AI活用のPoCは実証フェーズを分けるのが吉ーーオープンイノベーションの法則/AIQ代表取締役、高松睦氏

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本稿はオープンイノベーション・プラットフォーム「eiicon」編集部による寄稿転載。6月4日から2日間、都内にてオープンイノベーションをテーマにしたカンファレンス「Japan Open Innovation Fes 2019」を開催予定

企業間による新規事業創出の取り組みを、スタートアップの視点で取り上げる「オープンイノベーションの法則」。

eiiconでは6月4日に開催するカンファレンス「Japan Open Innovation Fes 2019」を前に、現在取り組みを進めているスタートアップにオープンイノベーションの現場を聞くインタビューを実施しています。新規事業の窓口探しから意思決定フローの確認、カルチャーギャップの考え方など、次にこの取り組みを考える大企業、スタートアップ双方のお役に立てれば幸いです。

子育Tech 委員会など、企業間連携による新規事業創造に取り組むカラダノートさんの次に登場いただくのはAI(人工知能)を通じて世の中にユースケースを提案するAIQ代表取締役の高松 睦氏です(太字の質問は全て編集部。回答は高松氏)。

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組み立てられたプラモデルの写真からどの商品を使って組み合わせたかを推定するAI(壽屋、AIQ、レッジの三社協業事例)

AIQのオープンイノベーション取り組み実績:大手飲料メーカーや大手損保会社などで現在検証を進める。独自AIを活用し、これまで人海戦術にて対応していたことに起因する「作業クオリティ均一化」の課題に取り組む。「写真を撮影するだけ」であとはAIが人の代わりに正確に処理ができるスキームを検証。今後製品化が実現することで、企業の労働力確保や労働者の教育に対する課題のソリューションとなることを見込む。その他、印刷や広告代理、玩具メーカーなど多様な業界・企業との取り組みが進行中

4月から労働基準法の改正があるなど、人が働ける物理時間が限界に近づきつつある中、企業でAIを活用した効率化を求める声が高まっています

高松:そうですね。最近では一度取引をさせていただいた企業様からのご紹介も増えていますし、eiiconのようなオープンイノベーションのマッチングデータベースを使って弊社・大企業、双方のアプローチが活発化している印象があります。

一方で、課題などが明確になっていない場合、ぼんやりとAIを使って何かアイデアを、という相談も多いのでは

高松:確かにオープンイノベーションをやる(やらなければいけない)という大項目のみが決定している企業は増加している様に思います。しかし何をやりたいか?を明確にもたれている企業はまだまだ少ない印象ですね。

課題やアイデアが明確だと当然ながら進めやすい

高松:役割分担がはっきりしますよね。何がやりたいか?が明確であれば、それを達成するまでの手段として企業側だけでできるかどうかが判断できますし、できない場合は何をベンチャーから提供を受けるべきか明確化します。結果としてPoCなどのプロジェクトが実現しやすくなります。

企業間の取り組みで実証的にPoC(Proof of Concept)を手がけることが多いと思います。この際のKPIやゴール設計はどのようにされてますか

高松:いくつかのフェーズに分けることが重要です。最初からひとつのゴールを目指すのではなく、課題を越えるための難易度によって設定を分けるんです。

山登りみたいですね

高松:そうかもしれません。例えば、二つのフェーズに分けプロジェクトを行う場合、フェーズ1と2のゴール設定はするものの、フェーズ1が満足のいく結果ができない限り、フェーズ2のゴールは達成できないですよね。

検証するプロジェクトの検証フェーズが短くなって結果が分かりやすい

高松:はい。フェーズ1のゴールを見て、次のフェーズ2のゴールを調整することもできますし、場合によってはフェーズ3を追加するというような、短いスパンでの検証が可能になるんです。

確かに新規事業って失敗の連続ですけど、大きなのをやるより小さいものを積み上げた方が知見の蓄積やマイナスのインパクトという意味でも効果的です

高松:フレキシブルに次のゴール設定ができるのがいいんじゃないでしょうか。特にAIを活用したPoCは決まったシステム開発と違い、最初から実現可能なことをゴールとすることは少ないので尚更です。

できるかどうかわからないものへの挑戦、という意味でこの進め方は参考になりますね。企業側でこういった不確実性が高いプロジェクトに取り組む際の留意点はどこにあると思いますか?

高松:先にもお話しましたが、何が課題か?もしくは何を成し遂げたいか?といったゴールイメージが明確にあるケースの方がやはり意思決定が早いですね。万が一企業側の承認プロセスでの手戻りがあってもインパクトは小さいです。

ただ、非常に定性的ではあるのですが、やはり案件が成就するケースにおいて、企業側担当者の信念や情熱などがとても重要になります。

逆にスタートアップ側で留意すべき点は

高松:企業側にはそれぞれのロジックがありますから、そこに寄り添った目線での提案と、企業からの1のインプットに対して10を発想できる企画力、それを実現する技術力が大切だと思います。

連携プロセスについての具体的なご意見ありがとうございます。次の方にバトンをお渡ししたいと思います

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