売上のうち約45%は、ワンタンチェーンの親会社にフランチャイズ料および材料費として支払われ、15%がオンラインの食品注文プラットフォームに手数料として支払われる。残りの40%でその他の間接費を賄わなければならない。光熱費、従業員3名の給料、月6,000元(約10万円)以上の店舗賃料だ。

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1皿20元のワンタンにかかるコストの内訳
Image credit: TechNode/Yu Dingzhang

レストラン経営者にとってもう1つの負担となるのは、割引に伴う出費だ。顧客を引き付けるため、オンラインプラットフォームは事業者に対し、顧客への割引の提供を求めている。例えば注文合計が20元(約335円)を超えると、顧客は3.5元(約60円)の割引を受けられるというものなどだ。こうした割引の提供を賄っているのは事業者であるレストラン自体だ。

すべての経費を差し引いたのち、20元のワンタン1皿から Chi 氏と夫が得られる最終的な利益は1.5元(約25円)にも満たない。

それに加え、事業者の中には、デリバリプラットフォームに月1万元(約16.7万円)以上払って、デリバリアプリ上で注目を引く位置に掲載してもらうことを選ぶ者もいる。もしも注文者の家やオフィスがレストランから遠ければ、Chi 氏は標準の配達距離超過をカバーするために、1つの注文につき2元の追加費用を支払わなければならない。こうなると注文から何も利益を得られないということもしばしばだ。

Chi 氏は次のように語る。

オンライン注文のせいで私たちが赤字になってしまうなど誰が考えたでしょう?私たちの多くは割引を提供したがっていません、またもしかすると、オンライン注文を全く引き受けたくないと思っているかもしれません。しかし、他に選択肢がないのです。

Chi 氏のようなフランチャイズ契約業者は割引プログラムに参加するよう求められている。参加しない場合、売り上げ目標を達成していないとして罰則を受けることになる。フランチャイズ体制に縛られていないレストランオーナーでさえ、競合相手に顧客を取られるリスクを背負いたくないという。これは、人里離れた場所のレストランにとっては特に当てはまる。

中国南部の広東省に70店舗以上を出店しているレストランチェーン Let’s Soup Party(吃個湯)の設立者、Zhan Chufeng(詹楚烽)氏は、オンライン注文は同社の運営にとって重要な位置を占めており、全注文の約70%になるという。

Meituan と Ele.me に払う手数料は15%から18%で、大多数の事業者が支払う手数料よりずっと少ない。

Zhan 氏はこう語る。

私たちはプレミアムブランドなので、手数料を低くしてもらうことができました。補助金も受けており、手数料はまだ私たちにとって耐えられる範囲です。しかし、理想的な手数料は13%くらいですね。

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現在の状況を考えると、デリバリ注文に依存している事業者にはあまり選択肢がない。彼らが現在のマージンを維持する最も簡単な方法は、商品価格を引き上げるか食品の質を下げることによって、経費増を顧客に押し付けることだ。しかし、そのような手法ではビジネスの長期的な成功を危険にさらしてしまう可能性がある。

レストランオーナーの中には、直接レストランを訪れて店内で食事する客に再び関心を向けている者もいる。

可能なら私たちは店内で食べて頂くお客さんを好みます。

上海郊外で餃子店を経営する Xiao Hua 氏は言う。16元(約270円)の注文1つにつき、店内客からは全額が手に入る。しかし、もしも同じ注文がテイクアウトだとすると、目下の手数料を引いて店は12元(約200円)しか得られないという。

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経営する餃子店で一休みする Xiao Hua 氏
Image credit: TechNode/Emma Lee

北京のコンサル企業 Bailian(百聯)の設立者 Zhuang Shuai(荘師)氏によると、オフラインの店の運営を促進し、店内の消費率を引き上げ、また新料理や新ブランドの開発を強化していくことが、中小事業者がより高いリターンを得る助けになるという。

確かに、手数料引き上げを受けて怒りを感じている小規模事業者もいるだろうが、他の要因もレストランオーナーの重荷になっている。上海の AgencyChina(上海中国国際貿易)の戦略研究マネージャー Michael Norris 氏によれば、増える競争、上昇するマーケットコストも一因だろうとのことだ。

そして、フードデリバリプラットフォームが手数料収入からお金をがっぽり得ているわけでもなさそうだ。Meituan の営業損失は2018年の第4四半期には前年比57%増で、37億元(約618.3億円)に上がった。フードデリバリ部門からの収益は同じ第4四半期に前年の66億元(約1,105億円)から66.1%上がり、110億元(1,840億円)となった。一方、同社のフードデリバリコストは、同じ報告期間に53.6%増加した。同社のマネジメント部は、それは配送者たちへの賃金コストの増加によるとした。

Alibaba の2018年第4四半期の財政報告書によると、Ele.me の収益は、主にプラットフォーム手数料、フードデリバリサービスやその他サービスの提供に由来しており、総計51億5,000万元(約860.5億円)だ。

プラットフォーム側と配送業者側の摩擦も増加してきた。Meituan、Ele.me、Didi(滴滴出行)は昨年のローンチ後フードデリバリサービスを縮小させているが、3社とも配送スタッフとの間の問題に直面している。

Let’s Soup Party の Zhan 氏は次のように述べた。

荷物の配達と違いフードデリバリは時間に敏感で、また、注文の需要はピーク時とそうでない時とでかなり違います。

Tonghai Securities のアナリスト Esme Pau 氏によると、補助金に勢いを得た成長はユーザと事業者両方を「ダメにした」という。しかし究極的には、同業界の直面している問題の核心は、論争になっている業界の性質そのものだ。彼女はこう語る。

競争を克服する唯一の方法は、Meituan と Ele.me が価格設定についてコンセンサスに達することでしょう。しかし、近い時期にこれが起こるとは見込んでいません。

Chi 氏にとって、テクノロジーを食品調理と組み合わせるのは、これまで苛立たしい経験となってきた。

プラットフォームによってビジネスがやりやすくなったわけではありません。代わりに、私はこれまでで一番ストレスを感じています。

【via TechNode】 @technodechina

【原文】

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