CareemのCEO曰く、「Uberとの合併は、中東スタートアップエコシステムの幕開け」

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Careem の CEO Mudassir Sheikha 氏(中央)と Magnus Olsson 氏(左)、Abdulla Elyas 氏(右)
Image Credit: Careem

VC 支援を受けた地域的なスタートアップが、自社を数十億米ドルで有力なライバル企業に売却するという事態は、それ自体大きな勝ちだとみられることが多い。設立者にとっては儲けものであり、投資家は忠誠を示す代わりに対価をもらえるからだ。

しかし、配車サービス企業 Careem の CEO で共同設立者の Mudassir Sheikha 氏は、自社を Uber に31億米ドル以上で売却することで、単に大金が入るという以上の結果が生まれることを望んでいる。彼は今回の取引を、「中東地域にとっての幕開け」と考えており、これによって中東のスタートアップが国際的な投資家たちの投資先リストに入るだろうというのだ。

あらゆるエコシステムには画期的な取引が必要で、今回の取引もその1つになるとよいと思っています。

Sheikha 氏は3月27日、Careem 社員宛ての公開書簡でそう述べた。

これまでのストーリー

ドバイ拠点の Careem は2012年に設立され、今日では14カ国の市場で3,000万人以上のユーザを誇っており、中東に力を入れている。同社は Uber からの合併の誘いがあるまでに、約7億7,000万米ドルの資金を獲得してきた。

Uber が Careem との合併を検討しているというニュースは昨年7月に浮上し、2月、Uber が Careem を完全に買収するための交渉が進んでいるとの噂が流れた。3月第4週の週末、合併の契約がもうすぐ発表されるとの報道が強まり、3月26日、Uber が認めるに至った。

実際、今回の契約は今年に入ってこれまでの中で良かった出来事であり、Uber の CEO である Dara Khosrowshahi 氏のインクルーシブな姿勢と、Sheikha 氏のいう Khosrowshahi 氏の「エンパワーリング・リーダーシップスタイル」がなければ、決して実現しなかったかもしれない。Careem は、当初 Uber と力を合わせることにためらいがあったが、Khosrowshahi 氏は、Careem が独自のブランドとアイデンティティを保持し、基本的には通常の操業を続けてよいと認める意思を持っていたことが、契約締結の鍵となった。

Sheikha 氏は語る。

初めは Uber による買収の話はあまり私たちに響きませんでした。

しかし、Dara 氏と議論を重ねるうちに、私たちは彼と、また彼のチームとより関係を強くしていきました。そうしたら以前とは違う実感がありました。明らかだったのは、彼らが中東のような市場でのプラットフォーム提供のチャンスの価値をより深く理解していたこと、そしてこのチャンスを掴むには同地域にフォーカスを当てた企業がどうしても必要だろうと理解していたことです。

シリコンバレー企業が地方の企業設立者から舵をもぎ取ってしまうような、月並みなやり方を真似るのではなく、むしろ Khosrowshahi 氏は、Careem の成功を創出した要素、つまり地域に関する同社チームの知識と経験に干渉しないということを選んだのだ。

彼は尊敬心を持った立場から話してくれ、どうしたら力を合わせて中東地域を変革する大きなチャンスを追えるかという話に主にこだわっていました。(Sheikha 氏)

MENA

明らかなのは、Careem は、MENA 地域(中東および北アフリカ地域)に自社が与える影響力を重視しているということだ。同地域への影響力について Sheikha 氏は書簡で何度も言及している。

私たち2社の規模とリソースを統合することにより、この地域のより多くの人々の生活をシンプルに、そしてより良くすることができるでしょう。

しかし、配車サービスや運送業の話を超えて、Sheikha 氏は、Uber との合併契約がより大きな何かの幕開けとなってほしいと願っている。

これまで比較的成熟したスタートアップのエコシステムを誇ってきたイスラエルを除いて、中東は多額のイグジットや投資のことでトップ記事になるような地域ではない。もちろん、Amazon が2017年に中東のライバル Souq.com を5億8,000万米ドルで買収したこと、Yahoo が2009年にヨルダンの Maktoob を(報道によると)1億6,400万米ドルで買収したことなど、少しは例もあることはある。

とはいえ、MENA 地域は VC 投資の点では成長している。直近のスタートアップ投資レポートによると、同地域の企業への投資額は2018年に記録史上最高となっており、前年比31%増で8億9,300万米ドルとなった。カリフォルニア発のシードファンドおよびアクセラレータ500 Startups は、明らかにアーリーステージ投資の点で、MENA 地域への投資家の中でも最も活発に投資を行っている。ちょうど昨日500 Startups は、初となる MENA ファンドを3,300万米ドルでクローズした

昨年 MENA 地域に参入した他の著名な国際的投資家としては、ニューヨークの General Atlantic があり、2018年後半にアラブ首長国連邦の Property Finder に対する1億2,000万米ドル投資ラウンドをリードした。他の投資家としては、中国の Gobi Partners があり、アラブ首長国連邦の Holidayme への1,600万米ドル投資をリードした。パロアルトの Accel も2016年、Holidayme に投資を行っている。

MENA 地域のスタートアップは、繁栄するために必要な要素のいくつかをすでに持ち合わせており、同地域での多額のイグジットによってより多くの億万長者が生まれることになるだろう。ひいてはエンジェル投資家が増え、さらに勢いを増すことにつながるかもしれない。今のところ、Sheikha 氏は、MENA が注目を浴びるのに Careem が寄与し、それにより同地域の他の企業への直接的な投資機会が増えるかもしれないということに満足しているようだ。

Sheikha 氏は次のように語った。

この大規模な合併取引が、MENA 地域の新興技術エコシステムを地域の、また外国の投資家に知らしめることになります。そうして、同地域の起業家への支援機会と投資機会を根本的に、また不可逆的に向上させることができるでしょう。

【via VentureBeat】 @VentureBeat

【原文】

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